軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61話 「生徒会室にて2」

「あなたは……」

生徒会室に入ってきた少女の 纏(まと) う白い制服を見て一目でこの学園の生徒ではないことがわかった。

そしてそれがルナと同じフェリ女のものであることも。

腰まで伸びた金色の髪。通り過ぎれば思わず振り返ってしまう程の美しい顔。そこにある目が僕を 捉(とら) えてすぐに怪訝そうに細められる。

「……お邪魔でしたか?」

その凛とした声をきいて思わず背筋が伸びた。

それにしてもこの声……やはりどこかで。

「いいや、問題ない」

本当に?

思わずそう口にしてしまいそうになる。

少女の目は依然として、じとーっと僕に向けられていた。

「……」

どこか落ち着かない様子でチラチラと僕を見る少女。

「「…………」」

僕もなんだかいたたまれなくなって、少女と目が合うたびにあははーと笑っておく。

「……!」

頬を少し膨らませてむっとする謎の少女。

……どうしろっていうんだ。

「あの、ロイド先輩、やっぱり僕ここらへんで……」

「報告をきこうか」

僕をさえぎるようにして放たれたロイド先輩の言葉に、少女の目が驚いたかのように見開かれる。

「しかし、ロイド様」

「構わない」

今のやり取りだけで、この少女が暗部に属する者なのだと理解した。

そうであれば彼女がここまで僕を気にする理由もよく分かる。

「ロイド先輩。僕は加入を断った身です。そんな僕がここにいてはご迷惑になるのでは?」

本心だった。

暗部とまで呼ばれる組織だ。無関係な僕が一緒ではできる話もできないだろう。

「問題ない。お前にも関係のある話だ」

「……僕にも?」

「ああ」

言ってロイド先輩は、少女に視線を向けた。

「ではフィーア。報告をきこう。 野(・) 良(・) 神(・) についての報告を」

今すぐにでもここから出ていきたい気持ちは、一瞬で消え失せた。

報告……野良神についての?

それに――

「……フィーアさん?」

フィーアという名の少女を僕は知っていた。

いや、暗部と関わりのある人物で絞れば一人しか思い浮かばない。

しかし、容姿と名が一致しない。

僕の知っている“フィーア”は黒い頭髪をしていたはずだ。

「…………久しぶりね」

そう言って、“フィーア”はどこか諦めた様子で長い金色の髪を後ろ手で結んだ。

……確かに。これで髪が黒色だったら、記憶の中にある彼女と一致する、ような気もする。

色を変えていた、ということなのだろう。なるほど確かに暗部らしい。と一人納得しているうちにフィーアさんが姿勢を正して再び口を開いた。

「……ご報告いたします。かねてより調査していた件ですが……やはり」

「……そうか」

空気が重くなったのをはっきりと感じた。

ロイド先輩は少しのあいだ瞳を閉じると、向き直るようにして僕をまっすぐに見た。

「ユノ・アスタリオ。率直に尋ねるが、お前は野良神についてどれほど知っている?」

「……野良神について?」

「ああ」

そのままの意味ではないのかもしれないが。

「まだ名前のない神が、野良神と呼ばれている……としか」

「その通りだ。ではお前は野良神をその目で見たことはあるか? 女神アテナ以外で、だ」

「……ありません」

「当然だが、お前が知らないだけでこの世界には野良神と呼ばれる神が複数確認されている」

それはそうだろう、なんて軽口をたたく気がしないのは何故だろう。

確認めいたこのやりとりの間にも、僕の心臓はやけにうるさく鼓動を強めていった。

ロイド先輩は再び確認するようにフィーアさんへと視線を送る。

その視線に彼女ははっきりと首を縦にふって答えた。

瞬間――

「――野良神の失踪。それが今、俺が個人的に追っている案件になる」

ロイド先輩の声が鼓膜をたたく。

簡潔に告げられたはずのその内容が、なぜだかすんなり頭には入ってこなかった。

「野良神の、失踪?」

「そのままの意味だ。存在を確認されていた野良神が複数、姿を消している。無論、神々の行動など俺たち人間が計れるものでもないだろう。だが――」

言ってロイド先輩の鋭い視線が僕を捉えた。

まるで僕の覚えた疑問を打ち消すかのように。

「存在が確認されてより今まで継続的に観測できていた神が、突然消える。そんなことが 立(・) て(・) 続(・) け(・) に起これば疑うより他はない」

「……疑う? なにを、ですか」

自分でも不思議だった。

なぜ僕はこんなにも動揺しているんだろう。

分かり切った答えを、わざわざ確認するような――

「もう気づいているはずだ。ユノ・アスタリオ」

その言葉で頭の中が真っ白になった。

「事件性がある、ということだ。何者かが故意的に野良神を狙っている……可能性は否定できない」

「…………」

言葉が出なかった。

ロイド先輩は最初に言った。

これは僕にも関係のある話だと。

ああ、なるほど。やはりこの人は恐ろしい。

最初から僕に選択肢などありはしなかったのだ――

「つまり」

僕は認めた。

「つまり、仮に、可能性の話として」

たしかに、これは、無視できない。

「もしもそんな、野良神を執拗に、故意的に狙っている奴がいたとして、その対象に、神様が……女神アテナが含まれる、なんて可能性は……?」

返答を僕は知っていた。

「――否定できない」

ロイド先輩が微かに笑う。

「ユノ・アスタリオ。百点だ」