軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19

サラサラと流れる川の音を聞きながら、揺れる草木を眺める。キョロキョロとする私の左手を捕まえるシリウスは、そんな私を見てクスクスと笑う。

「……なぁに?」

拗ねたようにシリウスへ問いかけると、綺麗なアメジストのような瞳が細められる。

「リアが幼子のようで可愛くて。つい。」

からかっているような言葉に、ふいっとそっぽをむく。

「……幼子じゃないわ。」

「ふふ、ごめんね?」

そんな私たちの会話を、穏やかな顔で聞きながら、ダリルと名乗った男性が案内してくれる。ダリルは、ここら辺の村をまとめる、リーダーのような存在らしい。

「ここら辺で採れた野菜や果物は、市場で売られています。」

そう言って連れてこられた、大型の倉庫のような建物は、前世での海鮮市場を思い出してしまう。ソワソワとする私へ、中も見て構わないと言うダリルに頷いて、シリウスの手を引いて歩いて回る。

「野菜を使った料理とかは売らないの?」

前世では、市場などではその場で食べるところが多かったなと、何気なく疑問を口に出す。すると周りが静かになり、黙り込んでしまったことで少しだけ焦る。

「……リア。どうしてそう思ったんだい?」

沈黙の中、シリウスに問いかけられ、おずおずと考えを口に出した。

「だって、美味しく料理された物を、実際に食べた方が買いたいって思わない?匂いにつられて来る人も増えると思うの。」

私がそう言うと、シリウスは私の頬を撫でて「なるほど」と呟く。いきなりのスキンシップにビクリと身構えた私へ、シリウスはフッと笑うと、ダリルへ目を向ける。

「どうかな?僕は試してみてもいいと思うけど。」

シリウスに問いかけられ、呆然としていたダリルは「そうですね」と呟いた。

「確かに、その考えはありませんでした。……確かにそうすれば、料理を目的に来てくれる人も増える……。」

ブツブツと考え込み始めたダリルに苦笑しながら、シリウスは私へ視線を向けると「流石だね」と微笑む。そんなシリウスに、私の考えではないと言いそうになるが、そんな事を言ったところでと思い直した。

複雑な感情になった私は、シリウスへ誤魔化すように笑った。

しばらく考え込んでいたダリルは、周りの人に促され案内を再開する。

次を案内すると歩き出したダリルについて行くと、そこは孤児院だった。この世界では、教会が運営を担っているそうで、教会に併設された建物が孤児院なのだと、ダリルが教えてくれる。

分かってはいたが、どこの世界にも孤児は存在するのだと、改めて思った。

広い庭を走り回っていた子供たちは、私たちに気がつくと建物に走っていく。

中からシスターの格好をした、三十代程の女性が出てくる。

「ケイトさん、良かったらこれ。」

ケイトと呼ばれたシスターに、ダリルは手に持っていた野菜の入った袋を渡す。そして、こちらに目を向けたケイトに紹介するように続ける。

「今日は領主様のご子息であるシリウス様と、ご婚約者であるアメリア様が来てくださいました。」

「まぁ」と口元を押さえたケイトにニコッと微笑むと、挨拶をしてくれる。

「私はこの孤児院の管理をしております、ケイトと申します。」

ケイトがニコニコと笑って挨拶をすると、横から子供たちが「先生」と大きな声で走ってくる。

その様子に元気だなとみていると、私の上着がくんっと引っ張られる感覚がして下を向く。五歳ほどの女の子が私の袖を掴んでいた。

「お姉ちゃんたちは何しに来たの?」

無邪気に問いかける女の子に、慌てるようにケイトが近寄る。そんなケイトに微笑んで、女の子と目線を合わせるようにしゃがみ込む。

「貴方たちの様子を見に来たの。お名前聞いてもいいかしら?」

「エマ!」

私にニッコリと笑って元気よく返事をするエマは、外で遊んでいたのか髪が乱れている。それを手で直しながら、「私も遊びに交ざりたいわ」というと、シリウス以外は驚いているのがわかる。

許可を取るようにシリウスを見上げると、仕方ないなという顔をして頷いてくれた。その様子に気分を良くした私は、エマの手を取って走り出した。

そうして子供たちに交ざり、追いかけっこやおままごとをしていると、あっという間に時間が過ぎていく。

ふとザワザワとする空気に顔を上げると、木に登っている男の子たちが目に入る。何があったのだろうと見ていると、どうやら降りられなくなったようで、ケイトを呼ぼうと話している。

「大丈夫よ。」

オロオロとする子供たちを落ち着かせるように、ニコッと笑って声をかける。少し息を吐いてトンと地面を蹴った。「風」と呟くと、ふわっと膜のように風を纏う。

泣いている男の子に声をかけ、抱えると安心させるように頭を撫でる。

「よくここまで来れたわね。」

ヘラッと笑った私へ、唖然とする子供たちは、私の足が地面に着くと「凄い!」と盛り上がっていた。

「どうやったの!?」

「それ魔法?」

「お姉ちゃんすごいね!」

子供たちに囲まれ、キラキラと見つめられると、なんだか照れてしまう。それを隠すように「じゃあ、特別よ」と大きな声で宣言すると、辺り一面に氷の花を咲かせる。

子供たちの騒ぎ声に、孤児院から顔を出したシリウスは、私たちの様子を見て苦笑していた。目が合うと眉尻を下げたシリウスに、帰ったら何か言われるだろうと思ったが、楽しげな子供たちを見て、まあいいかと開き直る。

それから、魔法をせがむ子供たちが満足するまで、庭に氷の彫刻が並び続けた。