作品タイトル不明
白神祭⑨
下層から中層に向かう場所は、以前俺が神界を訪れた時とはまた違った感じだった。あの時は転送装置みたいな感じだったが、いまは透明な巨大エレベーターといった感じだ。
予想ではあるが、これも白神祭に合わせて新設したのだろう。しかし、流石にメインとなる中層への移動場所とあってかなり込み合っている。
中層には入場制限を設けるという話だったし、移動施設の前にはそれなりの行列があった。
ただそれでも、一度に運べる数も相当多いみたいで、何時間待ちとかそんなことにはならさそうだと思いつつ、皆と一緒に列の最後尾に向かう……途中でスッと近づいてきた神族に声をかけられた。
「こちらへどうぞ、専用の転送を用意してあります」
「あっ、はい。ありがとうございます」
そして俺たちは神族……おそらくは下級神と思われる方に案内されて移動する。
「……葵先輩、顔パスです。やっぱり、快人先輩は顔パスでした」
「まぁ、快人さんだからね。さすがに予想通りだからリリアさんも平然としてるわね」
どこかで聞いたような後輩の会話を聞きつつ、チラリとリリアさんに視線を向ける。余裕の表情……葵ちゃんのいう通り、この展開は完全に予想通りというわけだろう。しっかりとした足取りには気品すら感じる。
まぁ、俺もさすがにこうなるであろうことは予想していたし、このあとは中層に行って案内である天空神さんと合流するだけと、そう思いながら専用という建物の中に入った。
「お? カイちゃん一行、いらしゃ~い」
「フェイトさん?」
「やほ~いや、私は基本監修だから暇でさ、カイちゃんたちに中層への転送と渡すものがあってこっちに来たんだ」
建物の中にはフェイトさんがいたというのは、まぁいい。フェイトさんからは今回の祭りはクロノアさんとライフさんが中心で、フェイトさん自身はアドバイザー的な立ち位置だと聞いていたので、俺たちの元に顔を出す余裕があったとしても不思議ではない。
ただ……渡すものってなんだろうか? 記念品とかだとしても、渡すタイミングはいまではないだろうし……なにか、中層に関係するものだろうか?
「渡すものですか? なにか中層に関係するものってことですか?」
「うん。まぁ、凄くザックリ言っちゃうと……特別優待カードってところかな。聞いてると思うけど、中層には入場制限があったり、抽選で当たらないと買えないものがあったりするわけなんだけど、このカードがあれば全部オールオッケーってことだね」
フェイトさんらしいザックリとした説明ではあるが、つまるところVIPカード的なものらしい。たぶんだけど、グロリアスティーとかシャロ―グランデとかの限定品を優先して買えたりするんだろう。
あとは抽選無しで行けるってことは、礼拝とかにも行けるってことかな? まぁ、行く気は無いが……。
他の皆にとっても別に驚くような感じではなく、まぁそうだろうなみたいな表情をしている。リリアさんも全然余裕がある感じで、トーレさんたちと偶然遭遇した時ような慌てた感じはない。
さすがリリアさんもここまで多くの経験を積んできて、心にもゆとりが……。
「……ちょっと待ってね。お~い、リリたん、なに他人事みたいな顔してんの? リリたんにもあるんだよ?」
「え? わ、私ですか!? な、なんで?」
……気のせいだったな。完全に気のせいだった。うん、いつも通りのリリアさんである。
完全に予想外だったのか、慌てふためいて聞き返すリリアさんに対して、フェイトさんはキョトンとした表情で告げる。
「……いや、なんで驚いてるのさ。あたり前じゃん、リリたん……時空神の本祝福受けてるんだよ?」
「……あっ」
「まぁ、気持ちは分かるよカイちゃんが凄すぎて忘れてたんだろうけど、リリたんも神界にとっては相当重要な客だからね」
考えてみれば当然といえる。最高神のひとりであるクロノアさんの本祝福を受けているリリアさんは、間違いなく超VIPだ。
この感じだと、仮に母さんと父さんが来てた場合もフェイトさんの本祝福を受けているのでVIP扱いだっただろう。
……本当にふたりは、別の観光に行っていて正解だったと思う。
「なんかちょっと神様の本祝福って羨ましく思えますね」
「快人さんに頼めば受けられると思うけど?」
「……いや、流石にそういう凄いのじゃなくて、下級神様とかと仲良くなって~ってのをイメージしてますけど」
本祝福に興味ありげな陽菜ちゃんだったが、流石に最高神とかの祝福はちょっと躊躇するらしい。まぁ、葵ちゃんと陽菜ちゃんは、まだ成長期だろうし、不老になる祝福は成長が止まってから行う方がいい気がする。
……あれ? 待てよ。それで気付いたんだけど……俺ってシロさんの祝福の効果で不老になってるわけだけど……これ以上身長が伸びないとか……そんなことはないよね? 可能性は、あるはずだよね?
いや、例えばシロさんとかにお願いすれば1㎝くらい伸ばしてもらえそうな気もするが……それはドーピングみたいなものだし、行う気はない。
自然な成長で伸びることを期待している。きっと、諦めなければ……夢は叶うはずだ。
(人の夢と書いて、儚いと読むらしいですね)
え? もしかして本当にシロさんの祝福を受けてると、身長が成長しないとか?
(いえ、そんな効果はありませんよ)
ですよね! よかった、なら伸びる可能性は……。
(人の夢と書いて、儚いと読むらしいですよ)
……なんで二回言うの? ねぇ、なんで?