軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スノウデーン王国、二度目の冬⑧/トーラスの相談

さて、トーラスの願いとは?

とりあえず、大銭湯問題を先に解決するため、テッサとトーラスの三人で俺の離れへ向かうことにした。

散歩を兼ねてなので、外を通って行こうとすると、ちょうど雪が降っていた。

しんしんと降る感じではなく、小粒の雪がちょこっと降ってるだけなので傘は必要ない。むしろ、風情があっていい……部屋に戻ったら温泉入り直したいな。

外に出て歩き出すと、見覚えのある二人が近づいてきた。

「にゃああ、おじちゃーん」

「おじさま~」

ユキちゃん、ブランシュである。

なんか意外な組み合わせ。二人ともモコモコしたコートに帽子、手袋を雪遊びをしていたようだ。

ユキちゃんは興奮して言う。

「あのね、これゆきって言うの。わたしとおなじなまえなの」

「ははは、そうだね。ユキちゃんは雪が初めてなんだな」

「にゃああ。それでね、ブランシュおねえちゃんと遊んでたの。しろいふわふわとおともだちになったの」

「はっは、は……?」

……白いふわふわってなんだろう。

ブランシュを見ると、すっごくニコニコして、ユキちゃんの近くでしゃがみ込み、雪を掴んだ。

「おじさま。すっごく可愛い子がいましたわ。ふふふ……この子、わたくしの部屋で飼いますわ!!」

「え、って……おいおい、なんだそれ」

なんと、雪を掴んだんじゃなくて、真っ白いふわふわした生物を抱っこした。いやはや、白いから気付かなかった……なんだろう、この動物。

テッサは、ブランシュが抱っこした動物を見て目を輝かせる。

「か、かわいい~!! しろい、モフモフですねぇ!!」

「ふふ。ユキちゃんと雪遊びしていたら、近づいてきましたの」

白いふわふわ……真っ白な毛に覆われ、手足が短い。

なんだろう、見たことあるな。テレビ番組とかで……あああ!!

「ウォンバット!! ウォンバットだこれ!! 白いウォンバット!!」

そう、ウォンバット!!

白いウォンバット。そう表現するしかない。

テレビで見たことある。オーストラリアとかにいる有袋類だ。

大きさは一メートルくらい、尻尾が短く、お尻が硬い。顔は丸みを帯びており、とにかく可愛い。

ウォンバット……体毛は茶色とか黒系だと思ったけど、真っ白だ。

するとトーラスが言う。

「ウォンバット? そんな名前じゃないわ。この子は『デプロドトン』っていうスノウデーン王国の固有動物よ。人懐っこくて雑食で小食、お世話も楽だから愛玩動物として飼う人が多いわ。見ての通り愛くるしいからね」

「にゃああ。しろいふわふわなの。かわいいの」

ウォンバットの可愛さを知ってるからわかる……かわいい。

俺は顔を近付けてジッと見た。

『もぁぁ~』

「……独特な鳴き声だな」

撫でると目を細める。

テッサが震え、ブランシュから受け取って抱っこし頬ずりした。

「わたくし、この子を連れ帰りますわ!! ああ、可愛い~」

「気持ちはわかるけど、スノウデーン王国の固有種なんだろ? いきなり環境が違う国に連れて行って大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。この子、どんな場所でも生活できるくらいタフだから。ね」

