軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七人の一致団結

さて、見渡す限りの砂漠を進むこと一日……小さなオアシスが見えたので、そこに停車した。

連結馬車を停め、外に出る。

大きな岩石のおかげで日陰となり、オアシスのおかげなのかヤシの木みたいなのがけっこう生えている。オアシスの大きさは学校のプールぐらいで、透き通ってキラキラ輝いていた。

水に触れると、驚くほどひんやりしてる……もっとぬるいのを想像していた。

飲むには煮沸消毒が必要かなと考えていると。

「あ~おいしっ!! んぐ、んぐ、んぐぐ……っぷああ!!」

「お、おいリーンドゥ、いきなり飲んでいいのか?」

「なんで? すっごくキラキラしてるじゃん。おっちゃんも飲みなよ」

リーンドゥが顔を近づけ、水を直飲みしていた。

うーん、この世界に来てけっこう経つけど、まだこういうところは適応しきれない。まず細菌とか疑っちまうしな……というか、この世界に細菌とか微生物とかいる……まあいるだろうな。

ええい、気にしてもしょうがない。

「じゃあ、いただきます……」

水を飲む……あれ、うまい。めっちゃ冷えてるし、すげえ透き通った味する。

周りを見ると、みんな普通に飲んでいる。サンドローネですらコップで水を掬い、普通に飲んでいた。

「おいしいわね。砂漠の水……エーデルシュタイン王国の水や、魔力や魔石で生み出した水よりもおいしいわ」

「確かにそうですね。お嬢」

みんな水を満喫している。

ヒコロク、ヤタロウは水をいっぱい飲むと、日陰に移動して寝そべってしまった。

ユストゥスは、地図を開いて俺に見せる。

「現在位置はここ。砂漠の国までは、あと半日といったところですね……今日中には到着しそうですが、到着は深夜になるでしょう」

「じゃあ、今日はここで休んで、明日の朝イチで出発すればいいか。昼くらいには到着するだろうな」

「ええ、そうしましょう」

というわけで、今日はここで一泊。

ロッソたち、バレンたち七人に予定を説明する。

説明を終えると、ロッソとバレンが言う。

「わかったわ。じゃあ、交代で周囲の警戒ね」

「そうだね。ローテーションを決めようか」

「それはそっちの三人で勝手に決めて。こっちも四人で決めるから」

「ふふ、それもいいけど……ロッソ、そろそろしっかり連携して警備をするべきじゃないかい? 砂漠の国は近いんだ、不測の事態が起きないとも限らない」

「はあ? そんなの、アタシらは蹴散らしてやるわよ」

「ここはボクらにとっても、踏み込んだことのない場所だ。ボクらの力が通じない可能性だってきっとある。少なくとも、ボクは最大の警戒をして臨むべきだと思うよ」

「なにアンタ、ビビってんの?」

うーん……これはさすがに間に入るぞ。

俺は二人の間に入る。正確にはバレンの隣へ。

「ロッソ。悪いけど、俺もバレンに賛成だ。もちろん、お前たちの強さは見てるし、この中の誰よりも俺が信頼している。でも……バレンの言うことは正しいと思う。お前たちの確執は知ってるし、理解もしているけど、ちゃんと話をして、協力してくれないか?」

