軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

遊びに来ればいい

兄さまの言う通り、というか兄さまには、

「最初にごまかすと言ったのはリアでしょう」

と言われたが、それにしてもみんな見事なとぼけっぷりだった。バートたちなど、何か感じたのは確かだが、一体何があったのかと逆にウェスター側に問いかける始末だ。アリスターは心配性だから、すぐに心配して部屋にやってくるかと思っていたら、そんなことはなく、どうやらギルに止められたらしい。

「アルはもう少し落ち着いた方がいい」

「ギルだってもう少し落ち着いた方がいいだろ」

などと言い合っている。それにしても、一晩で仲良くなったものだ。もう愛称で呼び合っているとは。私も呼んでみよう。

「ありゅ」

「リア」

アリスターは情けなさそうに私を見た。

「リアにそう言われるとなんだか変な気持ちがする。これまで通り呼んでくれないか」

「ありしゅた」

「うん、それでいい」

アリスターはにっこりすると、いつも通り私と手をつないで歩き出そうとした。これから王に謁見なのだ。

「待ってください」

「え」

つないだ手は兄さまによって静かに離された。

「私が連れて行きます」

私は正直なところ、どちらに連れていかれてもいいのだが、私の上で何かがバチバチ飛び交っている。困ったなあと思っていると、ミルがやってきて私をひょいっと抱き上げた。

「もたもたすんなよ。さあ、行くぜ」

ほんとにこの人は身分も、状況もお構いなしなのだ。でもそれでやっと動くことができた。

「さ、ウェスターでの仕事は既に済ませてありますし、王に挨拶したらすぐにキングダムに戻りましょう。今日は無理でしょうから、明日かな」

兄さまが隣でぶつぶつ言っている。早く帰れば、お父様に会える。でも。

「ありしゅたは?」

「俺? 俺は」

アリスターは下を向いた。

「そうだった。仲良くなるのに時間を取られて、肝心のアルの将来のことを何にも話してないじゃないか」

ギルがしまったというように額に手を当てた。

「俺は!」

アリスターはギルを見上げ、それからはっとして私を見た。

「ありしゅた、りあ、だいじょぶ。しゅきにちていい」

「俺は! キングダムには行きたくない。でもリアとは……」

そう言ってまたうつむくアリスターから、離れたくないんだ、と小さな声がしたような気がした。

私だって離れたくない。アリスターとも、バートたちとも。けれども、バートたちにはハンターとしての生活があり、アリスターにはキングダムに来る動機がない。たとえ来たとしても、アリスターはリスバーン家に入り、学院に通うから時々しか会えないのだ。

「きんぐだむ、あしょびにきて」

それが一番いい。

「俺も遊びに行きたいなあ」

「みりゅ、あしょびにきて」

「はは。でも、俺たちはキングダムには入れても滞在はできないんだよなあ。な、バート」

「そうだな」

バートは頭を掻きながら頷いた。

「リアはそういえば知らないのか。キングダムに滞在するには、許可証が必要なんだよ」

「ちらにゃかった」

だから交流が少ないのか。じゃあ、遊びに来ることもできないのか。

「そちたら、りあ、あしょびにくる」

「え、リアが?」

アリスターが驚いてミルに抱っこされている私を見上げた。

「あい。にーにとくる」

「私とですか?」

突然話に出てきた兄さまも驚いたように見上げた。一人でだって来たいけれど、きっと許してくれない。それならば、遠慮なく頼れるものは頼ってしまうのだ。

「ありしゅた、なかよち。ばーと、みりゅ、きゃろ、くらいど、なかよち。わしゅれたく、にゃい」

「リア、お前」

バートの声は震えていた。ミルが優しく私をゆすり上げた。

「そうだなあ、一緒にいて、ずっと楽しかったよなあ」

しんみりした空気になってしまった。

「やれやれ、これでは先に話さなかった私たちが悪者みたいではないですか」

兄さまが肩をすくめた。

「リアが先の話をするのが早すぎるんだろ」

ギルも肩をすくめた。

「廊下で話すのもなんですが、アリスターも含めて、ハンターの皆さんにはキングダムの滞在許可証を用意しています」

「え、キングダムに行けんの、俺たち」

こういうことを言えるのはやっぱりミルである。

「はい。出入り滞在自由の正式な許可証です。これがリアを助けていただいた礼の一つとなります」

「じゃあさ、バート、結構金も稼いだし、ちょっと時間があったら行ってみようぜ」

「ミル、それはまた後でな、みんなで相談してからだ」

アリスターも嬉しそうに私を見上げた。

「俺も。それなら俺も会いに行くよ」

「あい!」

それでも寂しいが会えなくなるよりはずっとましだ。

「さ、王の間でございます」

「来た時以来だな。また貴族がずらりと並んでたりしてな」

「まさか。リアを見せて帰りの挨拶をするだけですよ」

そのまさかだった。大きく開いた扉の向こうの奥の一段高くなっているところには王と王妃と王子がいて、その途中は着飾った貴族がずらりと並んでいる。

「ちょっと待て、俺たちはいらねえんじゃねえか」

バートが尻込みをしている。

「一緒に来いと言われたのだから、いいのですよ」

兄さまはあきらめたようにそう言い、私を下ろすようにミルに合図した。

「さ、リア、アリスター、不本意でしょうが、あなたたちが主役です。隣を歩きますから、あなたたちがまず先に」

私はアリスターと目を合わせて頷いた。見世物になって事態が収まるのなら、それでご飯が食べられるのならそれでいいではないか。そして二人並んで一歩踏み出した。それぞれ私の隣には兄さま、アリスターの隣にはギルが付き添っている。

おお、というどよめきと共に、拍手が起こる。どのような話になっているのかわからないが、ウェスターの王家がいなくなった四侯の血筋を無事助けた感動ということなのだろう。

私はできる限りさっそうと歩いて、王のそばまでやってきた。そこにはヒューもいて、それなりに優しい表情を作って、私と目が合うとほんの少しだけ眉毛を上げた。ちょっと安心した。

しかし、その手前、並んでいる貴族の一番端のところに、なぜか違和感を感じた。貴族なのだが、たたずまいが違う。私はふとそちらをみて、ひゅっと息をのんだ。

感動で皆が手を叩き、横にいる人とその感動を分かち合う中、一人静かにこちらを見ている人。その怜悧な細められた目の色は、黄色。