軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9-24 砂の国ロウカク 戦闘開始

「はぁ……はぁ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」

流石に、子供でも地龍ですね。

硬くて魔法も通りません……。

というか、魔法食べるんですけど……。

「ハーハー!! 薄味だぜ女王様ようー! もっと魔力を濃く練ってくれねえと食った気がしねえぜ!」

「流石兄チャン! 魔法なんか一口だね!」

「おうとも弟よ! それにしても 爺(じじい) の方はちょこまかと鬱陶しいったらねえな! まあ、俺様には全く効いてねえけどな!」

「兄チャン格好いいー!!」

あの軽い口調にだんだんとイライラしてきますね……。

効いていないという事実が余計に……ですが。

「ぜぇ……ぜぇぇ……」

「爺……大丈夫ですか?」

「なあにこれくらい……っと言いたいところですが……いやはや、迫りくる老化の波が厳しいですな。あと30歳若ければ、あのような軽薄な者には負けぬのですが……」

爺も大分疲労が溜まっているようですね……。

無理もありません。

私が何の役にも立てておらず足手まといの状態で、爺がほとんど二体を相手にしているようなものですから……。

まあ、そのおかげで動けない私がまだ生きていられるのですけども……。

「子供と言えど侮れませんな……速度はともかく、一撃が重いですぞ……」

そうなんですよね。

この二体の地龍、動きは遅いんですよ。

いや遅いと言っても私は避けられませんけど。

とはいえ尻尾の一撃だけで、砂漠の砂が砂嵐のように巻き上がるほどの威力なので、当たれば終わりですが……。

それと、どうしてだかレアガイアともう一体は戦いに参加してこないのです。

間違いなくチャンスであるはずなのに、全く優勢にならないのは……心が折れそうですね。

「レアガイアが参加したら、終わりですね……」

「ですな。とはいえ、どちらかを倒せば出てくるでしょう……」

「はあ、詰んでますね……。でも、やらねばなりません」

食べられてはしまいますが、正面でなければ牽制に魔法は使えますし、魔力ポーションを補給っと……これは、確かお義兄さんが作ってくれた物でしたっけ……。

……まだ、頑張れる気がしてきました。

「しかし、レアガイアは一体何故手を出してこないのでしょう……?」

「子の戦闘訓練にでもされているのですかな? はぁ……事実とはいえ、舐められたものですな……」

「いえ、そういう気配ではないのですよね……」

子に戦闘経験を積ませるだけならば、戦いを見るはず。

なのにレアガイアは彼方を見つめるだけで、何かを待っているような……。

「……ム キタ」

「来た……?」

来たって一体……。

何を待っているのかを考えて、思わず鳥肌が立つように血の気が引いていく。

この予想だけは当たってはいけない。

だというのに……。

「コレエエエエエエエエエエエエエン!!!」

「この……声は……」

聞き間違えるはずの無い、私の最愛の人の声。

ここにいてはいけない、ここに来てはいけない人の声がした。

生まれて初めて、幻聴であってほしいと願ったのに……その姿を確認して、幻聴ではないと理解してしまった。

「どうして……」

「ヒメミコ キタ」

「どうして……来てしまったのですか……」

私の想いとは裏腹に、嬉しそうに笑い、手を振るお姉様。

横に座るお義兄さんも笑顔を浮かべ、こちらへと向かってきていた。

ああ……お義兄さんまで……。

「ああーん? なんだアレ? 美味そうな魔力があるじゃねえの」

「兄チャン! あれが姫巫女だよ! 横の男も美味しそうだよ!」

「ふーん。母様、早い者勝ちでいいんだよな?」

「……」

「オッケーと取るぜ! 行くぜ弟よー!」

「あいよー兄チャン!」

「待っ……」

あっという間にこちらを無視してお姉様達の方に進んでいく二体の地龍。

デザートパラサウロがブレーキを踏もうとするが、お義兄さんが声をかけると足を踏みしめ直し、真っ直ぐ地龍へと向かっていった。

「全員いただきー! 一噛みだああああ!」

「食べ残しは僕が貰うよー!!」

巨体と岩のように重そうな龍鱗を感じさせぬ跳躍を見せる二体の地龍。

大きな顎を開き、強力な噛み付きで全滅を狙ったはずだった……。

「……邪魔」

「甘いな」

「舐めないでよね」

荷台から飛び出したシロさんが一体をナイフ一本で弾き飛ばし、アイナさんとソルテさんが剣と槍で一体を叩き伏せる。

そしてデザートパラサウロが驚きを見せつつもこちらへとやってきた。

「コレン! 無事だったっすか!」

「お……姉様……」

「いやあー良かったっす――」

「何が良かったですか! なぜ、どうして戻ってきてしまったのですか!?」

「どうしてって……コレンを助けに決まってるじゃないっすか!」

「助けにって……貴方は今やこの国の者ではないんです! 姫巫女の責務も何も無いんですよ! それに、大切なヒトがいるのですから、来てはいけない事くらいわかるでしょう!」

