作品タイトル不明
白神祭中層⑥
キャラウェイの少し寂しげな表情に、先ほど口にした種族の面汚しという言葉……なぜそう言うことになったのか、説明してくれるキャラウェイの言葉に静かに耳を傾けた。
「先ほど言った通り、キャットレイドは弱い種族です。それなり程度の魔物に遭遇したら壊滅の危機になるぐらいですね。種族だけで生きていくのは難しいので、同じような弱い種族で集まって小さな町のようなものを作り、そこを高位魔族の縄張りにしてもらい、税というか上納金のようなものを収める代わりに守ってもらってるような、そんな感じの種族ですね」
「俺はよく知らないんだけど、そういうのって魔界には結構あるの?」
「割と多いぜ、俺の種族であるオーガみたいに戦闘能力のある種族は同族だけで固まることが多いが、戦闘能力があまりない種族は他の種族と共存する形が多いな」
魔界に住む種族の数は本当に膨大ということなので、当たり前ではあるが中には戦闘が苦手な種族も居る。人界に比べて強力な魔物も多い魔界では、そう言った強者に守ってもらうというのも生きる上で重要な要素なのだろう。
「そんな中でキャットレイドとして初めて、私が爵位級に到達したのは同族たちにとって大きな転機でした。当たり前ですけど、同族である私の庇護下の方が生活が楽になりますし、コミニティの中での種族の地位も上がりますからね。なので私は、種族の英雄って呼ばれてました」
「……」
だけどそれが変わってしまった。その切っ掛けがなにかを知っているだけに俺も少し複雑な思いだ。
「ですが、私は欲に飲まれた結果六王様から警告を受け、立場は完全に失墜してしまいまして、縄張りを持ち続けるだけの権威も無くなってしまいました。完全に自業自得ですけど、それで同族からは種族の恥晒しって呼ばれるようになってしまいましたね」
「そんな、いきなり掌を返すなんてな……」
「どうにも……気に入らないね」
キャラウェイの話を聞いて、アハトとエヴァが不愉快そうな表情を浮かべる。ふたりとも特殊個体ということで同族に迫害され、種族の集まりを飛び出した身としてなにか思うところがあるのだろう。
実際俺も聞いていて、胸糞の悪さは感じていた。利用するだけ利用して、権威を失ったらすぐに切り捨てたように、そう思えてしまったから。
するとキャラウェイは苦笑を浮かべ、首を横に振った。
「……仕方なかったんですよ。同族たちも言いたくて言ったわけじゃないんです。私の権威が失墜したあとは、私の縄張りだった場所は、すぐ近くに縄張りを持っていた爵位級高位魔族が縄張りにしました。縄張りが近かったこともあって、私とはかなり衝突していた相手だったので、その庇護下に入る以上、どうしても周りに同調して私を貶さなければならない場面もあったんですよ」
「……そっか」
「高位魔族の庇護下を外れて生きていけるほど力がない以上、私を切り捨てるしかなかったんです」
同族だけで生きていくことができないから、本心でなくともキャラウェイを貶さなければならなかった。なんとなくやるせないようなそんな気持ちになっていると、キャラウェイが少し慌てた様子で言葉を続けた。
「あっ、誤解しないでください。あくまでそれは一時の話です。いまはもう私の評判も回復してますし、同族たちとも和解してますよ。会いに行った時は泣きながら謝られました」
「そ、そうなんだ。けど、それなら少し安心したよ。あれ? でもそうなると、その同族たちはどうなったの? またキャラウェイの庇護下に入ったのかな?」
なんとなく違うと思いつつ尋ねてみた。いまキャラウェイは俺の家に住んでいるので、魔界に縄張りを持っているという感じではないが、同族たちはそのまま同じ町に住んでいるのだろうか?
「いえ、その一件で私はなんというか、そういうのは向いてないと自覚しまして、権威が回復したといってもいまさら以前と同じ立場に戻る気にもなれませんでした。その際に、あるお方が手を回してくれて、同族たちは現在その方の持つ街で暮らしています」
「あるお方?」
「ええ、『冥王様』です」
「え? クロが?」
意外な名前が出てきて驚愕する俺の前で、キャラウェイは微笑みを浮かべたままで説明を続けてくれた。
「はい。私に警告を与えたのは冥王様ですが、その時点で冥王様は私の権威が失墜することによる影響も考えてくださっていたみたいで、同族たちの住む町に注意を向けていたみたいです。同族たちが不当に迫害されたりすることがあるようなら、介入してくださるつもりだったみたいです。まぁ、流石に私を貶してる程度では介入はできませんが……」
なるほど、たしかにクロはああ見えてかなり頭が切れるというか、俺のピーマンの件もそうだが先手を打って備えていることが多くて、純粋に凄いと思う。
「私の権威が回復したあとに移住の話を持ち掛けてくださって、そのおかげで私も同族の元を訪れやすくなりました。以前のままで頻繁に訪れたりしていては、そこを縄張りにしている高位魔族の面子の問題もありましたからね」
「なるほど……」
「まぁ、元々同族たちが迫害される心配はしていませんでしたよ。私の縄張りに手を伸ばした高位魔族のことはよく知ってましたし……まぁ、嫌な奴ではあります。本当にネチネチと嫌味ったらしい奴ではありますが……理不尽に弱者を迫害するような外道ではありませんからね」
グッと拳を握りながらどこか怒ったような表情で語りつつも、なんだかんだでその高位魔族のことは悪く思っていないのか、表情の割に強い怒りの感情は伝わってこなかった。