軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五日目の来訪者(1)

ヴァイスネーヴェルラントから、ヒルデブラント男爵の妹のアレクサンドラが、イザーク・バウアーと秘書二人、カサンドラ王太后の直属の騎士と共に到着したのだ。

更に植民地の島から、シュテルンベルク伯爵の姉エリカが娘のコリンナと共に到着した。

どちらの女性も実家よりも先に我が家を訪れた。

「エリカ様。お久しぶりです。再びお会いできて嬉しいです。」

リップサービスではない。

シュテルンベルク家は、今てんやわんやの状態なのである。

収穫祭を目前に控えたこの季節は、貴族達にとっては納税の季節だ。

税金と同時に領地の特産物と、大量の書類を提出しなくてはならない時節なのである。

ある程度の事は、領地の文官や税理士にもできるが、領主一族が確認し署名しなくてはならない書類も多い。

元々、当主が13議会のメンバーで医療大臣のシュテルンベルク家では書類仕事のほとんどを後継ぎであるコンラートがやっていた。

そのコンラートが重傷を負って入院し、父親であるシュテルンベルク伯爵はその側でただメソメソと泣くばかりの、何の役にも立たない粗大ゴミと化している。

にっちもさっちもいかなくなったシュテルンベルク家はお母様に助けを求めに来たが、お母様だって超忙しいお父様に代わって、エーレンフロイト家の節税対策に忙しいのだ。そのうえ、我が家には次から次へと客がやって来る。その応対もしなければならないお母様はついに倒れてしまった。

そんな中で戻って来てくれた、シュテルンベルクの領主一族だ。ありがたくて涙が出そうである。

「もう、シュテルンベルクの屋敷にも行かれました?」

「いいえ、まずレベッカ様とアルベルにご挨拶をと思って。」

「入る前に、覚悟をしといた方がいいですよ。湿度95%、不快指数は100ですから。」

使用人達はしくしくと泣いていて、騎士達は怒りでものすごい熱気だ。当然、精神的湿度は上がるばかりでやばいキノコが生えてきそうなほどである。

「お母様が何もしない人だったからその代わりにと、お父様に領地経営の書類仕事は一通り教え込まれているから書類仕事は任せて。ただリヒャルトには、いい加減しゃんとしなさいと言ってやらねば駄目ね。リエやメグは、まだ戻って来てないのかしら?」

「リエ様が住んでいるシュテファリーアラントは、片道五日かかるのでやっと手紙が届いたくらいかと思います。メグ様は今日の早朝、王都に来られたらしいのですけれど。」

「?」

「メグ様の夫のニコラウスさんが、国を代表する弁護団の一員に選ばれたんです。その団体はアズールブラウラントの大使館に滞在していて。同行しているメグ様も大使館におられるようです。」

「弁護団?何を弁護するのかしら?」

「弁護というより告発です。王太女殿下直筆の告発状を持っていて。犯罪者をアズールブラウラントに引き渡せ!と王太女様は言っておられるようです。」

「それは・・難しいでしょうね。」

「国際法的にもあり得ない。ってエリーゼ様は言っています。犯人達はヒルデブラント侯爵家のジークレヒト様を死に追いやっています。国際法上殺人罪は略取や強姦未遂よりも重いので、犯人はヒンガリーラントで裁かれるべきだというのがエリーゼ様の主張です。」

「・・・ジークレヒト卿は・・やっぱり助からなかったの?」

「死体は未だ発見されていませんが、生存は絶望だろうと見做されています。」

「何て事。」

エリカ様は瞳を潤ませて口を覆った。

「私・・メグ様とニッキーおじさんの事がすごく心配です。エリーゼ様が言うには、王太女様から特命を命じられて失敗したら、死んで責任を取らなきゃならないかもしれないそうです。

って、私が心配している場合ではないのですけれど。捕まった人達の親族は、ジーク様とコンラートお兄様が勝手に大騒ぎをしただけで、それを利用してお父様が反乱を起こしたって言ってます。自分達の方が殴られたり何だりで被害者だって。そちらの意見が通ったら、我が家はおしまいです。その意見を支持する貴族はけっこう多いらしいんです。うちってあまり国内貴族の方々に好かれていないので。それに、外国人の平民などの為に王国貴族が罰せられるなど、どのような理由であってもあってはならないって言ってる貴族もいて・・・。」

「ジークレヒト卿が亡くなっているのでしょう!その貴族達はそれについてどう言っているの⁉︎」

「ジーク様は突き落とされたわけではなく、自らの意思で飛び降りた。と言っています。そして、それは実際正しいんです。クラウス殿下やフィリックス殿下もそう証言しています。」

「でも、コンラートが!」

「コンラートお兄様は重傷ですが、コンラートお兄様に殴られた人達も、まーまーな大怪我をしているんです。」

「・・・。」

「少しでも多くの貴族の方に、うちやシュテルンベルク家の味方をして欲しくて、心配してうちに来てくれる貴族の方を歓待していて、お母様は疲れ果てて倒れちゃいました。私もいろいろ考えちゃって夜よく眠れないんです。だって私がお父様に、寄宿舎に来て悪い人を捕まえて欲しいと連絡したから・・・。」

「よく頑張ったわね。レベッカ様。」

そう言ってエリカ様は頭を撫でてくれた。私も気持ちが弱っているのだと思う。うるっときた。

「シュテルンベルク家の事務仕事は任せて。貴族の方々への対応は私もするわ。私はシュテルンベルク家の長女だもの。でも、まずはコンラートのお見舞いに行って。リヒャルトのおしりも叩いて、働かせてやらなくちゃ。レベッカ様は、コンラートのお見舞いにも行ってくれているの。」

「事件の翌日行ったのですけれど・・・その後は出禁をくらったので行っていません。」

「出禁?何故?誰に?」

「・・・それは聞かないでください。というか、その、私のせいでコンラートお兄様は面会謝絶で、お医者様と後シュテルンベルク伯爵様か執事のオイゲンさんの許可の無い人は王子様でも会えないという事になりました。なので、エリカ様がコンラートお兄様のお見舞いをするには伯爵様かオイゲンさんに許可を取りませんと。」

「よくわからないけれどわかったわ。」

そう言ってエリカ様とコリンナさんは、次にお母様に会う為お母様の部屋へと歩いて行った。

私は次にアレクサンドラ女男爵に挨拶する為、西館へと向かった。