軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お誕生会

うちのお父様だけでなく、ギルのお父様もレミントンのことは気にかけているようだったが、とにかく二人とも忙しかった。

「またおでかけでしゅか」

「ああ、行きたくないのだが」

そう言って私をぎゅっと抱きしめるお父様は、またケアリーに向かうのだという。

「ヒューバート殿は、お元気そうだったぞ。例の狩人たちは元気にやっているとリアに伝えてくれと言ってた。ちゃんと狩人としても活動しているからとな」

「ありしゅた」

「そんな名前だったかもしれんな」

お父様も兄さまも、私がウェスターにいたことがそもそも嫌なようで、ウェスターに関連したことがらについてはあまり話したくないという雰囲気を醸し出す。

しかし、私は幼児だから、空気など読まない。

「ありしゅたー、ばーと、みりゅ、きゃろ、くらいど」

「ああ、ああ、そんな名前だったかな。王都に屋敷を与えられて、リスバーンは城に勉強に行き、残りはハンター以外の仕事をするのが通常。時折五人で、ユーリアス山脈のふもとに狩りにいくそうだ」

「がんばってりゅ」

私はうむと頷いた。お父様、本当は詳しく話を聞いてきているのだ。

「このようなことをリアに話すのもどうかとは思うが、結界箱も、ユーリアス山脈のふもとで時々起動実験をしているそうだぞ」

「ウェスターも少しは頭を使うようになったのですね」

「にいしゃま……」

厳しすぎる。私が領都にたどり着くまでに兄さまたちに何があったのか気になるが、そういう話はあまりしてくれないのだ。ただ、確かに、ヒュー以外のウェスターの王族は若干緩い感じではあった。

「その時に、どうやら実験を監視している集団がいるらしいという話も聞いてきてな。いや、リアに話しても仕方のないことではある」

お父様は首を横に振った。しかし兄さまはお父様にも厳しかった。

「お父様、私はリアにも聞かせたほうがいいと何度も言っています」

「しかしな」

「お父様」

お父様はため息をついた。

「どうしても監視している者の身元はつかめないらしい。しかし、イースターの可能性があると、ヒューバート殿下は言っていたな」

「いーしゅたー」

第三王子のいるところだ。しかし兄さまは納得できないという顔をしている。

「しかし、キングダム全体ならともかく、小さい町一つ覆うくらいの結界箱は、イースターにだってあるでしょう。なにもウェスターにまで見学に行かなくても、自分の国で起動実験をすればいいことではないですか。現にオールバンスにもいくつかありますし」

「おうちに?」

「ええ、もう少し大きくなったら見せてもらいましょうね」

オールバンスは魔道具も扱っているので、いろいろな魔道具や魔石もあるのだという。

「領都を覆う程度の結界であれば、夜だけ使うことにすれば、10回ほどはもちそうだということだ。それを、リアが提案したとおりに週末に限定すれば、魔石にする魔力を入れるのは二か月に一度ほどでいいということになる。しかもルークでさえ一人で、しかも一回で済む」

「ということは、アリスターが私の半分程度の魔力を充填できるにしても、成人したらアリスター一人がいれば十分管理できるということになります。今ならぎりぎり王族だけでもいける感じですね」

私がウェスターでちょっと提案した、週末の夜だけやるということが現実味を帯びてきたようだ。

「そのため予備の魔道具箱の買い付けや、魔石の仕入れ、将来的に人口増なども考えられるから、建築資材をどうするのかなど、なかなか面白いことにはなっているんだ。特に魔石は一度キングダムに集まるから、そこから魔道具用にウェスターに売られるという仕組みでな。だが、この結界箱の魔石については利益を度外視して提供できないかということになっていて」

お父様は肩をすくめた。その調整で直接行かなければならないらしい。

「しょれで、いしょがちいの」

「それもある。こうなってはリアのおかげでウェスターとの交流が盛んになったとも言えるな」

いろいろ私のおかげなのである。私はふんと胸を張った。

「昨今、なかなか大きい魔石も手に入りにくくなっているからな。もちろん、イースターやファーランドでも需要はあるし」

私はそっとポシェットのラグ竜を触った。中には大きな魔石が入っている。確か、ミルたちも持っていたはずだ。

「おおきいましぇき、ふだん、かり、ちないところにいりゅ」

これは山脈のない、草原で狩りをした時のものだ。

「リアのその魔石ですか。確かに大きそうでしたもんね」

兄さまはラグ竜のポシェットが第三王子のすねに当たったところを思い出したのか、ちょっと痛そうな顔をした。

「魔石が入っているのは知っていたが、そんなにか。どれ、貸してごらん」

お父様にラグ竜を渡すと、お父様はそれをぎゅっと握った。

「ああ! たいしぇちゅに!」

「すまん。しかし、これは大きいし重いな。本来ならキングダムに納めるレベルだが……まあ、知らなかったことにしておこう」

「あい!」

知らなかったことにするのが一番である。

そうして、四侯それぞれが忙しく過ごしている中で、私たちの寄せ書きは完成した。

「りあのじ、いちばんおおきい」

「次がわたしね」

小さい字は書けないので、真ん中にどーんと私のおめでとうが入っている。私が書いた時は、シンプルな白い紙だったが、いつの間にやらきれいな縁取りが描かれ、それぞれのおめでとうと署名がまるで絵画のように配置されている。

美しいのは兄さまの字、角ばっていて力強いのはギルの字、流れるような、ちょっと適当なのはマークの字だ。フェリシアのは印刷された字のように読みやすい。

その紙を丸めてリボンで結ぶ。

「あとはおやちゅでしゅ」

「わたしは何日か前にケーキをやくのよ。そのほうがおいしいんですって」

「りあはかしゅてら。おさとうをぱらぱらしゅる」

もちろん、ただいま練習中であり、オールバンスの最近のおやつはカステラばかりだ。ラグ竜やなにかの絵を切り抜いて、その上から白いお砂糖を振るのだ。私はふと思いついた。

「とかげのほうがいいでしゅかね」

「お花とかがいいとおもうわ」

もっともである。マークは手作りではなく、町のお菓子屋さんから何かを買ってくるというし、ギルはお母様のジュリアおばさまが何かを用意しているらしかった。

ニコはなにかがあると気付いていたようだったが、当日まで何とか聞かずに我慢していた。

そして当日のこと。フェリシアに「リアが渡してね」と預けられた寄せ書きを持って、私は兄さまと一緒に城に向かった。本当はニコのお誕生日は数日後なのだけれど、皆で集まれるのがこの日しかなかったのだ。

おやつは兄さまがかごに入れて抱えてくれている。オッズ先生もこの日ばかりは許可をくれた。

「にこ!」

「リア! ルーク!」

私たちが一番乗りだ。それから、ギルが来て、マークが来る。

私の持ってきた寄せ書きを、ニコが気にしてちらちらと見るのだが、こればかりは皆がそろうまで待ってもらわなければならない。

しかし、結局この日、クリスもフェリシアも姿を見せることはなかった。

なんとなく気の抜けた誕生会だったが、それでもニコはとても喜んでくれた。クリスの焼いたケーキはどんなだったか考えながら、兄さまと一緒に家路につくと、そう間を置かずお父様も帰って来た。

「おとうしゃま!」

「リア、ルーク」

お父様は私たちを両側から抱きしめた。

「きょうね、あのね」

「リア。ルーク。よく聞いてくれ」

お父様は抱きしめた手を緩めると、私と兄さまを交互に見た。

「レミントンが、イースターに出ていった」