軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9-14 砂の国ロウカク ロウカク女王コレン様

地竜の討伐も順調に進み、自分達の担当を終えた俺達は首都を目指してゆっくりと進んでいた。

俺の役目と言えばウェンディとデザートパラサウロと一緒に退避して、小さな傷を負ったアイナやソルテ達に回復ポーションを渡したくらいであったが、大きな怪我はなく皆無事に済んでよかったと思う。

おそらく首都ではクドゥロさんが俺らの到着を待ちわびている事だろう。

合流し、レンゲの妹であるコレンちゃ……様に報告し、報酬を貰い、挨拶を済ませた後数日滞在後に帰宅できるかな?

「ん。街が見えた」

「お、ようやくっすね……。ロウカクの首都っすよー」

シロが幌の上から指差したほうを見ると、ここからでも大きいとわかる街が見えてきた。

城壁は他の町と同じで真っ白い壁で出来ており、あの大きな宮殿のようなものがお城だろう。

「……め様ぁぁぁ……」

「ん? 誰かこっちにくるぞ?」

「姫様ぁぁぁぁぁああああああ!」

あ、クドゥロさんだ。

まだ遠いのにとてもよく聞こえる声で叫ぶのはクドゥロさんだとすぐにわかる。

「姫様ぁぁああ! 良くぞご無事で!」

「爺も無事っすね。ちゃんと倒してきたっすよ」

「流石でございます。しかし随分と早かったですな」

「なんか一箇所だけ地竜がいなくなってたんすよね。周囲も探索したんすけど、どこにもいなかったんすよ」

一箇所、というのはカサンドラに教えた場所である。

レンゲ達には伝えていないし、もしカサンドラが訪れていなかったらという可能性もあったので立ち寄ると、かなりの数の地竜がいるはずだったのに、影も形も残っていなかったのだ。

町の人達に話を聞いても、いつの間にかいなくなっていたとの事で、大分時間を短縮する事ができたのだ。

「ふむ……。ではどこか他の場所に移動して討伐したのかもしれませぬな。各町からも地竜の姿は見えないと報告も入っておりますので、もう心配は無いでしょう」

「軍のほうも終わったんすか?」

「ええ。昨日帰って来ましたよ。まったく……数も地域も姫様達よりも少ないというのに、負傷者多数で行動不能とは嘆かわしい……。シロ殿に揉んでいただきたいですな」

「ん。暇だったらいいよ」

「それはそれは! ボッコボコにしてくだされ」

いやあの、そういう事言うとシロは本当にボコボコにするからね?

むふーっと少しやる気になっているのは、地竜に手ごたえが無く、美味しくなかったから……じゃないよな?

「さて、とにかくまずはコレン様へご報告に参りましょう。姫様が来られるという事で豪華な晩餐もご用意する手はずは整っております。ああ、もちろん虫は入っておりませぬのでご安心を」

そいつはまじでありがたい。

流石クドゥロさん、出来る男である。

「晩餐っ!」

ああ、シロの目が輝いている。

そうだよね。地竜が美味しくないとわかってからは見るからにやる気が下がっていたものね。

それでもちゃんと地竜は倒してくれたんだもんな。

「シロ殿は功労者ですからな! お腹いっぱい食べてくだされ!」

おっと、言質を取ってしまった。

これでシロのリミッターは解除されてしまったよ。

どうなっても……知らないぜ?

「ええー……明日じゃ駄目っすか? 今日はゆっくりベッドで休みたいんすけど……」

レンゲの言うとおり出来れば荷台ではないところで警戒の必要も無く、ゆっくりと休んでからというのもとてもわかる。同意する。

だが、シロがガーンと口を開けてショックを受けているので、出来れば晩餐は食べさせてやって欲しい……。

「私としては構わないのですが……おそらく、コレン様が拗ねますな」

「あー……」

「皆様お風呂にも入りたいでしょう。湯の用意も常にしておりますよ。……む? 皆様、とても綺麗ですな……」

まあ、お風呂には毎日入っているからな。

戻る必要も無く、温泉を常に 吸入(インプット) で魔法空間にしまってあるので、 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) で囲って入浴したのである。

戻って……とも考えたのだが、デザートパラサウロを置き去りにしてしまうのはともかく、距離がありすぎるのかMPが一瞬で消えるため、ゲートを開いて通るとそのまま気絶してしまった。

