軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9-30 砂の国ロウカク 世代交代

レアガイアと5人の戦闘が始まって少し経った。

……なんというか、カサンドラだけでも十分のようだったのに、4人が追加された事により、レアガイアが少し可哀想に思えてきてしまう……。

「もう一度いくぞ!」

「レンゲ! 合わせなさいよ!」

「わかってるっすよー!」

クドゥロさんが砕いた鱗に隣接する鱗をアイナが炎で内側の肉を焼き切り、ソルテが鱗を咥え、レンゲが鱗の内側を蹴った勢いに乗せて鱗を剥ぐ。

「脂が邪魔」

「焼き尽くす!」

「アイナ愛してる! お肉ー!」

鱗を数枚剥いてむき出しとなった背中の脂にアイナが火を放つとシロが飛びつき、あっという間に切り裂いて魔法の袋へ……。

『グ、グゥゥ……』

当然レアガイアは鱗を更に剥がれ肉まで取られたのだから暴れるのだが……。

「はいはい。暴れない暴れない」

動いたそばからカサンドラに殴られて強制的に大人しくされてしまい、顎が地面にめり込まされてしまう。

「もう一枚くらいいっておくか?」

「そうね。まだ入るでしょう?」

「魔法の袋(中)でもかなり入るっすねえ……。血もかなり入れてるっすけど、まだ入りそうっす」

「(小)の方はお肉で埋めるんでしょ? ……とんでもない量になるわね」

「逆じゃなくて良かったじゃないか……」

レアガイアの背中の上で常に移動をしつつも、悠々と会話をしながらレアガイアを捌いていく4人……。

「アイナ! 背中のお肉はもういい。尻尾とか、別の部位が欲しい!」

「むうう……そこまで鱗を剥いでいくのは大変だぞ……」

「シロも手伝う。ん。ここから一気に剥ぐ」

レアガイアの絶対防御は隙間もなく綺麗に並べられた鱗だからこそのもの。

カサンドラのように鍛えているわけではなく、肉自体が硬いわけではないため、1枚を剥がしてしまえばあとは肉ごとそぎ落とす事が出来たようだ。

……だからといって、背中から腹の方まで一気に剥がそうとするのは大丈夫なのだろうか。

地龍保護委員会とかあったら、間違いなく大問題だろう。

「尻尾切り落としたい……」

「流石にこの太さは無理だろう……。それに、尻尾までの距離がありすぎる」

「食べ比べしたかった……。ん……わかった。諦める」

諦めるといってもばっちり腹肉で牛一頭分以上の肉を切り裂き、魔法の袋につめてしまうシロさん。

最早地龍という山に登り、まるで竹の子を取るように肉を削ぎ、血を取り、鱗を集めている。

「嗚呼……許可したとはいえ、私 人間の味方(こっち) でいいのかなってなりそうなほど、容赦ないね……」

味方になってくれたはずのカサンドラでさえ、レアガイアが切り刻まれ血を肉を取られる事に恐怖しているようだ……。

なんせ皆返り血で真っ赤なのである。

怖いよなあ……全身血まみれの人が笑いながら体を削るんだもん怖いよなあ……。

『グ…… ウウ……』

「ん。もう少し入る」

「そうだな……爪も欲しいところだが……流石に危ないか……」

「んんー……じゃあ眼行く?」

「ね、ねえ母様? そろそろ参ったって言ってくれないと困るんだけど? もう勝ち目ないのわかるよね? ね? 眼取られちゃったら私も本当に困るからいい加減降参しよう? そうしよう?」

『グウウウウ…… ァァァアアアアアア!』

レアガイアが大きく叫び声を上げるとビリビリと空気が振動し、こちらにまで届く。

『ウウウゥグァァァアアアアアアアア!!!!』

まだ叫ぶ!

