軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第32話 ダンスの誘い?

一方、ジークハルトとエリアスが令嬢の誘いが全く来ないようになっていた時。

ルアーナとレベッカは、いろんな令嬢と楽しく話していた。

最初はやはり緊張していたルアーナだったが、レベッカが自然にフォローをして会話の輪に入っていた。

前回はルアーナに話しかけてくる令嬢は、だいたいがジークハルトの話を聞きたがっていた。

だが今ここにいる令嬢達は、すでにダンスの相手が決まっている令嬢が多い。

だからジークハルトのことを聞いてくる令嬢はいないので、普通に会話が出来た。

人数も数人程度なので名前もすぐ憶えられて、ルアーナは初めて同性の人達と会話をして楽しんだ。

それもこれも、全部レベッカのお陰であった。

「ルアーナ、どうかしましたか?」

レベッカのことを見て心の中でとても感謝していたのだが、じっと見つめていたのがバレて首を傾げながらそう聞かれてしまった。

他の令嬢達もいる中で問いかけられたので、ルアーナに視線が集まる。

「あ、すみません、ただレベッカと友達になれてよかったなと思いまして」

「ん!? い、いきなりですね」

ルアーナの言葉に驚いて目を丸くしたレベッカ、少しだけ頬が赤くなっている。

「こんなにも楽しい時間を過ごせているのは、本当にレベッカのお陰です」

「いえ、私は何もしてませんよ」

「そんなことはないですよ!」

ルアーナはレベッカに満面の笑みで言う。

「社交会の初心者である私が令嬢の方々と楽しく話せているのは、全部レベッカのお陰です!」

「い、いえ、そこまでは……」

「レベッカと友達になれたことが、本当に嬉しいです!」

「うっ、ルアーナが真っすぐで可愛すぎて辛い……!」

ルアーナという光にやられて眩しそうにするレベッカ。

周りにいる令嬢達も二人のやり取りを見て、微笑ましそうにしている。

「ルアーナ嬢は、レベッカ嬢がお好きなのですね」

「はい、大好きです!」

純粋無垢な笑顔と言葉に、周りの令嬢達も「うっ……」と胸を押さえる。

彼女達も社交会を何度も何度も経験してきて、腹の探り合いのようなことはしてきた。

だが全員が悪者になるわけじゃなく、ただ捻くれた物の見方をするようになっただけ。

だからこそ、ルアーナのような真っすぐな心と純粋に好意を示せる態度が眩しかった。

真っすぐなルアーナを苦手な人ももちろんいるが、ここにいる令嬢達はもうすでにルアーナに好意的に思っていた。

「ルアーナ嬢は、本当に愛らしいですね」

「本当に、どんな育ち方をすればこんな美しい心を保つのか知りたいです」

「ふふっ、ありがとうございます、皆さま」

前までのルアーナだったら自分の過去を全部話していたかもしれないが、レベッカに注意されているのでさすがに話さない。

その後も、ルアーナは令嬢達と楽しく話していた。

しばらくすると、会場に音楽が流れ始めた。

「ダンスが始まりますね」

「はい、少し緊張してきました」

ルアーナは練習をしっかりしてきたが、まだ完璧じゃないしジークハルトとしか踊れない。

そのことはすでにレベッカに話していて、「ルアーナと踊れないのは残念です」と言われていた。

「大丈夫ですよ、ジークハルト様とは踊れるのでしょう?」

「多分……まあ最悪、足を踏んでもジークなら我慢して踊ってくれますね」

「ふふっ、その意気です」

ルアーナはジークハルトとしか踊れないから、他の男性の誘いは断るしかない。

ここにいるということは、すでに相手がいるということ。

それが周りに伝わるから、この令嬢達が集まっているところに男性がダンスの誘いをしに来ることはほとんどない。

実際に、音楽が流れるまで一回も男性が誘いに来ることはなかった。

しかし――。

「失礼、ルアーナ嬢。今、お話をしてもいいか?」

この令嬢達が集まっている中、一人の男性が近づいてきて、ルアーナに話しかけた。

「はい?」

「っ……!」

ルアーナは不思議そうにその男性を見つめ返すが、レベッカは息を呑んだ。

すぐにまだその男性が誰なのかわかっていないであろうルアーナのために、レベッカはスカートの裾を持ち頭を下げて挨拶をする。

「ミロシュ皇子殿下、ご挨拶申し上げます」

「えっ……!」

ミロシュ・バン・バルテルス、この帝国の第二皇子だ。

とても優秀で次期皇帝と名高く、容姿も赤髪で男性にしては少し長いが、端整な顔立ちに似合っていて薔薇のような鋭い美しさを持つ男性である。

婚約者や相手がいる令嬢ですら、ミロシュの容姿に魅了されて潤んだ瞳で見ている。

そんな第二皇子が、なぜかルアーナに話しかけてきた。

「ああ、レベッカ嬢。久しぶりだ、エリアスとは仲良くしているか?」

「はい、お陰様で」

「それならよかった」

ミロシュはとても社交的で、レベッカよりも身分の低い令嬢や令息でも気軽に接してくれる人だ。

だがレベッカはこの皇子殿下ほど、何を考えているかわからない男性はいないと思っていた。

「あ、あの、ミロシュ皇子殿下、お初にお目にかかります。ルアーナ・チル・ディンケルです」

皇子殿下ということで緊張しながらも、ルアーナがレベッカと同じように挨拶をした。

「ああ、知っているよ、ルアーナ嬢。特別褒章は長らく女性に授与されてこなかったから、君のことは気になっていた」

「こ、光栄でございます、皇子殿下」

「この後、時間はあるか? 特別褒章を授与された優秀なルアーナ嬢と、仲を深めたいと思ってな」

「え、えっと……!」

ルアーナは混乱したようにあたふたしている。

まさか帝国の皇子に話しかけられるとは思っていなかったから、その対応の仕方がわからない。

もちろんレベッカもこんな状況を想定していなかったので、教えているわけがない。

ルアーナを助けてあげたいが、全く関係ないレベッカがここで割って入るわけにはいかない。

レベッカは歯がゆい思いを抱いて、ルアーナを見守るしかなかった。