それでも、ミゼラの顔も見れるために無理して戻ろうとしたのだが、

『毎回旦那様が倒れるのを見たくないわよ……。こっちは大丈夫だから、あんまり無理はしないで』

と、逆に心配されて怒られてしまったのでそれからは温泉を 排出(アウトプット) で出して入浴を済ませていたのだ。

「ふむ。これならばすぐにでも向かえますな。では、行きましょうぞ!」

クドゥロさんがデザートパラサウロの前を走り、外壁にいる門番は顔パスで通してもらう。

そのまま大通りを駈け、城壁の門番も顔パスで越えて入城した。

中に入るとデザートパラサウロの荷橇から降ろされた。兵士が乗って首都支店の貸し出し所へと返しに行ってくれるようだ。

さらばデザートパラサウロ……お前との旅は忘れないよ。

別れを惜しむように顔をなでると、気持ちよいのか何度も手に頭をこすり付けてくるデザートパラサウロ。

このひんやりして気持ちのいい手触りを名残惜しく思いつつ、去り際まで何度もこちらを振り向くデザートパラサウロを見送るのだった。

白亜の宮殿に赤いカーペット。

警護の兵が槍を立てて立ち並び、その前には高そうな服を着た男達が並んでいる。

小さな階段を経て、豪華絢爛な椅子に座るのはまだお顔をしっかりと見れてはいないがコレン様だ。

その横にはクドゥロさんが控えており、にこやかにこちらを見ているが、俺の心臓はバクバクである。

そうだよな……レンゲの妹って女王様だもんな……。

こうして偉い人の前に正式に挨拶をするというのは初めての経験なので、思いのほか緊張している。

「面を上げよ」

「はっ!」

会話はすべてレンゲがするらしく、俺らは従うだけでいいらしい。

レンゲの主は俺だが、正直まともに受け答えなど出来るとも思えないので、クドゥロさんの進言もあってその役は辞退させてもらった。

そして顔を上げ、女王でありレンゲの妹であるコレン様を初めてまじまじと見る事になる訳だが……。

いやもう本当にびっくりするほどそっくりだった。

双子……? いや、少しレンゲよりも幼いかな?

そして……。

「綺麗なレンゲだな……」

「「ぶふぅ」」

俺が小さく零してしまった言葉を聞き、シロとソルテが噴き出してしまう。

それに伴い、レンゲがこちらを恨めしく見つめていた。

「此度の地竜討伐の件、盟約による使命も義務も無い中での助力感謝する」

「はっ!」

「軍の働き以上の貢献の報酬は用意してある。それと、ささやかではあるが宴席も用意した。楽しんでいただければと思う」

どうやら俺達の会話は聞かれなかったらしい。

ただ、姉妹だと聞いていたのだがどうにもそう感じさせないほどに淡々としていて冷たい印象を受けた。

「以上だ」

「これにて謁見を終わる。大臣は退席を。兵士もそれに続くが良い」

女王の声を聞き、クドゥロさんが指示を出すと、俺達を残してお偉いさん方や兵士達が謁見の間から去っていく。

あれ? これだけ?

かなりあっさりというか、クドゥロさんから相当心配しているというように聞いていたのだが……。

それに、どうして俺達だけ残したのだろう?

兵士達が退席し、クドゥロさんが最後の一人に続いて扉から外に顔だけを出し、しばらくしてから扉を閉めた。

「……気配も無し。ここからは無礼講で構いませぬぞ」

「ああー……疲れたっす……」

「レンゲ?」

お前なに普通に手を支点にして、だらしなく座りなおしてるの?

まだ女王様の御前だよ?

「ご主人も楽にしていいっすよー。人目もないっすし」

「いや、お前、人目も何も女王様がいるだろうに」

一番大事な相手が目の前にいるのに楽にするって……とか考えていると、ダンッ! と大きな音がしたのでそちらに顔を向けた。

すると、そこにいたのは小さな階段を飛び降りたのか、階段の前で衝撃に屈む女王様が……。

そして、

「お姉様ぁぁぁぁあああああ!」

ずだだだだだだ! と、下品な音を立てて走り寄り、最後は文字通りレンゲへと飛び込んでくる女王コレン様。

えっと……。

「お姉様お姉様お姉様! 怪我はありませんか? 大丈夫ですか? 本当にご迷惑をおかけしました! わが軍が不甲斐ないばかりに、もとい私が不甲斐ないばかりに!」

抱きつき、顔を見て、また抱きついて涙を浮かべるコレン……様。

「あーもー……コレン疲れてるっすから、揺らさないで欲しいっす……」

「申し訳ございませんお姉様!!」

女王様がレンゲに超低姿勢でDO・GE・ZAである。

いいのかこれ……。

「……はあ、はあ、お姉様! 生お姉様! すぅー……はぁ……すぅぅぅぅはぁぁぁぁ……。嗚呼、くりゅ! お姉様スメルが脳に狂ううううう!!」

そしてすぐさま抱きついて頭に、というかレンゲの髪に顔を押し付けて音まで聞こえるように匂いを嗅ぎ、舌を出して大分見せられない顔でぴくぴくと痙攣し出した。

「コレン様は姫様を敬愛しておいでですからな」

「そういうレベルかこれ!?」

「はっはっは。お会いするのもお久しぶりなので、普段以上ですな。流石にこの姿を家臣達に見せるわけにはいかぬでしょう」

……いや、家臣以前に誰にも見せられないと思うよ?

王としての沽券どころか女性として、いやもう人としてって話になるんじゃないかな?

……まあでも、これだけ大好きな姉を心配していたのだからこれくらいは普通……なのか?