軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話 まずは、少しだけお休み

「では、ギルネ様! 早速っ――イテテッ!」

「ダメだティム! 君の傷はまだ治ってない! もう少し休もう!」

「そ、その方が良さそうですね……すみません。そういえば、ガナッシュ様は?」

「ガナッシュなら、君を運んでからお互いに事情を説明して、昨日のうちにどこかへ行ったよ」

「い、意外と自由な方なんですね……」

「実力はあるんだが、分からん奴でな。ちなみに君と共に呼び出された時は飲んだくれの自分も解雇されると思っていたらしいぞ」

ギルネ様はそう言って笑った。

ガナッシュ様の意外な内面に僕も思わずつられて笑ってしまう。

「だから緊張しているように見えたんですね……あはは――っいたた!」

「す、すまん! 痛むよな! すぐに横になった方が良い!」

「大丈夫です……。それにしてもやっぱり悔しいですね。ニーアの思い通りになってしまった事が」

「あのギルドの事なら心配しなくて良い。間もなく 崩壊(ほうかい) するだろう」

ギルネ様のお言葉に僕は首を捻ってしまう。

「ギルネ様が抜けたからでしょうか……? しかし、ニーアの話だとギルネ様の宝具や神器があれば」

「――違うよ、ティム。君がいなくなったからだ」

「……はい?」

「すぐにあいつらも気がつくことだろう、『ティムの代わりなんていない』って事に」

~~冒険者ギルド、『ギルネリーゼ』~~

「ニーア様、ギルド長へのご就任おめでとうございます」

「神器を扱えるのはどうやら私だけみたいだからね。謹んでお受けしよう」

ギルド長の執務室でギルド員と幹部達の拍手と歓声が上がる。

そのほとんどは恐怖によるものだ、先日のティムへの仕打ちが脳裏に焼き付いている。

神器ニルヴァーナを手で愛でながら、ニーアはほくそ笑んだ。

「失ったモノは、『思い通りにならない小娘』と『雑用係』だけ。むしろ改善だろうな」

「ニーアの作戦が上手くいったな」

「ニーア"様"だろ? 私も今やギルド長だ。気安く呼ばないでくれ」

「……ニーア様」

「それで良い」

すこし不機嫌そうな様子で幹部のデイドラはニーアに言い直した。

「ガナッシュはいないようだな、あの自由人め」

ニーアがそう呟いた頃。

ギルド員の下っ端の1人がニーアに進言した。

「あの……ニーア様、早速ですがティムの代わりの雑用係を雇用して頂いてよろしいでしょうか?」

「もちろんだ、もっと有能な奴を雇用してやるから楽しみにしておけ」

ニーアは自信満々に答えた。

「あ、ありがとうございます! ティムが居ないせいで我々は朝食も取れず、衣服もなくて困っていたのです」

「……それは雑用係たちの間ではティムの働きが大きかったという事か? 全く、武芸の才能はないくせに――」

「いえっ、というより、このギルドの雑用は『ティム1人』しかおりません」

そのギルド員の言う事を聞き、腕を組む。

そしてニーアは改めて聞き返した。

「ティム1人? この1000人はいるギルドの雑用をか?」

「は、はい! 炊事、洗濯、裁縫、掃除など。全て任せていました」

「可能なのか? そんなこと」

「最初は自分たちも嫌がらせのつもりで1つずつ仕事を増やしていったんですが、最終的には1人で全てできるようになってしまったようです」

「う……うむ。そうか……」

「自分たちも特に気にはしていなかったのですが、どうやら雑用スキルが高かったようですね」

ニーアは少しだけ思案をした後、ニヤリと笑ってみせた。

「なるほど、あの小娘がティムについて行ったのはこういう理由か。これでこのギルドが運営できなくなるとでも思ったのだな」

「……ど、どうしましょう」

「なに大した事はない、出費は痛いが雑用係を大量に雇えば良い。破産するほどではないだろう」

「かしこまりました! ありがとうございます!」

「全く、あの小娘らしい浅い考えだな」

ニーアは愉快そうに高笑いをした。

~~一方宿屋では~~

「あの……ギルネ様」

「な、なんだ! トイレか!? よし、一緒に行こう! 手伝うぞ!」

「い、いえっ! 1人で行けます! ではなくて――」

「本当か!? 分かった、食事だな! 食べさせてやろう! 自分で噛む事はできるか!?」

「大丈夫です! その……ずっと僕に付いて居なくても……」

「す、すまん……そうだよな……! ずっと私が隣にいるのも困るよな……で、出ていくよ……」

ギルネ様は泣きそうな表情で寝ている僕の隣から席を立った。

「い、いえっ! 大丈夫です! そこに居てください!」

「――っ! そうか! 良かった! 何かあったら心配だからな! ティムは気にせず休んでてくれ!」

「は、はい……」

ギルネ様は花が開いたように笑顔になった。

流石にギルネ様の隣では休めるはずもなく。

かと言って、あんなに悲しそうな表情をされると出ていってもらうわけにもいかず……。

僕はギルネ様に見つめられながら狸寝入りをした。