激昂するコレン様にきょとんとした表情を向けるレンゲ。

「あっはっはっは! めっちゃキレてるっす!」

……そして激怒しているコレン様に対して、爆笑で返すレンゲ……。

「お姉様っ!」

「いやあー。それだけ元気なら良かったっすよ。間に合わないかと思ったっすからね!」

レンゲに笑顔を向けられると何も言えなくなり、涙ぐみ始めるコレン様。

怒り三割、嬉しさ三割、心強さ4割と言ったところだろうか。

綺麗だったドレスはところどころ擦り切れていて、砂にまみれてくすんでしまっているし、露出している頬や手には小さな傷を負い、額には茶色く染まった汗も浮かんでいて大変だったって事は痛いほど伝わってくる。

「さて……そいつが、レアガイアっすね」

レンゲの言葉にはっとして地龍へと目を向けるコレン様。

「ヒメミコ イル」

「か、彼女は確かに姫巫女ですが、この国の者ではございません! よって、盟約には従えません!」

「ヒトノ コトワリハ シラヌ ココニ イルノナラバ クウ」

「こいつがレアガイアか……でかいな……」

カサンドラよりもずっとでかい。

っていうか……でかすぎないか? 地竜なんかと比べ物にならないぞ?

横にも縦にも奥行きも何もかもがでかすぎる。

そして、鋭い眼光にでかい二本の犬歯らしき牙がサーベルタイガーのように長く伸びており、体はまさに尖った岩が乗っているようなごつい龍鱗で覆われている。

尻尾なんか城壁だろうがなんだろうが確実に一撃で粉砕できるくらい太くてごつい。

……っていうか、あれが振り回されたら防ぎようがないと思うんですけど……。

「コレン様、来てしまった以上は仕方ありませぬよ。今からでは逃がす事も叶いますまい」

「爺……」

「爺もお疲れっす。……コレンのこと守ってくれてありがとうっす。二人とも、暫く休んでていいっすよ」

「ほっほ……少しだけ……頼めますかな……」

クドゥロさんが砂の上に腰を下ろし、だらしなく力を抜いて息を荒く吐き出していく。

回復ポーション(大)を手渡すと、素直に受け取って浴びるように飲む爺さん。

おそらくコレン様を守りながら動き続けていたのだろう。

すげえ爺さんだよ……。

それじゃあここからは俺達が……。

遠方で砂煙が噴出し、2体が荒れ狂いながらこちらへと向かってきていた。

「てめええら殺す! 叩き潰してぐちゃぐちゃに切り裂いて噛み砕いてぶっ殺して食ってやるからなああああ!」

「兄チャンやっちゃえー! 僕も怒ってるー!」

ああ、めっちゃ怒ってるなあ。

ずいぶんと遠くなのにしっかりと声が聞こえるほどにキレているようだ。

鋭い牙をガチガチと鳴らして威嚇をしているよ。

「……さて相手はやる気満々のようだが、どう分ける?」

「自分がレアガイアはやるっすよ」

「……大丈夫?」

「因縁の相手……って奴っすからね。ぶっ倒して、盟約をここで終わらせるっすよ」

「なら、私達も手伝うわよ」

「そうだな。あれには多対一で目標を分散した方がいいだろう。だが、それでも3体余るのか……」

そうなんだよな……。

地龍が1体じゃなくて4体もいるとはな……予想外すぎるだろう。

「あの2体はシロが受ける」

「大丈夫なの? 相手は子供とはいえ地龍よ? 2体も同時に相手できるの?」

「大丈夫。終わったら、そっちを手伝う」

シロはケロッとした顔で言ってのける。

リラックスしていて、緊張もしていないような顔でまるで普通の事のように言うシロなので、問題は無いのだろう。

「言うっすねえ……でも、頼むっす」

「それでも1体は残っちゃうわね……」

「それならば私が――」

「……1体は俺が受け持つよ」

クドゥロさんが無理をおして無茶を言うのを遮らせてもらった。

「主君? 流石にそれは……」

「主様……いくら鍛えたといっても、主様に地龍の相手は無理よ? ここで皆を連れて空にでも退避してくれていた方が助かるわ」

