軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

待っていてね

私は明るい光で目が覚めた。部屋はいつもカーテンが引いてあるから、ハンナが来るまで暗いはずなのに。

そうか。ハンナは。

「おうちじゃ、にゃい」

どうやらまたテントの中のようだ。私が何とか体を起こすと、隣でもぞもぞと何かが動いている。

「ありしゅた」

そうつぶやいたら、もぞもぞしていた塊ががばっと起き上がった。なんだか同じことばかり繰り返しているような気がする。でもよかった。アリスターの魔力がだいぶ回復している。無事だったんだ。

「みんなは! 虚族は! ちびは!」

そう叫んでいるから、

「あーい」

と返事をした。とたんにぎゅーっと抱き着かれた。

「ちび!」

「リアでしゅ。ぐえ」

一晩寝たくらいで名前を忘れてどうする。と言うか、昨日から気になっていたのだが、ちびと呼ぶのはいかがなものかと思う。私なんかちゃんとアリスターって言ったのに。あと何かが、何かが出ちゃうから!

「おい、起きたか。待て、アリスター! ちびがぐったりしてるぞ!」

「……りあでしゅ」

どいつもこいつも。アリスターは慌てて私を離した。この声をかけてくれた人は、あれだ。

「ばーと」

「……よくわかったな。まあいい。起きたなら、飯は食えるか」

飯! ご飯だ!

「……そうか、目がきらきらしてるぞ。アリスター、お前大丈夫そうなら、そいつを川に顔を洗いにつれてってやれ」

「わかった」

テントは天井が低い。私はそのまま、アリスターは腰をかがめて、外に出た。何となくまだだるいような気がする。アリスターも子どもらしくなく肩をごきごきと鳴らした。

「ちび、いやリア、お前もだるいか」

「あい」

二人とも、魔力を限界まで使ったからなのだろう。お話ならこれで魔力量がぐんと増えたりするのだが、現実には命の危機なのだった。気をつけよう。そしてこれを何とかしてアリスターに伝えなければならない。そうでないと、また無理をするだろうから。

私は昨日のことを思い出してぞっとした。すぐそばまで虚族が来ていた。私が結界箱を発動させなかったら、少なくとも私とアリスターはやられていただろう。そう思うと、結界箱に頼る気持ちもわかるし、結界が使えないとわかってすぐに戦闘に入ったこのハンターたちの強さもわかるような気がした。

顔を洗いに行くのは大歓迎なのだが、その前にしなければいけないことがある。

「キーエ」

こいつとの対決だ。私は竜の前に仁王立ちした。竜が口の先でそっと私を押す。いつまで一人でトイレに行かせない気だ。

「なんだ、しっこか、そこらへんでいいだろ」

私はきっとバートをにらみつけた。小さいとはいえ、レディに向かって!

「お、おう、すまん。アレだ。なあ、お前、大丈夫だって。俺らがいるだろ? 安全だから、一人で行かせてやれよ」

「キーエ」

バートの言葉に竜はふんっと鼻息を吐きだした。人間の言うことなんて、と言うことだろう。アリスターが隣で苦笑いして、竜の鼻筋に手を伸ばしながら、

「俺が途中までついていくから。それならいいだろ」

そう話しかけると、竜は仕方がないわねと言うように道を開けてくれた。そうしてアリスター付きながら、やっとちゃんとトイレをすることができたのである。竜は小さいものが好きなのだろうか。それとも、アリスターも小さいころ群れ認定されたのだろうか。

「ちび」

「りあでしゅ」

「おう、リア。俺はミル。今朝もスープを作っといたからな」

「みりゅ。ありがと」

男たちは先に食べていたようで、私とアリスターの分だけが残されていた。

「ミル、ありがとう。朝にスープなんて珍しい」

「いつもは朝は簡単に済ますからなあ。だが二人とも昨日倒れただろ。ちょっとでも栄養をつけとけ。ほら」

アリスターがミルという人にお礼を言うと、ミルは照れくさそうに笑った。茶色の瞳が優しい。私から見るとみんな大人だが、お父様よりはだいぶ若い。そう言えばそもそもお父様はいくつだったのか。スプーンが止まった。

「リア、さあ、飲むんだ」

「あい」

それを見てアリスターが優しく促す。その間に、大きい人と小さい人のでこぼこコンビがテントを片付け、荷物を竜に乗せ直している。人が乗るためだけのラグ竜が五頭、そして荷物用のラグ竜が二頭だ。その荷物は整理し直され、ちょうど私一人分が座れるよう整えられていた。

大きな人が私をひょいと抱き上げ、椅子の形にした荷物に座らせると、帯のようなものを体の前に緩くクロスさせた。シートベルトのようだ。そうして一歩離れると、満足そうに頷いた。合格のようだ。私も体が固定されて少し楽だ。

「俺はキャロ。このでかいのがクライド」

小さいほうが自己紹介してくれた。

「りあでしゅ。ちいしゃいの、きゃろ。おおきいの、くらいど」

「小さい言うな! もっと小さいだろ、お前!」

とっさに言い返してきたキャロの目はきれいな緑色だった。そのキャロの肩をクライドがポン、と叩く。

「慰めてるつもりか? ああ?」

そんな風景が当たり前であるかのように、バートが声をかけた。

「さ、出発だ。ちびのようすを見ながらゆっくり行くぞ。トレントフォースまではなるべく他の町には寄らずに行こう。今回ばかりは贅沢に」

バートがにやりとした。

「この結界箱を使わせてもらうさ」

そうして私のほうを見てこう言った。

「これがお前の運び賃と当面の生活費の分だ。先払いとしていただくよ」

「素直に面倒見てやるって言えよ」

キャロがあきれたようにそう言い、他の人はそれを笑って見ている。私はしっかりと頷くと、後ろを振り返った。

多分そっちにお父様と兄さまがいる。忘れないでね。必ず帰るから。