軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい家族達(27)(アルベルティーナ視点)

一口食べてびっくりしました。

味はある意味普通です。でも食感が未体験なものなのです。まるでふわふわの綿のようで、食べ物の柔らかさじゃありません。でも、おいしい!

ふわふわのケーキは口の中からすぐに無くなってしまいました。正直、一口では全然足りません。

「すごいわ、カレナ!こんなケーキがあるなんて。」

「は・・はい。すみません。じゃなかった、ありがとうございます。」

カレナがしどろもどろと答えました。

私はキョロキョロと周囲を見回しました。

「残りの四人はどうしたの?」

「四人の歓迎会用のケーキだから、作ってる事は内緒なの。先生達に頼んで、絵や刺繍のレベルの確認をしてもらっている。」

「偉いわ、レベッカ。そのケーキのレシピはあの四人には秘密にしておきなさい。我が家だけのレシピにしておくの。」

「広く世に知らせて、誰もが食べれるようにした方がいいじゃん。」

「伝染病が終息したら、また保護者達によるお菓子の販売会があるに決まっているの。その時に、販売するのに理想の菓子なのよ!」

販売会で求められるのは、クリームとかがベタベタついていないシンプルな焼き菓子です。このケーキは販売するのに理想的なのです。

「お菓子の大学を造った後は公開してもいいから、今はまだしないで。」

「えー。」

「『えー』じゃありません!皆もお願いね。」

「はい!」

と他の皆の声が揃いました。人数が多いのでなかなかの声量です。

「それと、もう一つのレモン入りケーキ。ワンホール欲しいのだけど、もらえない?」

「一人で食べるの?胸焼けすると思うよ。」

「違います!贈りたい相手がいるの。」

そう言って、私はオルヒデーエ先生の話をレベッカにしました。

娘婿が男と逃げた。という下りには、聞いていた女の子達全員にものすごい衝撃が走りました。

「そういうわけで、食べ物を贈りたいの。四歳の子供もいる事だし珍しいケーキは喜ばれると思うのよ。」

四歳の子供がいるという事は、事あるごとに強調しました。ゾフィー曰く「子供の為」と言えばレベッカはおにぎりの具のように丸め込める性格だからです。

「・・というわけで、ってレベッカ、あなた泣いているの⁉︎」

「だってその子供が、あまりにも可哀想で・・。」

「レベッカ・・。」

「お母様は今妊娠しているし、もし、お父様に男の愛人が出来て戻って来なくなったらと思うと、他人事と思えなくて・・。」

「他人事です!縁起でもない空想をしないで!というか、リーシア。あなたも泣いているの?」

「だって、うちの裏に住んでいる人なのですよね。裏の奥様は良い人ですー。前にハンカチを風で飛ばして、裏の家の庭に入っちゃった事があったんです。それでエイラと一緒に取りに行って。ハンカチ探させてください。と頼んで探してたら『喉乾いたでしょう』と言って、手作りの木苺水をくれたんです。それを見たらお腹が鳴っちゃって、そしたら干し葡萄のパンもくれたんです。」

『良い人』の定義のレベルの低さに驚きですが、家族にご飯を食べさせてもらえずにいたリーシアにとっては、忘れられない思い出だったのでしょう。先生なら、それくらいされるだろう。と納得です。

「娘さん二人もいい人です。」

「何、もらったの?」

コルネが辛辣な事を聞きます。

「ハンカチを一緒に探してくれたんですー。でも、娘婿さんは、迷惑そうな目をして無視してました。娘婿さん、ちょっと怖いな、ってその時思いました。」

薄情な性格は元々だったという事のようです。リーシアはまだ子供です。そして子供が『怖い』と感じる大人にろくなのはいません。

「ケーキ、持ってって。全部持っていっていいよ。まだ材料はあるから。歓迎会用のは新しく作ればいいんだから!」

とレベッカが言いました。でも断りました。リーシアやキッチンメイド達が「えっ⁉︎」という顔をしたからです。

見た目は大きなケーキなので一つあれば十分です。それに、他の二つは紅茶の葉入りのケーキです。紅茶の葉入りのケーキはとても美味しいのですが、食べた事の無い人間の目にはゴミが混ざり込んでいるように見えるのです。

「じゃあ、ビルギット。お願いするわね。」

私は、手紙と食べ物をビルギットに託しました。

ビルギットは、夕方近くになって帰って来ました。

家の中に招き入れられて、ゆっくり話をして来たそうです。

「奥様からの手紙をとても喜んでおられました。」

とビルギットは言いました。

「差し入れの食べ物も。生活はかなり苦しかったみたいです。でも、夫人も二人のお嬢様も、上品で清廉な気持ちの良い方々でしたわ。四歳のお子様も礼儀正しい、可愛らしいお子様でした。乳母の件については、ぜひ長女のラヴェンデル様を推薦したいと言われました。

当初はラヴェンデル様だけを、こちらに向かわせるつもりのようでしたが、奥様が家族全員に来て頂く事を希望しているとお伝えすると、悩んだ末、来て頂く事に同意して頂けました。・・家を追い出されたら、救貧院に身を寄せられるおつもりだったみたいです。奥様の心遣いに、夫人は泣いておられました。荷物をまとめるのに三日かかるというので、三日後にお越しになるそうです。」

助けになる事が出来て良かったと思いました。でも、もっと助けが必要になるのはこれからです。私は気を引き締めました。

「ゾフィー。オルヒデーエ先生達の部屋を用意してもらえる?」

「承知しました。」

「急に人が増えて、大変だと思うけれど、よろしく頼むわ。」

「賑やかでよろしいではありませんか。奥様と初めて出会った頃のシュテルンベルク邸には、もっとたくさんの人がいましたよ。エーレンフロイト家は、使用人もお客様も少ない家でしたから、伝染病が流行り出して、むしろ普通の貴族の家みたいになって来て、私も腕が鳴りますわ。後は、旦那様が早く戻って来てくださったら・・・。」

「そうね。」

と言った途端、ドアをガン、ガンッ!とノックする音が聞こえてきました。

この激しい叩き方。 誰何(すいか) しなくても、誰だかわかります。

「レベッカ、ドアはもう少し静かにノックしなさい!」

「えっ?何で、私ってわかったの?」

と言いつつレベッカがドアを開けました。

わかるに決まっているでしょうがっ!

「どうしたの?」

「お母様に話があって。」