軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

平和な日々

キングダムから出て一緒に魔力の訓練をしたとはいえ、アリスターは最近は仕事に追われて十分に魔力の訓練などしていなかったと思う。それに、ちゃんと最初からお父様について訓練していた兄さまと比べると、アリスターの魔力量は少し少な目だったように思うし、ハンターをしていたとはいえ、やはり魔力の扱いは雑ではあった。

「リア、見てろよ?」

そう言って結界箱に魔力を流しているアリスターは、旅の間より格段に成長していた。

「ありしゅた、しゅごい」

「だろ? リアが寝た後で、ちゃんと訓練してたんだ」

「えりゃい!」

私がこっそり魔力の訓練をしている間に、アリスターも訓練を重ねていたとは。もっともアリスターはこっそりではなく、一日の中の余った時間に訓練していただけのことだった。

「じゃあ、ばーとたちも」

「ちゃんと聞いてないけど訓練してると思う。だって狩りに出た時の気づきがみんな早くなっているんだ」

「しゅごい」

あれ? だったら申し訳なく思って謝ることなかったんじゃない?

「リアはまだ小さいから別。小さい子は無理しちゃダメだって、キングダムで教わっただろ?」

「あーい」

「だから俺と一緒にやろう? そうしたらお互いに無理することもないしな」

「あい!」

その日はノアがお母さんに連れられてやってきて、軽率な行動をしっかり謝らされ、魔石はもらえないと固辞するお母さんに困らされたりもしたが、

「片親がいないつらさは、俺、身に染みてるんだ。ノアのために、魔石をもらってやってください」

とアリスターが頭を下げることで解決した。父親がおらず、母親とトレントフォースにやってきて、その後一人になってしまったアリスターの頑張りは町の誰もが認めていたからだ。

「でも母さんは父さんの魔石をすぐ売るって言うんだ」

「当たり前よ! 父さんだったら、お前たちが楽になるように使えって言うに決まってるわ。それに」

ノアのお母さんはちょっと小さい声で続けた。

「父さん以外の物も入ってるのよ。ちょっといやだわ」

「え、母さん、なに?」

「なんでもない」

母は強いのである。苦笑する私たちに首をひねりながらも、ノアはお母さんと無事帰っていった。

作業室には私とアリスターの他にも必ず誰かがいて、魔道具の箱を作ったり、彫刻刀できれいな模様を彫ったり、ただ椅子に寄り掛かって天井を見たりしていたが、私達は二人で積み木をしたり、魔力の訓練をしたりして楽しく過ごしたのだった。

そしてお昼寝をした後、すっきりした気持ちでご飯を食べ終わると、食後のお茶を飲みながら、アリスターが話し始めた。

「俺ね、この魔力訓練さ、そろそろ町の人に教えたらいいんじゃないかと思うんだ」

「なんでだ。アリスター、リアのこともあるし、お前にそんな力があることは知られないほうがいいんじゃないのか」

アリスターは提案したものの、まだ自分でも迷っているようだった。

「リアも俺も四侯の血を引くことはこの町の誰もが知ってる。リアがさらわれかけたことももう知れ渡ってるだろう。リアに限らず、俺関係でもこういうことがまた起きるかもしれない」

「お前は俺たちと一緒にいれば大丈夫だ」

バートが力強く言う。

「うん。わかってる。ありがとう。けど、けどね、何かで俺がこの町を離れなくちゃならなくなった時、俺が今まで提供してた魔力分くらいは、残していきたいんだ」

「つまり」

「魔力が大きい人がいなくても、みんなが訓練をして、少しずつ魔力量や使い方を上げていけばきっと」

「アリスターがいなくなっても困らない、か」

「うん」

辺境では魔力もちは貴重だ。魔石屋でも、アリスターはできる範囲で黙々と魔石の充填をしていた。それはもちろん、自分の生活のためでもあっただろう。でも、お世話になったこの町にお返しをしたいという思いもあったのだった。

「リアはいいか。お前の考えたやり方だぞ」

「いい。みんな、ちあわしぇになる」

「ちあわしぇ?さすがにわかんねえな」

バートが頭を抱えた。

「しあわせ、だろ」

「みりゅ、しゃしゅが」

「幸せ、か。確かに、もうリアの貴重性は知られたし、居場所もつかまれてる。今更何をしようが、リアは狙われ続ける」

狙われ続ける。私は天を仰ぎ、嘆いた。

「ちゅらしゅぎる」

「ブッフォ」

なぜかみんな笑い転げた。私は切ないというのに。

「や、やめてくれ、リア、おかしすぎるから」

キャロは少し笑いの沸点が低いんだと思う。

「四侯の血を引くものがいる。せっかくだから魔力について学ぼう。これでいいか、アリスター」

「うん!」

「リア?」

「あい!」

「じゃあ、町長とブレンデルに相談だな」

そうして次の日にはすぐに町長と魔石屋を始めハンターの主だったものが集まり、魔力の増強について話すと色めき立ち、その次の日には訓練の日程が決まり、アリスターの考えは即座に実行に移されたのだった。

魔力に敏感なハンターから訓練し、次に魔力を充填できる魔力もちの訓練をする。この二グループがしっかり学んだら、この人たちを中心に、ほんの少ししか魔力を持っていない人にも訓練を施していく。

ウェスターと言う辺境の一国に属しているとはいえ、その国の支援はほぼあてにできないこの地では、自分たちだけでやっていける力を身に着けることはいつだって歓迎されるのだ。

しかしアリスターのその思い付きは、いったい何に急かされてのことだったのか。予言の力などない私達のはずだが、この平和な日々は、そう長くは続かなかった。

訓練が少し軌道に乗り、季節が秋に変わろうとする頃のことだった。町長の屋敷で、魔力の訓練の手伝いをしている日もあるが、その日はブレンデルの店で働く日で、私は積み木を積み上げて遊んでいた。なんだかんだいって面白いのだ。

客足が落ち着いたころ、一人の男が入ってきた。

あれ、知ってる。町長の執事みたいな人だ。なんだか顔色が悪い。ブレンデルがいぶかしげに尋ねた。

「今日はどうしたんだ?」

「使者が……」

「「「使者?」」」

ブレンデルとバートとアリスターの声が重なった。こないだ偽物でひどい目にあったばかりだ。

「領都からの使者が来た。正式な使者だ。今までのように、『できれば来てほしい』という要望とは違う。アリスターとリーリアは領都に来るようにと言う、正式な要請だ」

町長の執事は苦々しい顔をしている。

「バート、今度ばかりは町長も断れそうもないぞ」