軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9-15 砂の国ロウカク レンゲの妹コレンちゃん

コレン様がレンゲに張り付いて離れない。

ぎゅううっと強く抱きしめられて辟易しているレンゲと、満面の笑みを浮かべるコレン様の頬と頬がむにゅんとなっており、どうするのかを待つ俺達。

「コレーン……もうそろそろ良くないっすか? いい加減暑苦しいんすけど……」

「駄目です。久しぶりなのですよ? それに私はお姉様が心配でずっと夜も眠れなかったので、もっと抱きつかせるべきです」

「あー……暑いっす。お風呂入りたいっす」

「でしたら一緒に入りましょう! 背中! お背中を流させていただきます! も、ももも、もちろんお背中だけでなくとも構いませんが……っ!」

「んんっおほん。コレン様、久しく姫様にお会いできなかったお気持ちは大変わかりますが、そのくらいで……。お待ちいただいていますのは今回の討伐に協力してくれた姫様のお仲間でございますよ」

「あら、皆様にも感謝申し上げます! まあ、こんな小さな子までいらっしゃるなんて……。ふふ、お姉様の力になっていただき、ありがとうございます」

「んんんっ! そして、こちらの殿方が皆様の主殿でございます」

クドゥロさんに紹介されたので、軽く手を上げて俺ですどうもと頭を下げたのだが……。

「あ、そう」

すごくあっさりと終わってしまった……。

「申し訳ございませぬ……コレン様は男が嫌いゆえ……」

「あ、はい。そういうあれなんですね。わかりました。大丈夫です」

出会った頃のレンゲと同じって事ね。

うん。それならまあ今の反応もわからなくもないな。

「そうだご主人。さっきとんでもなく失礼な事を言ったっすよね! なーにが綺麗なレンゲっすか! どういう事っすかー!」

「あー……悪い。あまりに似すぎてて驚いてさ。つい思わず本音が……」

「お姉様に失礼を……? 下賤な男め……っ」

ひ……。

コレン様が俺に向かって目を見開き、恐ろしい眼差しで立ち上がり、こちらに向かって掌を広げてくる。

まさか、コレン様も破砕肉球拳を!?

「『 水晶の急……(クリスタルブリ……) 』」

あ、違った。魔法だ、ってやばい!

水晶のように透明な結晶がコレン様の手の前に集まり始めている。

大きさはペットボトルくらいか?

不可視の牢獄(インビジブルジェイル) は張ってあるが、それよりもナイフに既に手をかけているシロを止めねば!!

「わーわー! やめるっすコレン! ご主人に攻撃なんかしたら首チョンパされちゃうっす!」

「放してくださいお姉様! お姉様を下賤な男がないがしろにするなんて許せません! お姉様は世界で一番美しく、慈悲深く、お優しく、勇敢で、聡明で、完璧なお姉様です! 嗚呼、お姉様……」

後ろからレンゲに抱きつかれて止められ、顔を掠めた髪にまたすんすんと鼻を鳴らすコレン様。

でも、攻撃されないで良かった……。

シロだけじゃなくてアイナやソルテまで目付きを変えて武器に手をかけようとしていたし、何より……。

「ご主人様は世界で一番格好良くて、慈悲深く、お優しく、勇敢で、聡明で、愛情に溢れ、多くの方に好かれる才を持ち、お料理もお菓子作りも上手で、器が大きく、いざという時も頼りになる完璧なご主人様です……」

と、笑顔のまま小さな声で早口につぶやくウェンディさんが鎮座したままなのだ。

感じた事の無いような冷たい魔力を漏らしていて、暑い気候の土地にいるはずなのに寒いよう……。

「ふん。……貴方がお姉様の主なのね。爺から話は聞いていたけど……本当に男の……。それで、いくら出せばお姉様を解放していただけるの?」

「いや、いくらって……」

別に、解放されたいのであればいつでも奴隷からは解放するけどさ。

とはいえ、解放したからといってレンゲを手放す気は毛頭ない。

それにそれは……。

「ちょっとコレン何勝手な事を言ってるんすか? 自分はご主人と離れる気なんて全くないっすよ! 勝手に解放とかやめて欲しいっす!」

って言うんだよな……。

ついでにここに来る前に妹、もとい女王様に会うのだし、奴隷から解放しようか? と聞いたのだが、

『別にいいっすよ。解放されても変わらないっすし。っていうか、皆と一緒の奴隷なのに自分だけ解放されたら仲間はずれじゃないっすか! ぱいの時と一緒で仲間はずれは嫌っす!』

