軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100パーセント子どもだもん

そんな難しいことを聞かれても、とても一歳児には喋れない。喋れないことを気に病んでも仕方がない。

私はそう考えると、気が楽になったので、部屋をあちこち眺めてみた。さすが宿で一番いい部屋だけあって、寝室は多分別の部屋だし、ここは居間と言うことになるのだろう。ソファーもあれば食事をするテーブルと椅子もある。

ソファーはふかふかしていて気持ちがいい。

「リーリア」

この上で跳ねたら気持ちがいいだろうな。

「リーリア!」

「王子さん、声がでかいよ」

苛立っている王子に声をかけたのはミルだ。こんなことを言えるのはミル以外にはない。

「しかし」

「リアはさあ、一見何でもわかってるようだけど、まだ二歳にもなってない。ほとんど子どもなんだよ」

ほとんどってなんだろう。100パーセント子どもだが。

「だが」

「リア」

王子を遮るようにミルが私を呼んだ。

「あい」

「リアのさ、トレントフォースでのこと、王子さんに話してやっていいかなあ」

私はまずバートを見た。仕方なさそうに頷いている。次にアリスターを見た。難しい顔をしているが、反対はしていない。それならいいだろう。

「あい」

「じゃあ俺たちが話しておくから、遊んでていいぞ」

「あい!」

「よし、リア、積み木をやろうぜ!」

「あい!」

「待ってろよ!」

アリスターは積み木を取りに部屋に戻った。さりげなく護衛が追いかけていった。

実は町長から、

「せっかく領都に行くなら、積み木の宣伝を」

と言うことで、積み木のセットを預かってきているのだ。もちろん、途中で遊んでもいいことになっている。

ばたん、と箱を抱えてアリスターがやってきた。後ろの護衛も箱を持たされて苦笑している。

「リア、持ってきた」

「あい! ちゅみき」

二人で床の上に座り込むと、積み木の箱をひっくりかえした。護衛の持ってきた箱もひっくり返す。

ドリーがいたら、

「まあ、床に直接座り込んではいけません!」

と言っていただろうと思い思わずニヤリとしてしまった。それをアリスターに見られてしまった。

「リア、どうした?」

「どりー」

「ドリー?」

「ゆか、いけまちぇん、いう」

「ぐはっ」

ぐはっ、と思わず噴き出したのは護衛の人だ。アリスターは、あー、と言う顔で私と同じようににやりとしていた。ちょっとうんざり、でも憎めない、ドリーはそんな人なのだ。

私は小さい建物を作る。ラグ竜が入るくらいの大きさだ。アリスターは二箱分の積み木を使って大きな建物を作る。

部屋の人たちは横目でそれを見ながら話を続けていた。

「じゃあバート、頼むわ」

「俺かよ!」

ミルがバートに面倒なことを丸投げしているのもいつものことだ。

「それで。なぜリアは助かった」

王子が簡潔に先を促す。

「リアが助かったのはリア自身が賢かったから。それでは不満なのか」

バートの言葉に王子は肩をすくめた。

「リーリアが助かったこと自体はよかった。正直なところもうだめだと思っていた。しかし一歳児が襲撃犯を相手取ってどうして無事に逃げられた。ありえないだろう」

本当だよ。大変だったんだから。私はきれいに四角に囲った積み木の中にラグ竜を入れた。うん。かわいい。

「けど、結局さらわれたのはあんたたちの失態で、その状況をリーリア自身が助けてくれたのは間違いない。それなのにまるでリーリアに何かの責任があるかのように言うのはおかしいだろ」

バートが手厳しい。王子がお前も何か言えという目で私を見るが、私は今忙しい。ラグ竜のために部屋を増設すべきか。

「そしてその理由を言いたくないのは、言ったらリアの価値が上がるから。つまり、ウェスターという国が、リアを利用しようとするのが嫌だからだ」

「と言うことは、やはりリーリアには何か秘密があるんだな」

王子はやはりという顔をした。

「あんたがそれを国に言わない、ここだけのことだと約束してくれれば言ってもいい」

バートの条件はそれだった。王子は腕を組んで天井を眺めた。

「キングダムには、淡紫は保護する予定だと言ってある。そしてそれが幼児だと最初からわかっている。キングダムとの交渉の切り札としてリーリアを使った以上、ウェスターには、リーリアにどんなに価値があったとしても、リーリアをキングダムに返す以外の手はない」

王子は私のほうを見た後、バートにそう答えた。

「だから、単純に私個人の興味だ。リーリアはどうして助かったのか」

「この部屋でのことは、この部屋でとどめておくと誓ってくれるか」

「……誓おう」

それでも王子は、バートの問いに、不本意そうにだがそう誓った。

しかしその厳粛な瞬間を、アリスターの声が終了させた。

「リアの家さ、俺の家に合体させないか」

気が付くと積み木は全部なくなり、アリスターは大きい家を完成させただけでなく、私の積み木も狙っていた。

「にゃい!」

私は積み木の家をアリスターからかばった。

「なあ、ちゃんとラグ竜の部屋も作るからさ」

「め!」

それは今作り出したこの小さくて素敵な家ではない。アリスターの作品になってしまう。むしろ、アリスターが私に積み木をくれるべきではないのか。

「ありしゅた、いっぱい。もう、ちゅみき、いりゃない」

「ちぇ」

アリスターはちょっと口を尖らせると、積み木をガシャリと崩して新しいものを作り始めた。壊した建物からそっと積み木をもらおうとしたら、

「リアもくれなかったから、あげない」

と意地悪をされた。積み木に関してはアリスターは大人げない。もう。泣いちゃうぞ。

「誓うことは誓うが、この状況でこの神経、本当にこんな、こんなとぼけたやつらに秘密があるのか」

あきれたような王子の声がする。

「まあ、子どもらしくていいじゃねえか」

と言うバートの声にもちょっとあきれの気配はする。まあ、仕方がない。

「リアはなあ、今回だけじゃなくて、トレントフォースの町でもさらわれかけたんだ。それはあんたも調査してただろ」

「ああ。だが犯人の足取りを追っただけで、事件の詳細については聞いていない」

「リアはな、虚族の出始める時間ギリギリを狙ってさらわれた。町長の娘と共に」

「犯人は結界箱を持っていたからか」

確かに今回は結界箱がおそらく6つ以上使われたことだろう。それならばその可能性はあった。

「いや、もしかしたら今回のように近くに結界箱を持った奴がいた可能性はある。しかし実行犯は持っていなかったはずだ」

「なんでわかる」

「リアと町長の娘は、夕闇の中虚族の真ん中に置き去りにされたからさ」

王子だけでなく、護衛も息をのんだ。

「時間はそう長くはなかったらしい。俺たちが駆け付けた時には、たぶん町長の屋敷の奴らは皆あきらめきっていて、それでもリアのもとにたどりついたとき、二人は無事だった」

「私はリアが小さな結界箱を隠し持っているのだと思っていたのだが。ちょうど人一人分くらいの」

「そんな結界箱あったら便利だなあ」

そう口を挟んだのはミルだ。

「いや、ミル、今は口を挟むな。リアは結界箱など持っていない」

「ではなぜ」

王子は私を見た。

「リアは、自分で結界が張れるんだ」