軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

とばっちり

次の週お城に行った私の前には、三人の男子が並んでいる。

ニコ、アルバート殿下、ランバート殿下だ。ニコとアル殿下は腕を組んでこちらを見ている。ランおじさまは面白そうな顔をして並んで立っているだけだが。春だというのに暑苦しいことだ。

「リア、せんしゅうのやすみまえのよるのことだが」

ニコが重々しく話し出した。予想通りである。

そもそも、アル殿下とニコ殿下の付き添いで北の領地に行ったわけだし、その北の領地で起きた、あの落下事件では、私と兄さまは連絡を取り合うために結界をガンガン使った。

非常事態でもあったから、あの時私は何も言われなかったし、兄さまも何も言われなかったと思う。

でも、魔力を持っている人は多かれ少なかれ何かを感じたと思うのだ。もしかしたら、北の領地特有のものかとその時は思ったかもしれない。だが、同じ「何か」を王都でも感じたとしたら、それは北の領地でも一緒だった誰かが起こしたということになる。

そしてその誰かとはつまり、

「リア、お前だな」

となる。アル殿下、目が鋭いです。幼児を見る目じゃないな。私はやれやれと首を横に振った。

そもそも、兄さまやギルという可能性もあるではないか。現に元はといえばギルが結界を作ると言い出したのだし。

「なんのことでしゅか」

私はそう答えると、手のひらを上にして両手を上げて見せた。よくお父様がやっている奴である。

「くっ。オールバンス。くくっ」

ランおじさまが笑いをこらえている。失礼だが、つまりお父様に似ていたということなのだろう。ならばそれでよい。

「ほんとにお前は腹の立つ」

北の領地への道中でも腹の立つことなどほとんどなかったではないか。アルバート殿下が勝手にイライラしていただけである。

「リア、おじうえはともかく、わたしにもおしえられないことか」

ニコが悲しそうな顔で私を見た。これはずるい。しかし、二歳児を追及する大人もずるいと思う。私は思わず叫んだ。

「ぎるとにいしゃまにきいて! りあはちらない」

しまった。これでは兄さまとギルが何かしたみたいではないか。まあ、実際したわけだし、後は二人に任せよう。

「さ、にこ、べんきょうのじかん」

「あ、ああ」

私はニコの手をつかむと、図書室に向かって走った。後ろから小さい声が聞こえる。

「少しも速くならないな」

アル殿下は本当に失礼である。たった一か月か二か月で成長するわけがないではないか。

階段を上がり切ると、ニコは真剣な顔で私にこう言った。

「おじうえは、きたのりょうちのことしかきづいていない。だが、わたしはこれでさんどめだとおもう。れんごくとうでもおなじことがなかったか」

「にこ、しょれは」

すぐそばにいたからか、あの時ニコはとっさに私が結界を張ったことに気が付いていたのだ。

「せちゅめい、むじゅかちい。にいしゃまにきいて」

「わたしにだけ、ないしょではないよな?」

私はつないだ手と反対の手でニコの頭をなでた。

「ちがいましゅ。ともだちだもん」

「そうだよな!」

ニコは明るい顔になると、私の手を引っ張った。本当は友だちでも内緒にすることもある。でも、アル殿下はともかく、ランバート殿下にまで感づかれたらもう曖昧にはできないだろう。

「にいしゃま、ぎる、まかしぇた」

「どうした?」

「なんでもない。いこう!」

「ああ!」

今日もオッズ先生をごまかして、なんとか勉強時間を減らすのだ。

兄さまとギルに任せようと思ったが、それではすまなかったようだ。結界を保つためという理由で、四侯が王都を離れていられるのはぎりぎり10日だ。その10日を利用して、先週からギルのお父様はファーランド方面へ視察に行っている。その視察の報告を受けるという名目で、ついでにお父様もその場に呼ばれ、先週の結界について聞かれたらしい。

それが今週の休みの前の日、つまりうっかり結界を反応させてから、ちょうど一週間たった今日だった。

そのせいで、せっかくの兄さまの授業中に、兄さまとギルは呼び出されてしまってつまらなかったのである。

「リアはぶーぶーもんくをいいながら、クリスとフェリシアとマークとたのしくあそんでいたではないか。とちゅうでしっかりひるねもしていたし」

「ぶーぶーちてないもん。あとにこともあしょんだ」

「たのしかったからいいではないか。おおきいひとにもじじょうがあるのだぞ」

マークやフェリシアにはなかったではないかと言いたかったが、我慢した。

その日げっそりとした顔で帰ってきた兄さまはともかく、いつになく厳しい顔をしたスタンおじさまに連れられて帰ったギルのことが心配だ。

「兄さまのことも心配してください」

「うちはだいじょうぶでしゅよ」

第一誰一人厳しい顔も暗い顔もしていない。明日から二日お休みで、家族で過ごせるのだという明るい顔の人しかいない。お父様などむしろいつもよりご機嫌なくらいである。

「久しぶりにスタンに会えたしな。ギルから話を聞く前に王家に呼び出されたものだから、事情をそこで知らされて渋い顔をしていてな。いつも明るい奴だから、そんな顔を見るのもたまには面白い」

「おとうしゃま……」

完全に人ごとである。そもそもギルが悪いという話ではなく、うちがやっていたことをギルが真似しただけであって、元凶はオールバンスなのに。

「オールバンスがというか、リアですよ、そもそもは」

「りあ、わりゅくない。まねちたのは、にいしゃまとおとうしゃま」

「確かにな。そもそもを語りだすときりがないからな」

お父様がうまいことまとめてくれた。

「まあ、スタンは面白かったが、それよりも面倒なことになってな」

聞かなくてもわかる気がした。

「殿下がたが、自分たちにもやり方を教えてほしいと」

やっぱりそうなるよね。