軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オールバンスに全員集合

「にこがうちにくるなら、おっずしぇんしぇいもきたらいいのに」

指導者という言葉でオッズ先生を思い出した私は、思わずそうつぶやいた。オッズ先生は最初こそ頭の固いところがあったが、厳しいだけあって、最初から私たちを子ども扱いせず、いつでもきちんと話を聞いてくれる。私たちからの提案も理があれば聞き入れてくれる、よい先生なのだ。

ニコがいるのに、一日中魔道具をいじったり遊んだりしているだけでは問題だろう。

「オッズか。あれはそもそも王族の教育に携わっていないときは歴史の研究者だからな。今はこれ幸いと研究に没頭していると思うが、さて」

オッズ先生がそもそもどのような人かなどと言うことさえ気にしたことはなかったので、研究者だと知って私は驚いた。

「がくいんのひとかとおもってまちた」

てっきり、兄さまたちが通っている学院から派遣されているものとばかり思っていたのだ。

「学院にも籍はあるだろうが、主に城の図書室にいるんじゃないか。あそこからオッズを引き離すのは大変だぞ」

お父様もよくは知らないらしい。

「ふーむ」

私はまた腕を組んだ。

「おーるばんすのとしょしつを、みてもいいといえば」

「エサか。なるほどな。午前中少しの間子どもたちに勉強を教え、残りの時間は図書室出入り自由」

「ごはんもだちてくだしゃい」

私は一番大切なことも提案しておいた。

とはいえ、いくら立派でもオールバンスにそんな貴重な歴史の本があるとは思えない。

「珍しい本もあると思うぞ。とはいえ、特に門外不出の本などもないしな。一応声をかけてみるか」

「あい。くりしゅもこられたらいいのに」

どうせニコがオールバンスにいるのなら、城でやっていたことは全部オールバンスでやってしまえばいいのだ。

「殿下をオールバンスに押し付けた以上は、クリスだけ謹慎させる意味はないと思うぞ。もちろん、リアもな」

お父様は私の頭をなでてくれた。

嬉しいことは嬉しいが、それとは別に、私の頭には、それならば普通にみんな謹慎を解いて、前のように城に集まればいいだけのことではないかという考えが浮かんだ。だが、その考えはそっとしまい込んだ。

だって、城以外のところでも皆で自由に集まって勉強ができるならそのほうが面白いではないか。

「じゃあ、くりしゅは?」

「クリスも来られるように手配しよう」

「ありがと!」

「オールバンスこう、かんしゃする」

私もニコもにこにことお父様にお礼を言った。

「となると、殿下の体づくりのための教師の手配も必要か……」

お父様が一人で頭を悩ませている。あの大きいお城にあれだけの人がいて、お父様一人でできることを面倒くさがってやらないことは大きな問題だと思う。私はニコのおじいさまである陛下の顔を思い出した。おひげのおじちゃまで特段問題なくキングダムを治めてきたが、息子二人がイースターに仕事に出ている今、ニコのことまで手配する余裕がないのかもしれない。

私は一人で首を横に振った。知り合いだからひいき目に考えてしまいがちだが、大きな問題がなかったからこそ、今までになかった出来事に対応しきれていないのは確かなのだ。つまり、厳しいようだがたいして有能ではないのかもしれないということだ。

例えば、王子のご学友がちょっとばかり問題児で、それに王子が影響された場合どうするかなどをすぐに考えられないというように。

ニコとクリスと私の、そして兄さまやギルの時代が来た時には、必ずお父様を楽にしてあげなければならぬと私はひそかに決意した。自分がおとなしくすればいいだけではないのかという心の声には蓋をしておく。

そっと胸に手を当てた私は、どうやら胸ではなくお腹も寂しいことに気が付いた。

「おなかしゅいた」

「たしかに」

ニコもお腹をさすさすとこすってみている。ほんの少しの時間しかたっていないような気がしていたが、私の部屋からここまでの移動、それに魔道具の説明、そしてニコの登場などもりだくさんで、あっという間にお昼になっていたらしい。

「にこ、おひるは、まかないでいいでしゅか」

「まかないだと? それはなんだ」

私が椅子からぴょんと飛び降りるとニコもするっと椅子から降りた。

「いや、リア、殿下にまかないはないだろう。今きちんとした食事を用意させているから、もう少し待つのだ」

お父様が眉をひそめたが、私はさらに主張した。

「おちろとおなじじゃ、べんきょうにならないでしゅ。にこにも、おーるばんすのまかないをたべてほちいの」

こないだ食べたまかないがおいしかったから、また食べる機会をうかがっていたというわけではない。

「だとしても、今日はもう、指示を出してしまった。食材と料理を無駄にしたら厨房の者が悲しむだろう」

「むう。あい」

私はそれもそうだと思い、素直に頷いた。だが、それであきらめる私ではない。

「じゃあ、あちたは?」

「明日か。明日なら……。しかし殿下にまかないなど……」

「オールバンスこう。まかないとはなんだ」

ニコが目をキラキラさせている。

「まかないとは、使用人たちが食べる食事です。リアによるとうちのまかないはとてもおいしいらしいが、王族に出すようなものではありません」

「かまわぬ。わたしはたべてみたい」

「ううむ」

珍しくお父様が迷っている。

王子に使用人の食べ物を出したりしたら、うちの評判が地に落ちてしまったりするのだろうか。とてもおいしくてバランスがよいのだが。

「だれかになにかいわれたら、にこもりあも、おちろにもどって、べんきょうしゅればいいでしゅ」

面倒くさがってオールバンスの家にニコも私も任せきりにしてしまった人たちからの評価など気にしなくてもいいと思う。

「うちはなにもこまらないでしゅよ」

私は驚いた顔をしているお父様に説明してあげた。

「おーるばんす、いなくてこまるのは、きんぐだむのほう」

むしろオールバンスがニコに粗食しか食べさせない、つまり大事にしていないと思われる方が大変なのだろうか。私は難しくて頭をひねってしまった。

「おうじたるもの、しようにんのしょくじも、しらねばならぬのではないか」

ニコも腕を組んでもっともらしく言うものだから、私も隣で腕を組んで深く頷いた。

「まあ、私も当主でありながら、こないだまでうちのまかないの存在さえ知りませんでしたからな」

お父様が苦笑いして、うんとひとつ頷いた。

「毎日は無理です。うちの料理人にだってプライドがありますからね。でも時々なら、目をつぶりましょう」

「かんしゃする!」

「おとうしゃま、だいしゅき!」

お父様の苦笑が本物の笑みに変わった。

「では、食事に向かいましょうか」

私は急いでユベールの元に向かうと、まっさらのマールライトの石板を数枚もらい、ポケットに詰め込んだ。お父様からの許可は出ているのだから。

「リアとおなじように、わたしにもいくつかもらえないか」

「もちろんです」

私の時はあれほど抵抗していたというのに、ユベールはニコにはすぐに渡してしまった。ニコも大事そうにポケットに詰め込んだ。

「リア、しょくじがおわったらなにをする?」

「そうでしゅね、まじゅおにわをあんないちましゅ。ひろいでしゅよ」

やはりニコは体を動かさないといけないだろう。

「しっている。ラグりゅうにのっただろう」

「そうでちた。おとうしゃま!」

「ああ、では午後からラグ竜の牧場に案内させよう」

北の領地のおじいさまのところに行ってから、ずいぶんたった。私もニコも大きくなっているから、前より上手にかごに乗れるはずだ。