軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幼くても四侯

それからはいろいろなことがあっという間に動いた。

それでも、何もかもがすんなりと進んだわけではない。

私たちには、私の護衛のハンスを始めとしたオールバンスとリスバーン、そして王家の護衛の他に、いつものごとく護衛隊も付いていたのだが、まったくもって当然のこととして反対を表明してきた。ケアリー行きは、監理局に提出した計画表にないという理由だ。

しかし、それについてはギルは一歩も引くつもりはなかったようだ。

「四侯の当主ならば、厳密に計画表に従わなければならない理由もわかる。だが、私たちはあくまで次期当主であり、ニコラス殿下にいたっては、次期王ですらない。王位継承権にいたっては三番目だ」

三番目だってたいしたものである。ちなみに二番目はアルバート王子だそうだ。

「しかし、四侯にせよ王族にせよ、そのお血筋を危険にさらすわけには参りません。そのために、結界の外に出てはならぬという不文律があるのです。ただでさえ、それを大目に見ているというのに、それ以上のわがままは許されませんぞ」

行きは順調だったせいか、普通の警護以外に何の口出しもしてこなかった護衛隊の一番上の人が、ここにきて面倒なことを言い出した。

こんな時、グレイセスだったらもう少し融通が利いたのにと思い、私は首を横に振った。グレイセスは頭が固いから、やっぱり駄目だというだろう。でも、四侯が本気になったらしょせん護衛隊は言うことを聞くしかない。それは跡継ぎでも、覚悟さえあれば同じである。そういう流れを、お父様が作ったのだ。

「そもそも、もっともキングダム内に留めておくべき四侯の一人を見逃してしまったのは護衛隊だろう」

「ぐっ」

ギルの痛烈な一撃である。

要は、国内のレミントンのたくらみを何一つ悟れず、いいように行動されてしまったくせにということである。

「リスバーンも、オールバンスも、四侯の役割にとどまらず、戦後処理に奔走し、キングダムのために労を惜しまず働いている。誤解のないように改めて言っておくが、こたびのシーベル訪問も、あくまでウェスター側から招かれた結果だ。我らのわがままではない」

「シーベルに来たのはそうでしょう。ですが連日草原に出て、何やら行っているのまで公務ではありますまい」

「それもシーベルに招かれた件と関係のあることだ。内容については護衛隊の知るべきことではない」

兄さまの皮肉の入った丁寧な話し方もじわじわと締め付けられるように厳しいが、ギルのきっぱりとした話し方は直接的に厳しい。私は毎日楽しく生きているだけだから、こういった時に四侯という、身分の高さを感じるとギルも兄さまも別人のようで、少し戸惑いも感じる。

「許可が出るまで長々とシーベルに滞在するのも迷惑をかける。我らは、それぞれ家の者を出して、ケアリー経由で帰ることを王都に知らせるつもりだ。必要と思えば、ケアリーに迎えに来るだろう。お前のすべきことは、我らを無事にケアリーにたどり着かせることだろう。何のための護衛隊か」

「もちろん、王都に帰るまで、お守りいたします」

護衛隊もケアリーまで来るらしい。

「そうそう、お前たちの分の結界箱もちゃんと用意してある。安心して付いてくるがいい」

ギルは、結界のないところではお前たちは役に立たないだろうが面倒は見てやるという態度だ。

実際、虚族には普通の剣は役に立たず、バートたちの持っているようなローダライトの剣が必要だ。夜は基本町の中で過ごすだろうし、辺境といえど虚族と戦う機会はないだろうから、問題はないだろうと思い、私もクスッと笑ってしまった。

ギルと同じように、護衛隊を守ってくれる人ではなく、私たちが守るべき人と考えていたことに気づいたからだ。

「守らなければならない人が増えるだけだから、付いてこなくていいのに」

「だよな」

そして兄さまたちも同じことを考えていたことに驚いた。もちろん、護衛隊が部屋から出て行った後のことだ。

「リアもおもってた。まもってあげなきゃって」

「ハハハ。三歳児に守られる護衛隊。よく考えたら、本当のことだから笑えないな」

そう言って結局笑い飛ばしたギルが、私の頭をそっと撫でた。

「リアも、結局は四侯なんだな」

「リアも、よんこう?」

当たり前のことだが、どういう意味だろうか。

「俺たちは、幼い頃からキングダムの民を守ること、人の上に立つことを教えられるんだ」

私はふんふんと頷いた。だが、同時に首も傾げた。私は別に教わってはいない。

「厳密には教わるんじゃなくて、学ぶんだ。父様たちを見ていたら、自然と伝わってくるだろう?」

「おとうさま、えらそう」

「リア」

兄さまがクスクス笑いながら私をすかさず抱き上げ、頬をつついた。理由を探しては抱き上げるから困ったものだ。

「あの大きいお屋敷の一番上に立つこと、城でたくさんの文官を使って仕事をすること。お父様は息を吸うように当たり前にこなしますが、それはとても難しいことなのですよ」

「リアは、それ、めんどう」

「そうでしょう? でもお父様は、面倒などと思ったことはないと思います。それが四侯の、人の上に立ち民の暮らしを守るものの当然の姿だから」

「おとうさま、えらそうだけど、かっこいい」

私はもう一声足してあげた。

「私もギルも、キングダム一行を誰一人欠けることなく連れ帰る責任があります。と同時に、せっかくの外遊ですから、得られるものは最大限に得て帰る、これも大事です」

「だから、ケアリーにいく?」

「いえ、それはやりたかったからです」

兄さまが恥ずかしそうに笑い、抱き上げていた私を降ろした。

「リアはケアリーの町長に言うべきことはきちんと言い、ちゃんと謝罪させました。そしてケアリーに行くことについても、きちんと同行者を守る立場に自分を置いている。それが私たちが四侯ということです」

私も貴族の立場に慣れたということなのだろう。私は右足を前に出して、腰に手を当てて、顎をそらせた。

「こう?」

「違います」

そんなに早く否定しなくてもいいのに。ぷうと頬を膨らませた私はまた、兄さまに抱き上げられてしまった。

「でもかわいいです」

かわいいならすべては許される気がする。