と、言っていたのである。

今のままでも生活に障害がないのはわかるが、仲間はずれが嫌だから奴隷のままがいいってどうなんだ……。

「ですが、お姉様が奴隷だなんて……。しかもこんな男の!」

個人的には男嫌いなのだし、長年レンゲを心配していたこともあり、俺に悪態をつくくらいは軽く流せる大人なので問題ないのだが……。

背後から小さな声で『……こんな?』と聞こえるのがすごく怖いです。

「コレン様諦めなされ。姫様が決めた事ですぞ」

「でも! お姉様が望まぬとも私が、ロウカクの民が望んでいるのです!」

「ですが、姫様の幸せは主殿のもとにあるのです。ロウカクの民も姫様が幸せであるのならば、無理に解放を望まぬでしょう」

「ぐぬぬぬ……。でも、でもぉ……」

「それに、此度の姫様の救援を許可してくださった主殿に感謝の言葉も言わずにその態度はなんですか? そのように無礼な振る舞いをするような教育をした覚えはありませぬが? さあ、主殿に無礼を謝罪なさい」

クドゥロさんの言葉を聞き、ぎりぎりと歯を軋ませながらこちらを睨むコレン様。

や、あの、別に歯を砕きそうなくらい噛み締めるなら、そこまで気にしていないから無理に言わなくてもいいんだけど……。

「ぎぎぎ……。お姉様の純潔を奪った相手に頭を下げねばならないなんて……。そんな事、そんな事私の誇りが許せません! いっそ、女王として全権を行使してでもこの男を亡き者に……ひっ」

「早急に撤回を要求する」

「そうね。早いほうがいいわよ」

「ああ。確か無礼講であったな」

シロが首筋にナイフを当て、ソルテが眼前に槍を突き出し、アイナまでも胴へと剣を構えている。

「レンゲの妹だから、それなりに大目に見ていたけどね。流石に、殺意をこめられてそんな事を言われたら……許せないわね」

「すまんなレンゲ。悪いが、レンゲの妹であろうともこれ以上は斬るぞ」

「……首、チョンパ」

シロは凄いなあ……。

シロはそうするだろうと思ったから警戒し、飛び出さないようにとさりげなく不可視の牢獄で囲っていたのだが、違和感を察されて一瞬で切り裂かれてしまったよ。

で、シロが本気で動いて俺に止められるわけもない。

それにソルテとアイナまで本当に動くとは思わなかった……。

っていうかこれさ、普通に大問題だよね。

「ちょ、三人とも武器を降ろせって!」

いくらなんでも女王様に武器突きつけるとか駄目でしょ。

とはいえ、クドゥロさんは何も言わない。

三人は渋々といった様子で武器を納めるが、その場から動く気配はなく女王様を睨みつけている。

「あーあー……本気でキレてるじゃないっすか……。コレン、謝ったほうがいいっすよ」

「お、お姉様。でもぉ……。……爺どうにか――」

「無理ですな。そのお三方相手では私でも勝てませぬよ。それに、軍が万全であっても敵いますまい。ほっほ。ロウカク滅亡の危機ですな」

「そんな……破砕肉球拳の達人の貴方でもって……」

「っていうかコレン? 自分も怒ってるっすからね? 謝らないなら、もう二度とこの地には来ないっすし、コレンの事なんか大嫌――」

「大変申し訳ございませんでしたぁぁぁぁああああああ!」

「いっすぅぅ……」

レンゲが言い終わるよりも早く、俺の眼前へとDO・GE・ZAで現れるコレン様。

前を抜かれたソルテが二度見するほど驚いていたが、確かに残像が残ってたんじゃないか? ってくらい早かった。

コレン様は華奢でそんなに素早そうには見えないのだが、レンゲの言葉で限界を超えたのか……。

「いや、あのコレン様? 流石に土下座は……」

「様などお付けにならず結構です! 呼び捨てでも雌犬でもなんとでもお好きにお呼びください! 大変申し訳ございませんでした! お許しいただけるのであれば何でもいたします!」

ちょ、女王様がなんでもとか言っちゃだめでしょ!

「いや、こちらも無礼を働いた訳ですし、お互い様という事に……」

「出来ません! 私は貴方に償いをせねばなりません! 男とは下半身に脳があるのでしょう? ならば、脱げというのなら服を脱ぎます! 私の醜態が見たいとおっしゃるのであれば、雌犬のように四つ這いになりお慈悲をいただけるよう乞いますので獣のように致していただいても構いません! なので! 許してくださいお願いしますぅぅぅ!」

……何言ってるの? 何言ってるの!?

いくらレンゲに嫌われるからとはいえそこまでするの?

あと男とはいえ脳は頭にある。クドゥロさんってばちゃんと教えておいてよ!

それでど、どうすればいいの!?

どうしたらこの困った状況を打破できるのかな?

助けてクドゥロさん!

