軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百七十七話 仲裁

予期せぬ乱入者。

それはここにいるはずのない人間だった。

「一体、何の真似だ? リナレス」

「そのままよ。仲裁に来たの」

乱入者はSS級冒険者のリナレスだった。

基本的に特異点を出ないリナレスが、ここにいるというのは異常だ。

リナレスが動いたということも異常だが、このタイミングでここに現れることができたというのも異常だ。

「仲裁だと? 一体、この二人とどんな関係だ?」

「関係ねぇ……今代ノーネームと私は師匠と弟子の関係よ。ここは私たちの修行場だったの。思い出深い小屋だったのだけど、壊してくれちゃって」

壊れた小屋を見て、リナレスはため息を吐く。

今のノーネームとリナレスが師弟関係なんて聞いたことはない。

「お前とノーネームが師弟関係だと? つまりお前も仲間ということか?」

「失礼ね。私は冒険者としての矜持を捨てた覚えはないわ。もちろん、民の安全より自分の武器の強化を優先するように育てた覚えもないわ」

リナレスは今代ノーネームに目を向ける。

ノーネームは静かに顔を伏せる。

会わせる顔がないといったところか。

「そうなると、止められる謂れはないのだが?」

「SS級冒険者同士が戦うのを放置しろと? 言っておくけれど、ここは皇国内よ? 先に手を出されたからといって、皇国内で問題を起こせばあなたも同罪よ」

「ならば見逃せとでもいうつもりか? こいつらの計画は帝都を混乱に陥れること。炎神を奪い、なんなら近衛騎士隊長を何人か餌にしようという魂胆があったのは明らかだ」

「処分はギルドに任せなさいな。そもそも……本当に計画を知っていたの? 先代の独断ではないかしら?」

ノーネームは何も言わない。

リナレスの言い方はノーネームを疑ってはいないような言い方だ。

だが。

「冥神を持っているのはお前の弟子で、何もなければ炎神を餌にしていた。同罪だ」

「自分の庭を荒らされて怒るのはわかるけれど、もう少し落ち着いてくれないかしら? 結果的に被害は最小。SS級冒険者同士が本気で戦うには理由が弱いわよ」

リナレスの言葉に反論しようとして、俺は口を閉ざす。

リナレスの言う通り、ノーネームの行いはSS級冒険者として許されるモノではないが、ここを更地にする理由にしては弱い。

帝都を危険に晒したとして、帝国は俺に加担するだろうが、皇国はノーネームの肩を持つ。

その時に言われるだろう。なぜギルドに判断を任せなかったのか、と。

「……何をもって仲裁するつもりだ?」

「とりあえず、私の顔を立てて戦いは避けて頂戴。先代はその魔剣を渡しなさいな。それは民を危険に晒して手に入れた物。元冒険者としての矜持があるなら、渡せるはずよ」

リナレスの言葉を受けて、先代ノーネームは少し悩んだ後、炎神をリナレスに投げ渡した。

「元冒険者としての矜持ではなく、あなたへの義理でここは引き下がりましょう」

「私は義理より、矜持であって欲しかったわ。焦る気持ちもわかるけれど、やり方を間違えてはいけないわ」

「説教は結構。私たちにとって一番大切なのは悲願を達成することです」

「私の弟子を巻き込まないでほしいわね」

「あなたの弟子の前に、私たちの一族です」

そう言って先代は今代のノーネームを連れてその場を去る。

俺はそれを見逃した。

リナレスが何かしようものなら、自分が相手になると言わんばかりの戦意を見せていたからだ。

「……お前の顔を立てたわけだが、俺には何の旨味もない仲裁だと思わないか?」

「わかっているわ。話はギルド本部でしましょう。あなたが好みそうなお礼もできると思うわ」

リナレスはそう言って肩を竦める。

それはつまり、俺にギルド本部まで転移させろということだ。

厚かましい奴だと思いつつ、俺は転移門を開くのだった。

■■■

ギルド本部のギルド長室。

そこに転移した俺とリナレスを見て、クライドは飲んでいた紅茶を吹き出した。

「ごほっごほっ……」

「汚いわねぇ」

「忙しいところ失礼する」

「……そう思うなら扉から入ってこい。なんなら来る前に連絡を寄こせ」

至極当然のことをクライドは言う。

もちろんそれが理想だが、用がある時は大抵、急だ。事前に連絡もできないし、扉から入ってくることも無理だ。

「まぁまぁ、シルバーとノーネームの激突を防いだんだから、大目に見てちょうだい」

「なにぃ? どういうことだ?」

「ノーネームが先代と組んで、帝都に強力な魔剣使いを送り込んできた。狙いは近衛騎士団とぶつけ合って、その魔剣を奪うこと。なんなら近衛騎士を冥神の餌にしようとも思っていただろうさ」

「……被害は?」

「帝都で剣士が一人死亡した。あとは近衛騎士団の団長と副団長が疲弊したくらいだろう」

「奇跡的だな……」

「魔剣は回収したわ。骨董品並みの古代の魔剣ね。冥神と同類だと思うわ。しっかり管理しておきなさい」

そう言ってリナレスが炎神を机に置くと、部屋にあるソファーに座った。

その対面に俺も座り、リナレスがしゃべり出すのを待った。

クライドは居座る俺たちに顔をしかめるが、決めたのはリナレスだ。

俺にはどうすることもできない。

「まず、何から話すべきかしらね」

「どこまで話す気だ? リナ」

「すべてよ。先代ノーネームのことを知ったなら、話したほうが早いわ」

どうやら先代のノーネームのことを含めて、クライドは承知のようだ。

まぁリナレスが知っていることだ。

ギルド長として把握しているのは当然か。

静かにリナレスは天井を見上げたあと、告げた。

「五百年前、初代アムスベルグ勇爵と競った剣士。それがノーネームの祖先よ。勇者と双璧を成すほど悪魔に対して戦果をあげたその剣士は、歴史には名が残ってないわ。聖剣さえあれば、自分は魔王を討てると信じて勇者に挑んだから、人類の敵とされたのよ」