『もぁぁ~』

トーラスが撫でると、ウォンバット……じゃなくてデプロドトンは鳴いた。

ユキちゃんが遊びたいというのでテッサが地面に置くと、走り出したユキちゃんに付いて行ってしまった。ブランシュも「ではまた~」とユキちゃんを追う。

「……ウォンバット」

「だから、なにそれ?」

「あぁぁ可愛いですねぇ。師匠、私も欲しいですー」

また会ったら撫でさせてもらうか……寄り道しちゃったけど、離れに戻ろう。

◇◇◇◇◇◇

さて、ウォンバットかわいい……じゃなく、離れに戻って来た。

すると、地下室に大量の魔獣素材、魔石があった。どうやらエアリーズが用意してくれたようだ。これで魔道具となる模型を作るかな。

その前に……トーラスだ。

リビングでお茶を出し、トーラスに話を聞く。

「それで、お姉ちゃん……エアリーズについて、どうして欲しいんだ?」

「家に帰らせて欲しいの。でもお姉ちゃん、忙しいからって一度も帰らなくて……かれこれ二百年以上、戻ってないわ」

に、二百年……エルフのスパンだと長いのか短いのか。

テッサも頷く。

「確かに、二百年も家に帰らないのは……私も親戚のおじさんのところで五年くらい狩りの勉強しましたけど、一年ごとにお母さんから手紙がありました」

い、一年ごと? やべえ、時間の感覚おかしくなる。

とりあえず、俺は咳払いをする。

「こほん。エアリーズの家って、エルフリア精霊国だったか? そこに帰るよう説得すればいいのか?」

「違うわ。精霊国は故郷、家があるのは東にあるダークエルフが治める山の国、『フォボス森国』よ。お姉ちゃん、スノウデーン王国の開拓を始める前は、私と一緒にダークエルフと暮らしていたの」

は、初耳……ダークエルフときましたか。

テッサを見ると「へえー」と頷いてる。エルフにダークエルフ、確執があるってわけじゃなさそうだ。

「お姉ちゃん、初代女王で、歴代の女王たちみんなの母親みたいな存在なのに、ここ最近ま~ったく帰ってこないから、私が呼びに来たの。でも『もう私がいなくても大丈夫』とか『ダークエルフの自主性に任せる』とかで、ぜんぜん帰ってこない。ダークエルフの女王ヘルバも、お姉ちゃんが帰ってこないから寂しがってるし……」

「な、なるほど。それで、一度帰るように説得してくれ、ってことか」

「そう。あなた、アツコと似た雰囲気あるし、私が説得するよりは可能性があるわ」

まあ……いくら自主性に任せたといっても、家に帰る帰らないは別だろうな。

仕事が忙しく楽しいってのはわかるけど、家族をないがしろにしていいわけじゃない。まあないがしろにしているかどうかは俺に判断できないけどな。

二百年も帰ってないなら、一度は帰るべきだろう。

「わかった。俺が説得してみるよ」

「ほんと!? ありがとう!!」

トーラスはホッと一安心……さて、興味本位で聞いてみるか。

「なあトーラス。お前はさ、十二星座の魔女で、何かこう……アツコさんに影響されて、何かを発明したとか、不況したとかあるのか?」

「私? 私は別に。ただ、アツコの持ってた時計を見て、朝昼晩の概念を広げたくらいね。時間を測定して、一分一秒の流れを制定して、アツコから『日時計』のセットをもらって、それに合わせて時間を設定したくらいかな」

「いやそれ偉業だろ……じゃあ、アツコさんの形見って」

「日時計よ。置物で、今は私の家にあるわ」

「壊れたりしてないか?」

「べつに? こわれるような物じゃないし、シンプルだから簡単に修理できるしね」

見ないとわからないけど、日時計は確かにシンプルなものが多い。アツコさん個人の持ち物だとしたら、そう複雑な物ではないだろう。

これまで、十二星座の魔女の持ち物は、使い方がわからなかったり壊れたりする物が多かったけど、トーラスのはちゃんと使い方を理解していた……安心だよ。

さて、聞きたいことは聞いた。次は俺の番だ。

「さて、じゃあこれから『スーパー銭湯の問題点』について話すぞ」

俺は書く物を用意し、問題点を箇条書きにする。

◇◇◇◇◇◇

1、温泉が広すぎて移動が困難

2、地下飲食店街の階段が多すぎて大変

3、源泉の一つがヘドロスライムで汚染

◇◇◇◇◇◇

「とりあえず、こんなもんか……」

「まだあるわ。お姉ちゃんが言ってた話だと……」

◇◇◇◇◇◇

4、獣人の毛が排水管につまる

5、酔っ払い客が暴れて被害が出た

6、薬草湯が臭いと獣人客からクレーム

◇◇◇◇◇◇

「いや、これはさすがにどうしようもないぞ……毛が詰まるんだったらフィルターするとか? 酔っ払いは警備員雇うとか、薬草湯はそういうモンだし」

「そう? まあ、お姉ちゃんも『これは仕方ない』って言ってた」

「師匠、とりあえず1~3の問題ですね!!」

「ああ、よし……じゃあ、これを解決する魔道具、いや模型を作るとするか!!」

「はい!! うー、ワクワクしてきました!!」

「私、魔道具開発は素人だけど……まあ、手伝えることなら」

こうして、スーパー銭湯の改善に向け、俺たちは作業開始するのだった。