鼓膜が破れるんじゃないかって程にでかい雄叫びに、アイナ達も思わず耳を塞ぐ中、シロとカサンドラが二人で叫ぶレアガイアの頭部に瞬時に現れる。

すると、シロがカサンドラに気づいたのか譲るように手を差し出すとカサンドラが頷き……。

「うるさいっ!」

っと、カサンドラが殴りつけたその時だった。

ポムン? って音はしなかったが、そんな雰囲気の白や灰の煙のようなものが上がる。

すると、レアガイアの巨大な姿が……消えた。

「うわああああああああん!」

……いやいた。

「カサンドラちゃんが! カサンドラちゃんがお母さんをいじめるよううううう!」

うん……いた。

どうやらレアガイアも人化できたようで、全裸の太い女性が泣いている。

「酷いよううううう! お母さんお腹がすいたからご飯食べたかっただけなのに! 背中痛いようー! お腹すいたようううう! うわああああん!」

全裸でへたり込み、とてつもなくBIGなお腹のお肉と胸を露にした女性が泣いている……。

あれだ。漫画的表現だと思っていたのだが、本当に滝のように涙が流れ続けている。

頬を伝うとかではなく、一回斜め上方向に上がってから滝のように落ちていっている。

「……むう」

「なんだろう。言葉だけ聴くととんでもなく私たちが悪い気がしてくるわ」

「いや、でも、ご飯って自分達のことっすよ?」

「小さくなった。今なら尻尾切れるかな?」

やめたげて!!

流石に泣いている人型の地龍の尻尾を切り取るのは可哀想でしょう!

