軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい家族達(4)(アルベルティーナ視点)

「わー、やったー、すごーい!」

「赤ちゃんがうちに来るんだね!すごい、すごーい!」

レベッカとヨーゼフがソファーから、文字通り飛び上がりました。歓喜雀躍という奴です。

「落ち着きなさい、二人共!あなた達はお姉さんとお兄さんになるのよ。だから、落ち着いて思慮深く、生まれてくる子の範となるように・・。」

「えー、落ち着いてなんかいられないし!」

「そうかー。僕、お兄ちゃんになるんだ。ふふふ、どっちが生まれてくるのかなあ。男の子かなあ。女の子なのかな。どれくらいで『お兄様』とか呼んでくれるようになるのかなあ。えへへへへ。」

「冬に生まれてくるなら、おむつをたくさん作らなきゃ!洗濯しても、なかなか乾かないもの。」

「ベビーベッドもいるよ。おもちゃもたくさん用意しなきゃ。」

「それから、暖かいお布団に、靴下に、帽子に手袋に・・・。」

「年末に生まれるか、来年の初めに生まれるかで、アカデミーでの同級生が変わるよね。あ!それに、名前。名前を考えないと。かっこいい名前を考えよう!」

「名前は、お父様が考えてくださるからあなた達が考える必要はありませんよ。」

と言ったのですが。

「お父様はお忙しいだろうから、僕達で候補を選んでおいてあげようよ。僕はね。かっこいい言葉の名前がいいと思うんだ。『 栄光(グランツ) 』とか『 恩寵(グナーデ) 』とか『 希望(ホクヌング) 』とか『 愛(レーベ) 』とか。」

とヨーゼフが言います。

「私は、女の子だったらヒルデガルドがいいと思う。もしくはエヴァンゼリン。男の子だったら、ラインハルト、ウォルフガング、もしくはナイトハルトとか。」

絶対、それあなたの愛読書の登場人物でしょう。レベッカ!

「お願いだから落ち着いてちょうだい。だいたい今はお父様がご不在なのです。お父様がお戻りになるまで公表はしませんから、あなた達も普段通りにしていてちょうだい。」

「無理!いろんな人に言いふらしたいもん。」

「僕もエリアスに自慢したいー。」

「やめなさい!そもそも世の中には、子供が欲しいのにどうしてもできないという人もいるのです。そんな方達があなた達の浮かれた態度を見たらどう思うか、あなた達ももう幼子ではないのですから少し想像力を働かせて思いやりを持ちなさい!」

そう言うと、レベッカはゾフィーを、ヨーゼフはリエをじっと見つめました。

あなた達!私が言ったセリフではありますが、この発言の後で人の顔を凝視するのは失礼過ぎますよ!

「私を見るな!」

と、リエが怒りました。

「私は、心から祝福しているから!アルベルの妊娠を嬉しいと思っているから。」

「私だってです!」

とゾフィーも言います。

「奥様の御懐妊が自分の事のように嬉しいですわ。今からお生まれになる日が楽しみでなりません。きっと、レベッカ様やヨーゼフ様のような可愛らしい赤ちゃんが生まれてくるはずですわ。」

「自分が痛い思いをしなくても赤ちゃんが抱っこできるなんて最高よね。無責任にただ甘やかせるし。」

リエの口から本音が出て来ました。

「エーレンフロイト領のお父様にはいつ連絡するの?ついでに、ジーク様やコンラートお兄様にも手紙書くから。」

とレベッカが聞きました。

「今は連絡しません。お父様は領地で大変な苦労をしておられるのです。なのでこれ以上心配や気苦労をかける事は今はお伝えしないつもりです。それに、安定期に入るまでは妊娠というものはわからないものなのですよ。流産する可能性もあるのに、お伝えするのはまだ時期尚早です。だから!あなた達も屋敷外の人間にまだ話してはなりませんよ。」

『流産』

という言葉を聞くと、さすがに子供達も神妙な顔をしました。

そして、レベッカは言いました。

「お母様。ウズラを飼おう!」

「え?」

「ウズラの卵は鶏卵よりも鉄分が多いらしいよ。雛を売ってくれって私が大学の農学科に頼むから。」

「・・・。」

「せっかくならアヒルも飼おう、そしたら新鮮なお肉や内臓が手に入るからさ。レバーは鉄分の宝庫だよ。」

・・別に鉄分をとれば、流産しないわけではないでしょうに。

でも、この子なりに私やお腹の子供の健康を考えてくれているのでしょう。

「良いのではないでしょうか。」

とゾフィーが言い出しました。

「新鮮なお肉は段々手に入らなくなってきましたし、これから更に手に入りにくくなるかと思います。」

と言った後、声をひそめて私に囁きました。

「お肉が手に入らなくなって、お嬢様が庭の池で食用蛙を飼うとか言いだす前に、池をアヒルでうめておきましょう。」

我が家の庭の池にカエルがうじゃうじゃといる様を想像し、私は震え上がりました。あり得ない話ではありません。だって、レベッカはカエルが苦手ではありませんから。

「そうだ!もしもお母様の母乳があまり出なかった時の為にヤギも飼おう。ヤギ乳は、母乳の代用品になるらしいよ。」

「その時は、人間の乳母を雇います!」

ヤギは却下しました。

全く、もう!

でも。ここでも病院と同じ。皆が喜んで皆が祝福してくれます。

レベッカもヨーゼフもとても喜んでいてくれるのです。そう思うと、私もじわじわと嬉しい気持ちが湧いてきました。

そう、これはとても素敵な事、産科の先生が言われた通り素敵な奇跡なのです。

私は「ごめんね」とお腹の赤ちゃんに心の中で謝りました。一瞬でもあなたが私のところに来てくれた事に動揺してしまったなんて。あなたの事を『嬉しい』と思えないでいたなんて。世界中の全てがこの子の敵であったとしても、私だけは味方でいてあげなくては本来いけなかったのに。

私、嬉しいわ。あなたが私のところに来てくれて本当に嬉しい。お母様はあなたを愛している。そしてこの部屋にいる全ての人があなたを愛している。遠くにいらっしゃるあなたのお父様もきっとあなたの事を知れば、涙を流して喜ばれるはずだわ。

私はそう思って、お腹をそっとさすりました。