「構わないと言っているのですからお好きに。男嫌いなコレン様は夫を迎える気もありませんでしたからな。するのであれば、孕ませてくださると手間が省けますぞ」

「何言ってるの!? あんた教育係だろうが!」

孕ませるだの手間だのなんて事を言うんだ!

「そうですな。とはいえお世継ぎの問題もありましたからな。お相手が姫様の主殿であれば、経緯はどうあれ問題はないかと。むしろ都合が良いですな」

ほっほっほと愉快そうに笑い髭を撫でるクドゥロさん。

畜生。こうなったら頼りになるのは俺の仲間達しかおるまい!

頼む、助けて!

「ちょっと待って欲しいっす! ご主人の子供は自分が一番先っすよ!」

「レンゲさん? お話し合いで、恨みっこ無しの出来たら順に決まりましたよね? どうして貴方が一番と決まっているのですか?」

「今そういう問題じゃないよね!?」

なんだ? 皆馬鹿なのか? それとも俺だけおかしいのか?

そもそも、こういう罰的に行為をする事自体がおかしいとなぜ思わない?

しかもお相手が女王様だよ? 後々国際問題にもなりかねないとか想像できないのかな!?

「お姉様の子をこの男が……はっ! つまり私が孕めばお姉様の子と同じ血を引く子供がっ! それにお姉様の初めての相手と私の初めての相手が同じというのはお姉様との関係がより濃くなり良いかもしれません……。そうですよね。どうせ子を成さねばならぬのならこれ以上の相手はいないではないですか! さあ! 犯すのならば犯しなさい! 私は一向に構いません!」

「なんでやる気になってるのこの子! もう許して欲しい人の態度じゃないよね!? ああ、こら! 服に手をかけるなっ!」

「ほっほっほっ。では私は厨房に行き晩餐の支度を致しましょう。……2刻程でよろしいですか?」

具体的な事を言うんじゃないよ!

というか、脱がないよう服を押さえているのだけど、女王様らしからぬ凄い力で脱ごうとしてるし!

ふんぬぬぬ……! 他人の目があるとか! 謁見の間だとか気にならないのかこの人は!

「ちょ、コレン様!? いい加減に……!」

「様はいりません! はっ! そうだ。お姉様同様私も貴方の奴隷になるというのはどうでしょう?」

「どうでしょうじゃねえ! 女王だろうがあんたは!」

「大丈夫です! 子が成長し次代の王になるまでは公務を続けねばなりませんが、その後は必ず戻ってきます。そうすればお姉様とずっと一緒にいられますし、お姉様ともども可愛がっていただけるのでしたら、私は一向に構いません!」

構えよ!

女王を奴隷にしました!

って、どの面下げて王国に帰れって言うんだよ!

ミゼラどころか町中の人に呆れられちゃうよ!

……でもおそらくオリゴールやアイリスには、

『ひゅー! 流石お兄ちゃんだ! その股間の聖剣で一体何人落とすつもりだい? 隼人の聖剣もびっくりだね!』

とか、

『お主はもはや二代目絶倫皇とでも名乗り、国を興せば良いのではないか? あ、アイスはわらわに届けられるように頼むぞ』

とか言われるんだろうな……。

そしてついでに、

『節操がないですね。踏み砕きましょうか』

と、アヤメさんに言われる未来まで見えた。

「そうなると姉妹で……新たな武器としてはありっすかね」

「お姉様と一緒に……っ!? お姉様の痴態を……嗚呼、男に貪られ厭らしく涎を垂らしよがるお姉様っ……。くはぁ! たまりません!!」

コレン様の服を脱ごうとする力が強くなった!?

っというか、このままじゃあ高そうなドレスを破りかねない勢いだ!

「レンゲもいい加減引っ掻き回すな! 楽しんでるだろうお前!」

「あ、ばれたっす」

て、てめえ……こっちは割と本気で焦ってるっていうのに!

お前あれだ! あとであのー……きっついお仕置きだからな!

「ほっほっほ。ロウカクの未来も明るいですな! む。シロ殿いかがなされましたか?」

「早急に、迅速に、至急、晩餐の準備を終わらせる事を期待する」

「わ、わかりましたぞ。シロ殿も限界が近そうですしな。なるべく早く終わらせてくるとしましょう!」

「ん。お願い。…………シロにはまだしてくれないのにぽっと出など許さん……」

どうにかシロがクドゥロさんを急かしたおかげでなんとかなったのだが……。

「はあ……はあ……よく見ると素敵に見えてきましたわ。お姉様と間接的にでも厭らしい事が出来ると思えば、嫌いな男でもこうも見方が変わるのですね。うふふふ」

この件以来コレン様の俺を見る目が変わった気がするのはきっと気のせいじゃない。

気をつけねば……。