「母様……泣くくらいならもう参ったって言って私に長の座譲ってよ」

「やだあああ! まだお母さんが長なの! カサンドラちゃんを長にしたら厳しくするから嫌!」

「当たり前でしょう……母様今の姿を自分で見て、他の子達と見比べてみなよ……」

カサンドラの言葉に滝が止まり、アイナやシロ達をじーっと見つめるレアガイア。

「ふえ…………? 皆痩せてる……。ご飯食べてないの?」

「あれが普通なんだよ。母様が太りすぎなの!」

「お母さん太ってないもん! 光龍のヨッちゃんとかチャーミングだねって言ってくれたもん! 火龍のヴォルちゃんとかは良い脂乗ってるじゃねえかって言ってくれたもん!」

「風龍のアルスカイには糞デブって言われたじゃないか」

「く、糞デブじゃないもん! アルスカイは小食だからぽっちゃりな私に痩せてるのを自慢してくるだけだもん……」

いやその……申し訳ないんだがどう見ても不摂生で太ったようにしか見えない……。

糞はつけなくてもいいかもしれないがデブは譲れない……。

そのサイズをぽっちゃりでごまかす事は許されない。

格好良く言うならば、メタボリックドラゴンと言った所だろう。

「とにかく……母様が参ったって言わないなら……」

「なに? またぶつの? お母さんもうお腹すいて動けないのにまたぶつの? 家庭内暴力反対!」

「龍は力って言ったの母様でしょ! もう……なんで龍形態の時はカタコトなんだよ」

「だって……龍たるもの威厳がどうのって、水龍のレヴィアが言ってたんだもん……」

「レヴィアだって痩せてるじゃないか。皆母様みたいに食っちゃ寝して、寝ながら魔力を取り入れたりしないんだよ」

「レヴィアは縦に長いから元々細いんだよ……。知らないのー?」

ふて腐れて小馬鹿にしたように言うレアガイアに、カサンドラは無言で拳を握る。

「あ、嘘嘘今のなし。ごめん。ごめんなさい叩かないでください! あと出来ればご飯ください!」

「……負けを認めたらご飯をあげる」

「ええー……でも負けを認めたら長が……」

「……さっき食べたとっても美味しい魔力なんだけどな……。姫巫女と同等……いや、純粋な魔力の味だからそれ以上かも……」

「本当っ!? じゃあ負けました! ご飯ください!」

両手両足を広げて大地に仰向けになり、服従のポーズを取るレアガイア……。

太ももの肉で大事な部分が見えないのだが、それがなんだかかえって悲しくなってくる……。

なんというか、地龍の風格というものは皆無で、砂とともにどこかへと飛ばされたようだ……。

「……っはあ。盟友。悪いんだけど、少しだけさっきの魔力の球をもらえるかな?」

「ああ。お前用だったけど用意してあるよ」

「ああ、さっきののお礼……? 律儀な上に、本当に好きなんだねえ……。はい、母様」

「わーい! わ、なにこれ? 純粋な魔力よね? 綺麗ねえ……お母さんこんな綺麗な魔力食べるの初めてよ」

なんだろう……友人の母親にこんな感じの母親がいた気がする。

終始友人は恥ずかしそうにしていて、部屋にお菓子を持ってきた際なんかは早く追い出そうと頑張っていたな……。

「いいから早く食べなよ……」

「いただきまーす! ん……んんー! わ、わ、凄い! 魔法の味もしないし、生臭い肉の味もしないよ! こんなに小さいのに魔力の濃い味がする!」

「はいはい……。私のための物だったんだから、ありがたく食べてよ」

「でも足りないなあ……。もっと食べたいよう」

「今は我慢してよ。ひとまずそれでも一日くらい持つでしょ? その間に地竜でも狩って食べればいいでしょう」

「ええー地竜美味しくないんだもん! それより……そこの男の子、とっても美味しそうなんだけど……」

じゅるりと涎を隠そうともしないレアガイア。

…………ん?

男の子って俺の事か!?

「盟友は食べちゃだめ。二度とその魔力の球を食べられなくなるよ。逆を言えば、盟友がいればたくさんそれが食べられる」

「ほ、本当!? わあ、これを、たくさん……」

目を輝かせて俺を見つめる地龍母レアガイアだが、彼女を満足させられるほどの魔力球を作る事を考えると冷や汗が流れる。

満足できなかったら俺が食べられたりしないだろうか……。

「さて、それじゃあ長として、ロウカクとの盟約は破棄してもいいよね?」

「うん! 代わりのご飯が食べられるならいいよ!」

「……ってことで盟友。悪いんだけど、たまにでいいから魔力の球が欲しいんだけど……どうかな?」

まあ、そうなるよね。

「いいよ。それで盟約が破棄できるんなら安いもんだ」

「わーい! あ、でもこの子人間だよね? という事は少しの間しか食べられないんじゃ……」

「普段は地竜を食べるようにするの。母様、痩せないと魔力の球も食べさせないからね」

「えええええ!? カサンドラちゃん厳しすぎるよう……」

いや、厳しくはないと思う。

ちゃんと飴も用意しているのだし……。

飴は俺だけど。

「だ、大体なんでカサンドラちゃんが決めるのさ! 私とこの子が盟約を結んだっていいはずだよ!」

「私が長だから。それに、盟約には対価もいるんだよ?」

「対価って?」

「これ。これを好きにさせると、盟友が魔力の球をくれるの」

ローブの前をはだけさせて露にし、おっぱいを指差すカサンドラ。

……あれ?

冷静に考えるとおっぱいを対価にご飯をあげるって、俺人としてどうなんだろう。

……まあいいか。

「え! じゃあお母さんも貰えるんじゃないの? ほら! カサンドラちゃんよりも大きいおっぱいだよ!?」

「違うっ! おっぱいとはウェストとのバランスも重要なんだよ!! ただ全体的に大きいだけのものをおっぱいと認めるわけにはいかない! トップとアンダーの差がしっかりとしているからこそおっぱいなのであって、それがわからない胸はただの胸肉だ!!!」

「ひいっ! おこ、怒ってる!? なんで?」

ガルルルル……!

俺は認めん! 断固として認めんぞ!

それをおっぱいとすることだけは!!

「主様……熱いわね。ふふ。ちっぱいよりも下なおっぱいもあるのね」

「ご主人地龍に説教したっすよ?」

「そ、そうですねお姉様……。肝が据わっていらっしゃいます……」

「ふ、太らないようにしないと……」

「主格好いい」

「信念とは、人を人たらしめるものですからな」

「……内容はおっぱいだがな」

冷静な突っ込みありがとうアイナ。

だが、熱くもなるさ人間誰だって譲れないものはあるのだから!

「だってさ。つまり、痩せれば母様の胸もおっぱいになるって事だよ。そうすれば母様もお願いできるんじゃないかな?」

「えええ……超面倒くさい……。あ、そうだ! ねえねえ君、カサンドラちゃんのお婿さんにならない? お母さんにご飯をくれるなら公認しちゃうよ?」

「「「「「駄目」に決まってるでしょう!」」」」

アイナ、ソルテ、レンゲ、シロ、ウェンディがレアガイアを取り囲み、武器を持つものは武器を構え、ウェンディとレンゲは眼光を利かせて睨み付ける。

出遅れたポーズで止まっていたコレン様が、さりげなくその囲いに加わった。

「ひ、なんで怒るの!? この子達怖いようー!」

はぁ……と、呆れたように溜息をつくカサンドラと視線を合わせると、自嘲するような複雑な顔で笑うのだった。