軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

連結馬車の旅

連結馬車の旅が始まって数日。

現在、馬車は東に向かって進んでいた。

俺は、ユキちゃんを抱っこしながら、休憩室の二階で外の景色を眺めていた。

「お、見てごらんユキちゃん。あそこにでっかいシカみたいな魔獣がいるぞ」

「にゃー」

東に向かう街道は整備されているのか、横幅が広く平坦な道だ。

揺れも少なく、道沿いにある森から、やけに枝分かれしたツノを持つゾウみたいなシカがこっちを見ていた……なんか目つきが恐いけど、ヒコロクが軽く唸ると逃げ出した。

俺はユキちゃんと外を眺めていると、大福と白玉が昼寝から起きた。

『みゃー』

『にゃ』

「お、起きたか」

「にゃあ。ねこー」

ユキちゃんが俺から離れると、大福と白玉の元へ。

さて、なぜユキちゃんと一緒にいるかというと、スノウさんがリヒターと二人で、食堂車でお茶を飲んでいるからだ。

俺でもわかった。リヒター……スノウさんに気があるっぽい。

サンドローネも気付いているのか、今は一階で煙草を……って。

「ゲントク、いいかしら」

「おう。なんだ、お前も景色を堪能しに来たのか?」

「まあね」

サンドローネは、俺の隣に座る。

ユキちゃんは……おお、大福と白玉と一緒に昼寝を始めた。

「リヒターも、気になる女性ができたようね」

「スノウさんか?」

「ええ。私、リヒターに言ったのよ。私に忠誠を誓うのはいいけど、だからと言ってあなたの恋路を邪魔しないし、結婚したいほど気になる女性がいるなら好きにしなさい、ってね」

「そうなのか。じゃあリヒターは猛アタック開始ってわけだ。くくく、アズマで一緒に飲む機会あったら気を利かせてやるか」

一緒に飲む時に、いろいろ聞くのも面白そうだ。

俺は独身主義だけど、他人の結婚とか恋愛に多少の興味はある。

「……二階にも灰皿を置くべきね」

「同感だ」

サンドローネは、どこからかメモ帳を出しメモしておく。

そういやこの連結馬車、試作品で改良の必要がありそうなところはメモしておくんだっけ。

旅が始まって数日、今のところ気になるところはない。

「さすがに風呂はまだ厳しいなあ……」

「あなた、本当にお風呂が好きね」

「そりゃ日本人だしな。シャワー派の奴もいるけど、俺は風呂好きだ」

一応、シャワールームくらいは付けられそうだ。

今は五号車だけど、六号車にシャワー特化の防水ルームを作れるかも。排水は……垂れ流しになるかなあ。排水の過程で汚れの浄化をするならまあ問題ないか?