「…………」

『七虹冒険者』の七人……正確にはヴェルデ以外の六人は、確執がある。

ロッソとバレン。アオにウング。ブランシュとリーンドゥ。

基本的に、この組み合わせ同士だと全く会話がない。ブランシュ、バレンとかは普通に会話していたのを俺は見たけど。

そりゃ、ロッソの故郷が疫病に侵された時、領主をしていたバレンの親父が村を隔離したことでロッソの両親が死んだことで怒る気持ちもわかる。

アオとウングが所属していた組織で、アオがその組織、アオとウングの育ての親を殺してウングに恨まれていることもわかる。

ブランシュが『聖女』としての立場を、適当な感じで奪ったリーンドゥに失望する気持ちも当然理解できる。

でも、それはそれ、これはこれだ。

「頼む。今だけでいい、ちゃんと協力して、俺たちを守ってくれ」

俺はいい。いざとなればアーマーもあるし、自分の身を守るだけならなんとかなる。

でも……サンドローネ、リヒター、ユストゥスたちに何かが起きることは、想像したくない。

シュバン、マイルズさんだってそうだ。みんな、俺の大事な友人なのだ。

だから……ロッソたち七人に協力してもらい、力を合わせて守ってもらいたいのだ。

俺が頭を下げると、ロッソ、アオ、ブランシュが顔を見合わせる。

バレン、リーンドゥ、ウングも同じく。

そして、誰とも因縁のないヴェルデが言った。

「そうね。ここらであなたたち六人に言っておくわ。そろそろ、私的な感情だけで互いを無視したり、会話すらしないようなら、この依頼はここでおしまい。ゲントクたちの護衛は、私一人で引き受ける」

「「「「「「…………」」」」」」

「冒険者だし、商売敵でもあれば、敵として対峙することだってある。でも、味方として肩を並べて戦うことだってある。これはそういう商売よ。でも、今のあなたたちは、それができていない。報酬をもらう以上、そういう感情を処理しきれないで依頼を受けることは依頼人にも失礼だし、何より間違いなく失敗する……そもそも、依頼人であるゲントクに頭を下げさせるなんて論外よ」

ヴぇ、ヴェルデ……すげえ、みんな黙っちまった。

思わずヴェルデを見ていると、いきなり俺に言う。

「ゲントク。これで私たちの間に、個人的な感情が入って任務に支障をきたすようなら……あなたが判断して。依頼を中止して、ロッソたちには帰ってもらう。あとは私が一人で護衛を引き継ぐから」

「お、お前ひとりでか?」

「ええ。命を懸けて、全員を守ると誓うわ」

ヴェルデは、デカい斧を砂地にドンと差し、ブワッと風を纏う。

ここまでマジなヴェルデを初めて見た……これは本気だな。

すると、ロッソがため息を吐いた。

「……はああ。そうね、そうだった。全部アンタの言う通り……まーだ個人的な気持ちがあったわ。わかった……バレン、ごめんなさい。アンタの言う通りよ」

「……ロッソ」

「アタシは『赤のロッソ』よ。冒険者として、アンタと肩を並べて依頼に望む。アオ、ブランシュ、アンタらもそれでいい?」

すると、二人も頷く。

「……うん。ウング、私と一緒にまた、仕事をしよう」

「……ああ。そうだな。フン……オレとお前が組めば、闇討ちや奇襲の成功率は100パーだ」

「そうだね。それと、情報収集も。どんなことだって調べられる」

「ああ……そうだな」

アオ、ウングが手をパシッと合わせる。

ブランシュ、リーンドゥも同じだった。

「……リーンドゥ。あなたは、わたくしに協力できますか?」

「いいよ。いろいろあったし、喧嘩もいっぱいしたけどさ……ウチ、ブランシュのこと嫌いじゃないし。むしろ、けっこう好きだしね」

「は、はあ? あなた……何を言ってますの?」

「だって、ウチの怪力に張り合えるの、ブランシュだけだもん。ねね、今度一緒にトレーニングしない?」

「……ふふ。いいですわ」

あれ、なんか普通に和解したような気もする。

こうして、六人は一致団結……本当の意味で、俺たちの警備が始まるのだった。

俺はヴェルデに言う。

「ありがとうな。お前のおかげで、みんなまとまったよ」

「ええ。さて、七人で護衛の段取りを決めないとね。ふふふ」

ヴェルデは嬉しそうに笑い、みんなの元へ行くのだった。

◇◇◇◇◇◇

さて、ロッソたちが本気の護衛を始めたので、俺は安心して車内へ戻る。

そして、一階の談話室でサンドローネとリヒター、ユストゥスが地図を広げていた。

「おう、地図見てんのか?」

「ええ。位置の確認と、砂漠王国についての最終確認ね」

「……なあ、俺らがいきなり砂漠の国に行って、獣人たちに攻撃されるとかないよな?」

俺が言うと、ユストゥスが首を振る。

「問題ありません。ファルザン様はすでに、リオ・レオ様に私たちのことをお伝えしているはずなので」

「……そういや『十二星座の魔女』って便利な通信魔法使ってたな」

とりあえず、獣人たちに包囲されて武器を突きつけられる展開は避けられそうだ。

明日、いよいよ砂漠の国か……さてさて、どんなところなのかね。