俺は少し離れたところにいる一体に目を向ける。

……やっぱり、お前もいたんだなカサンドラ……。

「まあ、こっちも因縁っていうか……知り合いがいるからな。戦うかどうかは別として、時間稼ぎくらいはしてくるよ」

「……なら、シロが速攻で倒して主を援護する。それまでは……ウェンディに頼む」

「はい。ご主人様をお守りします」

ウェンディに守られるのか俺……。

俺がウェンディを守る……って言いたいんだけどなあ……。

「じゃあ、それで行きましょう……主様。絶対無茶しちゃ駄目よ」

「ああ」

「油断も駄目だぞ。常に転移は出来るようにしておくのだぞ」

「ああ。わかってるって」

「まあ……言うだけ無駄な気もするっすけどね……。でも、今回ばかりは、ちゃんと聞いてほしいっす……」

「わかってるっての! ほら、行くぞもう」

後ろ髪を引かれているようだが、レンゲが屈伸し、アイナとソルテも体を解してから、パンっとレンゲが拳を掌に当てて鳴らし、レアガイアへと向き直る。

「お待たせしたっすね」

「ウム」

「悪いっすけど、タダで食われる気はないっすよ?」

「ムロン チカラヲ シメスガヨイ」

「了解っす。ただ、乱戦は困るっすから、少し離れるっすよ」

「……ワカッタ」

レンゲ達がコレン様やクドゥロさんを巻き込まぬように少し離れた位置に向かい、俺達もそれぞれの戦場へと脚を向ける。

「主。無茶しちゃ駄目。シロが行くまで、ちゃんと生きてて」

「ああ。わかってるって……。戦闘になりそうなら速攻で逃げるよ」

「ん……約束」

「ああ。約束だ」

シロは心配そうな眼差しを残し、荒ぶる二体の方へと向かっていく。

本当は俺のそばにいたいのだろうけど、現実問題これが理想形なのだ。

とはいえ……俺にもカサンドラ相手に時間を稼げる確証がある訳ではないんだけどな……。

どうにか話し合いからスタート出来ればいいんだが……まあそれくらいの理性はある龍のはずだ。

……あいつらと違って。

「おいおいおい! 俺達の相手がこんなチビ猫かよ! 冗談じゃねえぞ!」

「そうだそうだー! チビのくせに!」

「魔力量も多くねえし餓鬼じゃねえかよ。腹の足しにもなりゃしねえ! とっとと殺して美味そうな女か男を食いに行くぞ弟よ!」

「そうだね兄チャン!」

声がでかい上に口が悪い地龍だなあ……。

しかし、いざ見て見ると凶悪そうな面構えだな。

……少し気になり、足を止めてシロの方を見てしまう。

「……名乗りがあるなら早く済ませた方がいい」

「ああ?」

「シロは急いでる。だから、口が利けなくなったら、もう言えない」

「てめえ……舐めやがって。いいだろう! 耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ! 俺は地龍兄! ロッカス!」

「僕は地龍弟! ロックズ!」

「カスとクズ。ん。覚えた。もう死んでいいよ」

「てめええ! はい殺すー! チビだとか食い応えがないとか関係なく殺ぉぉぉす!」

「挟み打ちだー!」

シロに向かって猛然と突撃を開始するロッカスとロックズ。

だが、シロは慌てずにナイフを構えた。

「シロはチビじゃない。シロ。……さっきから黙って聞いていれば上から目線が鼻につく」

シロの周りに白いもやのようなものが纏わりついていくのが見える。

あれは確か…… 被装纏衣(ひそうてんい) の『 白獅子(しらじし) 』だったか。

俺が知るシロの技の中で一番強いものだったはず。

その分消耗が激しかったはずだが……シロの表情は余裕そうだ。

だから俺はそれ以上見ず、俺の役割をこなしに向かう。

「主を食べようとした時点で、シロは怒ってる。それに……」

「噛み砕かれやがれええええ!」

「ガジガジしてやるー!」

ま、シロなら大丈夫だろう。

「……蜥蜴風情が、頭が高い」

だって、シロが速攻で倒すって断言していたからな。