と、俺も気になったことをメモしておく。イェランも別途でメモしているだろうし、あとでみんなのメモを統合し、まとめて改良する予定だ。

「なあ、小さくていいから、車内販売とかあればいいかもな。菓子とかパンとか、車内で食べれる物を安く販売するんだよ」

「それ、いいアイデアね。そうね……パンとか、お酒のおつまみとかどうかしら?」

「いいな。あと煙草も必要だぞ。でも、あまり充実させすぎると、運ぶのに苦労するかもな」

「だったら……そうね、商会で『オータムパディードック』の育成施設を作るのもありね。見ての通り、ヒコロクは軽々と引いているわ」

「でも、育成には時間がかかるんじゃないか?」

「でも、今から始めれば問題ないわ。それまでは、馬で代用ね」

と、サンドローネと仕事の話をしていると、イェランがやってきた。

「ゲントク、お姉様。町が見えて来たってさ。今日は町の宿に一泊するみたい」

「ええ、わかったわ。久しぶりにお風呂に入りたいわね……」

「俺は町で飲みたいな。なあ、今日は分かれて飯食わないか?」

「……分かれて?」

「ああ。男女別の飯、ってやつだ」

というわけで、今日は分かれての食事となった。

◇◇◇◇◇◇

さて、町に入り、町で一番デカい宿をまるまると貸し切りにした。

幸いなことに、町で一番デカい宿は誰も泊まっていなかった。

この町も、ありふれた普通の街だ。東に行くための通り道みたいな町で、特産とかあるわけじゃない、本当に普通の町。

馬車を広場に止め、ヒコロクを犬具から解放……町の人が連結馬車を珍しがってジロジロ見ていたが、ヒコロクが番犬としているので盗みの心配はない。

シュバン、マイルズさんがこれまで出たごみを捨てたり、シーツや枕カバーの交換などをする。

うーん……長期の旅なら、枕カバーやシーツの交換も必要だな。洗濯とか掃除もあるし。

「掃除、洗濯も必要ね……」

おお、サンドローネが俺と同じことを考えてメモをしている。

一応、各部屋の掃除などはシュバン、マイルズさん、スノウさんが担当することになっている。俺も手伝おうとしたが拒否された……どうやら使用人としての血が騒ぐようだ。

宿にチェックインし、ロッソたちはさっそく町へ。ユキちゃんも連れて行った。

俺も誘われたが部屋で一服……そして夜。

俺は、シュバンとマイルズさん、リヒター、サスケを誘って『男子飲み会』をするため、宿近くの居酒屋の個室を借りた。

「じゃあ、これより『男子飲み会』を開催する!! 女子に言えないアレコレとか、酒の勢いでブチまけようぜ!! かんぱーい!!」

「「「「乾杯!!」」」」」

五人でジョッキをぶつけ合い、エールを一気飲みする。

テーブルには、俺が注文したたくさんの居酒屋料理が並んでいた。

さっそく、俺たちは酒を飲み、メシを食べ、楽しく会話をする。

「いやー、マイルズさんの料理最高っスよ!! ここ数日、毎日超高級料理店の飯食ってるみたいで。なあ!!」

「ええ、確かに。これほどの料理人、私も召し上がったことがありませんね」

リヒターもべた褒めだ。

シュバンはウンウン頷く。

「マイルズさんは貴族専門の料理人だからな。エーデルシュタイン王城でも料理をしたことがあるんだぜ」

「すっげえな。あと十日くらいの旅だけど、飯に関しての心配はないな。あとシュバンのカクテル、こっちも絶品だぞ」

「ええ。お嬢も褒めていました」

「そりゃ嬉しいな」

「ははは。シュバンは王都でも有数の高級バーで、シェイカーを振っていたこちもあるのですよ」

マイルズさんが言うと、シュバンは照れる。

シュバンは恥ずかしいのか、誤魔化すように言う。

「リヒターさんも、使用人として尊敬しますよ。手際がいいの何のって」

「ええ。私もシュバンも見習うところがありますね。大いに勉強させていただきます」

「そんな、私なんて。ははは……照れますね」

「はっはっは!! いやー、みんな仲良くなって楽しいぜ!! なあ、定期的にみんなで集まって飲もうぜ。男飲み会だ!! はっはっは!!」

楽しい……異世界モノじゃ、男だけの飲み会なんてあまり描写されないからな。

でも実際、男だけで飲むとめちゃくちゃ楽しい。

「なあなあリヒターよ、お前……スノウさん狙いか?」

「え!!」

「あ、オレも気になりました。オレ、お二人にバーカウンターからお茶出しましたけど、すっごくいい雰囲気でしたよね」

「あ、いやまあ……その、美人だとは思いますけど」

「はっはっは。若いというのはいいですなあ」

「おうおうおう、結婚式には呼んでくれよ? まあスノウさん、結婚願望あんまりないみたいだしなあ。前の旦那さんとも、あまり交流なかったみたいだし。でもユキちゃんは溺愛しているぞ」

「結婚願望……うう」

リヒターはやや俯く……余計なこと言ったかなあ。

でもまあ、リヒターはいいヤツだ。スノウさんの心も変わるかもしれん。

「なあゲントクさん。アンタはどうなんだ? 『 鮮血の赤椿(スカーレット・カメリア) 』や、イェランさん、サンドローネさんと、美人に囲まれているじゃないか」

「まあ、みんな美人だとは思うけどな。俺、結婚願望ゼロだし」

と、ここでドアが開き、サスケが来た。

「わり、遅れた」

「おせーぞ!! すんません、エールくださーい!!」

サスケは俺の隣へ。用事あるとかで送れたようだが、座ってエールが届くなり一気飲み。

「っぷはー!! 仕事明けの酒は美味いぜ」

「わかる!! おいサスケ、お前もなんか喋れ!! 恋人いねーのか? 家族は?」

「なんだオッサン、酔い過ぎだろ」

「ははは。悪いな、話してやってくれ」

シュバンが言うと、サスケは「しゃーねーなあ」と言ってエールをおかわり。

「ま、オレはアズマで案内人やってるだけの男だ。家族は妹が一人で、今は実家で暮らしてる。両親も健在だ」

「普通だなあ」

「うるせ。と……そういや、あんたらにちゃんと挨拶してなかったな。オレはサスケ、よろしくな!!」

エールを掲げると、俺たちはジョッキを合わせ乾杯した。

この日、俺たちは深夜まで飲み、酔い潰れるのだった。

アズマまであと十日くらい……いやー、寝台馬車最高だぜ!!