軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都に戻ると(お父様視点)

王都に帰った私は、一度警護隊の本部に顔を出し、すぐに屋敷に戻った。つらいことだが、ルークにも、おそらく帰りを心待ちにしている屋敷の者たちにも、リアのことを伝えねばならない。ラズリーの町で引き取ってきた私のラグ竜に乗りながら、暗い気持ちを抑えきれなかった。

しかし、屋敷は私が思った以上に沈みこんでいた。竜を受け取る厩の者も、玄関で私を迎えた家の者も、沈痛な面持ちをしている。

「ジュード、もしかしてリアの捜索について先に連絡が来ているのか」

「はい。警護隊の方が。しかしその情報はルーク様と一部の者にとどめております」

「ではなぜ屋敷全体が沈んでいるのだ」

「それが……」

ジュードは執事頭だ。主に会計と私の社交を見てもらっている。内向きのことはセバスに任せているのだが、セバスはどうした。

「お父様!」

「ルーク!」

二階からルークが駆け下りてきた。かわいそうに、この何日間かですっかりやつれてひどい顔だ。魔力の流れも滞っている。

私は両手を広げ、走ってきたルークを抱きしめた。

「ルーク、ルーク、駄目だったよ。もう少しで手が届くところだったのに、父様はリアを連れ戻せなかったよ」

「やはり本当にリアが! でも警護隊の報告など信じられないと! お父様に聞くまでは、絶対に信じないと思って!」

「すまない。すまない、ルーク」

「わああ!」

冷静なルークが、いつも物静かなルークが、まるで普通の11歳の子どものように、当たり前の子どものように泣いている。リアを見送らざるをえなかったあの時と同じように、私の心も痛んだ。思わず唇が震える。

だが、情けないことに私は、あの時に、さんざんわめき涙を流したのだ。もう自分のために流す涙などない。あってはならない。

ルークが落ち着くまで、ただ抱きしめ、その背を撫で続けた。

「旦那さま」

使用人のほうに動きがあった。ジュードが静かに私に声をかけた。

「なんだ」

「警護隊の者が来ております。旦那様がリーリア様を追っている間に、こちらの屋敷にも警護隊のものが捜査に入っておりました。その報告かと」

「犯人は知れたのか」

「それが」

ジュードは言いよどんだが、はっきりとこう言った。

「セバスに嫌疑がかかっています」

「なんだと」

同時にルークが腕の中でびくっと動いた。ルークも知っていたらしい。

「セバスはどこだ」

「それが」

それがは三回目だ。私はいらだった。

「ジュード!」

「セバスは現在、行方不明です」

「何を言っている!」

まさか犯罪に巻き込まれたのではないか。私はここに来てもセバスが犯人などと思いもしなかった。

「しかも、主だった荷物は整理してあり、金目のものも、貯金も、すべてなくなっているのです」

「なんだと」

「警護隊からも説明があると思いますが、ハンナを雇い入れたのはセバスです。人手が足りなかったわけではありません。この屋敷の者ではその、リーリア様を偏見を持って扱うからと、セバスの独断でした」

「その経緯は知っている。だからどうしたというのだ」

「セバスが、最初から誘拐するつもりで。手の者を招き入れたと警護隊は見ているようです」

なるほど事情はわかった。ジュードも信じたくはないが信じざるを得ない状況にあるということなのだろう。

「セバスがいなくなったのはいつだ」

「旦那様がリーリア様を追って出た日には、真っ青な顔をしてハンナの実家に出かけたのを見たものがおります。そして次の日にはショックなので休みを取ると言い、そのまま……」

「いなくなったのか」

「はい」

ルークが胸の中で私の服をつかんで私を見上げた。

「セバスはやってない! 絶対にセバスはやっていない!」

「でもルーク様。ハンナがリーリア様をさらったのは事実なのですよ」

ジュードがルークをたしなめるように言った。侯爵家の跡取りたるもの、いつも冷静に。私も言われて育ってきたことだ。

「よい。警護隊の者の話を聞こう」

私はしゃがみこみ、ルークと目を合わせた。

「ルーク、泣いたり反論したりせずにいられるか」

ルークははっとして袖で目をこすった。ハンカチがポケットにあるだろうに。なぜだかそのやんちゃなしぐさがリアを思い出させ、切なくなった。

「ルークも警護隊の話に立ち会わせる」

「しかし、まだルーク様は」

「ルークには聞く権利がある。そうだな」

「はい」

まだ目も鼻も赤いが、泣き崩れていた先ほどとは別人のようなしっかりした顔だ。幼いからと言って、真実から遠ざけていていいということはない。

「ルーク、手を」

「お父様、はい!」

「ジュード、少し落ち着いたら、執務室に通せ」

「承知いたしました」

ジュードが軽食や茶の指示を出しながら去っていくのを目の端でとらえ、私はルークと手をつないで執務室へ向かう。着替えたいところだが、それは後でいい。

「ハンナが連れ去ったと、聞きました」

ルークがぽつりと言う。

「確かに、リアはハンナと一緒にいたよ」

「なぜですか。なぜリアを」

「まず、落ち着いて警護隊の話を聞こう。考えるのはそれからだ」

手をつなぐには大きくなりすぎたルークの手をぎゅっと握る。二人だけでは広すぎる気がするこの屋敷では、そうでもしなければいたたまれない気がした。