軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お土産

教室でもある図書室に着くと、クリスがそわそわして何か言いたそうだ。お見合いのことだろうか。

「ねえ、リア」

「あい?」

「そのふくろ、手にもっているふくろが気になるんだけど」

「これでしゅか」

私は袋を持ってふふんと胸をそらせた。

「これはりょこうのおみやげでしゅ」

「りょこうではない。しさつだ」

ニコがまじめな顔で言った。初めはともかく、おじいさまの領地に行ってからは遊んでばかりだったような気がするのだが。それでは言い直しておこう。

「しさつのおみやげでしゅ」

「見せて!」

私は絨毯の上に座り込むと、袋をひっくり返してざざっと床に開けた。

「わあ、え? なにこれ」

クリスの喜びの声は、戸惑いに変わった。

「おみやげ。あちこちでひろった」

床に広がったお土産は、あちこちで集めたものだ。私はまず少し青みがかった平たい石を取り上げた。

「これ。みりゅすこのいち」

「ミルス湖はここになります。王都から見ると、北西の位置にありますな」

授業がないからオッズ先生はいないかと思ったら、ちゃんと控えていた。そしてすぐ黒板に地図を書いて、ミルス湖の場所を説明してくれている。

私はその平たい石をもって立ち上がると、横からこう投げる真似をして見せた。

「こうなげりゅと、みじゅのうえ、とぶ」

「リアがなに言ってるかわからないわ」

「リア、こうだろう」

ニコが別の石を拾って投げる真似をしてみせる。

「このようにすいめんにむかってなげると、いしがみずのうえをぴょんぴょんとはねるのだ」

「なにそれ、すごい!」

「いしのかたちがひらたいのがよいのだ」

「ほんとだ! 石がひらべったいわ」

ニコと私の説明はたいして違わないと思うのだが。なぜクリスはよくわかりましたという顔をしているのだ。仕方がない。先に進もう。

「しょちて、とぶいち、いろいろあちゅめてきまちた」

青っぽいのから、赤みがかったもの、そしてよく見ると石の中に石が混じっているものなど様々だ。みんなで石を並べて観察してみる。

「ミルス湖の波で石同士がこすり合わさって、角が取れて丸い石になるのでしょうな」

オッズ先生まで石を取り上げて、波にもまれる様子を再現して説明してくれている。

私はもう一つ石を選んで見せた。

「このとがったのは、れんごくとうでひろいまちた」

「リア、あのじょうきょうでいしをひろってたのか」

ニコにあきれられたが、大変なのはその後だった。

「なんと! リーリア様、あの島に! まさか殿下も?」

「う、うむ。いったようなきもする」

ニコが目をそらした。

「ニコラス殿下」

「しょちて、これがゆきわりそうのちおり」

オッズ先生の説教が始まりそうだったので、私はそれを遮った。うっかり煉獄島のことを口に出してしまったが、告げ口をしたかったわけではなく、秘密だということをちょっと忘れていただけなのだから。

「お花がぺったんこよ」

「しょのままだと、かれちゃう。ほんにはしゃんで、ぺったんちた」

それを持って帰ってきてから、メイドたちと一緒に紙にのりで貼り付けたのだ。

「えほんにはしゃむといい」

「いつでもお花が見られるのねえ。ふしぎだわ」

これはクリスも喜んでくれた。

「あとは、これがどうくちゅのいち」

「リア様、あんた何やってたんだ」

ハンスのあきれた声が響く。何をやっているとは失礼な。

「おちたところにあったから、ひろった」

「転んでもただでは起きないとはこのことだな」

「ころんでましぇん。おちただけでしゅ」

「もっとひでえ」

落ちたくて落ちたのではないからいいではないか。

「ほら、このいち、まっくろ」

「ほんとだ。今までの石とはなんだかちがうわねえ」

クリスにはその貴重さは理解してもらえたようだ。

「この石は北部の丘陵地帯独特のものではないですかな」

オッズ先生が石をあちこちから眺めている。

「おじいしゃまのおうち。どうくちゅ、あった」

「やはりそうですか。なるほど、興味深いものです」

私のお土産を一通り楽しんだ後は、ニコが合図してメイドに小さいものを持って来させている。

「わたしからのクリスへのみやげは、これだ」

「なにかしら」

リボンなどはついていないが、小さな箱である。私も興味津々でのぞき込んだ。

クリスが箱を開けると、部屋にはほうっという声が響いた。中にはきれいな緑色の石が入っていた。

「ミルスこのむこうがわ、ウェリントンさんみゃくでとれるという、くじゃくいしだ。ながめていてもきれいだが、ブローチなどにするひともおおいときいたぞ」

私の思い出の詰まった石とはずいぶん違うが、これが王子力というものなのであろう。

「ニコ、ありがとう」

クリスは嬉しそうに笑った。そして私のほうを見て、

「リアも、ありがとう」

とやっぱり嬉しそうに笑った。ちゃんとお礼が言えるようになったとは、クリスも成長したものだ。私がうんうんと頷いていると、トントンとノックの音がして、部屋にワゴンを押したメイドたちが入ってきた。

ナタリーが一歩前に進むと、コホンと咳ばらいをした。

「これは皆様にリーリア様からのお土産です」

お土産という割に、ワゴンに乗っているのはお菓子とお茶なのでみんな戸惑っている。

「コールター伯のお屋敷の秘伝のお菓子のレシピを、リーリア様がコックに頼み込んで教えてもらったものを再現いたしました。現在王都でこのお菓子を食べられるのは、オールバンスのお屋敷とここだけでございます」

秘伝、リーリア様が、頼み込んで、というところを強調したナタリーは誇らしげだ。これはお城のメイドから喜びの声が上がった。オッズ先生も嬉しそうなところを見ると、オッズ先生は実は甘いもの好きに違いない。

「うむ。ではひとやすみして、みなでおちゃをのもうではないか」

「おやちゅ! だいじ!」

「どんなあじがするのかしら。たのしみね!」

たまには勉強のない日があってもいい。