軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9

自己紹介から始まった会議は問題なく終わり、みんなは次々と会議室を後にする。

「アメリア嬢、予定なんだけどーー」

約束通り、カイルが私へ話しかけてきた。

「次からの会議の後、何も用事がなければお願いしていい?」

会議は週に一回。それくらいならと、にっこり笑って大丈夫だと伝えると、カイルは何かを思い出したかのように声を上げた。

「あっ、そうだった!アメリア嬢に少し提案なんだけど……。」

すると、横から伸びてきた手にカイルとの距離を離される。

「……何の話?」

カイルではなく、私へ問いかけるシリウスに首を傾げ、カイルを見る。

シリウスに無表情で目線を向けられても、いつも通りのニコニコの笑顔は崩れることがない。

「もし良かったら、生徒会に入らない?今生徒会長をしているレオン王子が、新しく一年を入れたいらしくて。爵位、能力、性格。全てが向いている子って少ないんだよね。」

カイルは軽く言っているが、要するに、王太子へのコネを狙っている者や婚約者の座を狙っている令嬢は、お断りと言いたいのだろう。気持ちはわからなくもないが、私のどの点を見て決めたのか甚だ疑問だ。

私が他に何か意図があるのかと考えていると、シリウスがカイルを鋭く睨んだ。

「……なぜ、リアに?やりたい奴にやらせた方がいいのでは?」

「うーん、でも、アメリア嬢以外に相応しい人って難しいですよ。レオン王子の側にいても、アメリア嬢なら変な噂にならないでしょうし。」

私が傷物だから、噂になり得ないと思っているような言い方に、シリウスは眉を顰める。ピリピリのとした空気を分かっていないのか、カイルは気にしている様子は無い。

(……やっぱ、この人苦手だわ。それに今の発言、私が気にしていたらどうする気なのよ。)

カイルの空気の読めなさに、少し呆れてしまった。

「それは何?リアに、そんな価値は無いって言いたい訳?」

シリウスの低い声が響き、はっきりと怒りの感情が伝わる。それはさすがにカイルにも分かったようで、焦ったようにそういう意味じゃなかったと謝っている。

カイルは、本当に悪気なく言っただけなのだろう。眉を下げて謝る様子に毒気を抜かれる。

「……リア、話を聞く必要は無いよ。行こう。」

私の手を引いて、すぐに出て行きそうなシリウスを止める。

「待って!……私、生徒会に入ります。」

カイルに向けてそう言うと、ぱあっと笑ったカイルが「助かる」と元気よく言った。そして、怒っているであろうシリウスをチラッと見ると、矢継ぎ早に日時を指定される。その時間に生徒会室に来てと残して、カイルはそそくさと去っていった。

カイルを見送ると、シリウスと二人だけになった会議室が静まりかえる。

「……どうして引き受けたの?あんな失礼な奴、リアが関わる必要ないよ。」

シリウスの言葉にどう説明しようかと迷う。私が引き受けたのは、これからの計画のためにレオンの信頼を、少しでも勝ち取っておくべきだったからだ。

そして、ヒロインであるリリアーナとの関係を素早く知るためにも、彼らの話を聞ける立場にある方がいい。これから、どうなるか分からない以上は、当初の予定通り大人しくしているだけではいけない。

(既に関わってしまってるもの。ヒロインになり変わる訳じゃない。ただ、災厄に備えるだけよ。)

「……私に必要だったの。」

絞り出した私の答えに、シリウスは眉を寄せ泣きそうな顔をした。

「……ねぇ、リア。僕に教えて?……リアは何を抱えているの?僕じゃ頼りにならない?」

シリウスの言葉に私は息を飲んだ。

広い会議室に、自分の心臓の音だけが聞こえるようだった。繋いでいる手が震えているのは、私のせいかシリウスのせいか分からない。目を見開いて固まってしまった私に、シリウスは続ける。

「……あの日から、リアは変わったよね。強くあろうとしていて、最初は、夢に向かってだと思ってた。……けど、そうじゃないよね?……どこか遠くを見ているように僕には見えた。何を怖がっているの?」

シリウスの言葉が耳を滑っていく。まともに思考ができなくて、床がぐるぐると回っているような感覚に、足元がフラフラとしてしまう。

「……え、えっと……。」

フラっと一瞬大きく揺れ、シリウスに抱き留められた私は、寝不足だったことを思い出した。

「……大丈夫?」

心配そうなシリウスに頷きながら、グルグルとする頭で何を言えばいいか考えていた。

「僕には言いたくない?」

悲しそうな顔をしたシリウスに、咄嗟にそうじゃないと首を振る。

「違う。……そうじゃないの。……ただ、頭がおかしいって思われるかもしれない。それくらい荒唐無稽な話なの。」

記憶が少しずつ薄れる度に思っていた。前世なんて本当はなくて、私の頭が作り出したお話だったのではと。だから、誰にも言えなかった。

「僕は信じるよ。断言する。たとえ何があっても、僕だけはリアの味方でいる。……それくらい愛しているんだ。」

シリウスの言葉に、憑き物が取れたようだった。

そっと抱きしめられ、優しい声で「頑張ったね」と言われる。温かく優しい手に撫でられ、不安だった気持ちが溶けて涙が止まらなくなる。

ぎゅっと苦しくなる心臓を押さえ泣きじゃくる私を、シリウスは黙って抱きしめてくれていた。