軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭⑥

さすがに下層は広く、真っ直ぐ中層を目指していてもそれなりの距離がある。それなりの人数かつ、途中で出店なども見ているので歩みは遅めだ。

とはいえ、別に急いでいるわけでもないのでのんびりワイワイと楽しみながら進んでいく。

初っ端にトーレさんとフォルスさんとふたりの迷子を抱え込んでしまったわけだが、いくら大きなお祭りとはいえ広く人も多い会場でそうそう知り合いと会うこともない。

そりゃ、コレだけの規模の祭りだし知り合いも結構参加してたりはするんだろうけど、すでにふたり会ってるわけだし、そうそう三人目なんて……。

「……いらっしゃいませ。相性占いなら最高なので、お帰り下さい」

「……あ、そうですね。失礼しま――」

「あっ、占いだって! 面白そうだね、私とカイトの相性を占ってもらおう!!」

たまたま視線を向けた出店で、顔見知りの店主が一瞬……ほんの一瞬だけ凄まじく嫌そうな顔をしたあとで、営業スマイルを浮かべて遠回し……いや、割とストレートに「帰れ」と言ってきた。

俺もエリーゼさんの性格はよく分かっているつもりなので、そのまま気付かなかったことにしようと思ったのだが……そのタイミングで飛び出してきたのがトーレさんである。

トーレさんはそのまま驚く俺の手を引っ張って、エリーゼさんの店の前に移動する。

「いらっしゃいませ!」

先ほど一瞬俺に見せた殺意すら感じる顔は幻覚だったのではないかと思えるほど、輝くような笑顔での接客、商売人の凄さを見た気分である。

「私たちの相性占いをお願い」

「2Rになります。はい、たしかに……ではこちらから好きなものを選んでください」

「……なんだろうこれ、ハート? それとも三日月? どちらにせよ大きめなクッキーだけど……」

「フォーチュンクッキーと言いまして、中に相性占いの結果が書かれた紙が入っています。ちょうど真ん中二つに分けれるようになっているので、ふたりで一緒に召し上がってください」

「へぇ、面白そう! じゃあ、カイトが選んでよ」

なるほど、占いの結果が書かれた紙が先に入ってるクッキーか……印象としてはおみくじに近い気がする。

これなら込み合うお祭りでも、一組当たりの時間を少なく捌けるし、日本円で200円ぐらいなら手ごろで手を出しやすい。

クッキーは半透明のビニールっぽい包みで個包装してて衛生面にも配慮している感じだし、その包みにも女性が好きそうな可愛らしい模様が入っていたりと結構細かい。

エリーゼさんは『私の店はそこそこ繁盛してる』と言っていたが、たしかに商売上手な感じがする。

「えっと、じゃあこれを……ここで空けるのは迷惑ですし、戻ってから開けましょう」

「了解だよ、楽しみだね~」

とりあえずエリーゼさんから「さっさとどっか行け」という感情が伝わってきたので、トーレさんと共に出店の前から離れてリリアさんたちの元に戻る。

しかし、エリーゼさんのように輝くような笑顔と伝わってくる感情がまったく違う人も珍しい。あの営業スマイルは鉄壁だと思う。

そんなことを考えつつ、クッキーをふたつに割り、中から取り出した紙をトーレさんに手渡す。これ、どうやって中に入れてるんだろう?

入れてから焼いてるのか、焼いてから入れてくっつけてるのか……よく分からないけど、なんか面白い。

「あっ、見て見てカイト、相性は最高だって! やっぱりそうだよ、運命だよ! というわけで、式場探しに行く?」

「行きません」

「おかしいなぁ、当たる占い屋だと思ったのに……」

「というか、その紙に『強引に行くのは悪手、時間をかけて絆を育みましょう』って書いてますよ」

「……ほんとだ。控えめにいかないといけないんだね。じゃあ、とりあえず恋人からってことで」

「いやいや、初手から高速すぎますって! そこはとりあえずお友達からでしょ?」

「ふむ、まぁ、カイトがそう言うならお姉ちゃんが譲歩するよ。しょうがないなぁ、カイトったら初心なんだから」

「いやいや、なにしれっと俺のワガママみたいな流れにしてるんですか」

油断も隙も無い……まぁ、トーレさんはからかうような表情なので分かった上で、俺とのやり取りを楽しんでいるのだろう。

まぁ、正直こういうやり取りも結構楽しい。

「ともかく、寄り道してすみません……行きましょうか」

そうして、俺たちは再び中層を目指して歩き出す……筈だったのだが、陽菜ちゃんや葵ちゃんが女の子らしく占いが好きということで、ふたりを連れて再びエリーゼさんの店に戻ることになった。

ふたりがやったのは普通の占いで、あとは一緒に売られていたアクセサリーをひとつずつ購入していた。

それはまったく問題なかったのだが、店の前にいる間ずっとエリーゼさんから「またお前か」みたいな感情をぶつけられていたので、俺の方はちょっと困ってしまっていた。

表情は本当に滅茶苦茶笑顔で、口調も明るく丁重だったのだが……ただ、まぁ、最後におまけということで俺にミサンガのようなアクセサリーをくれたので、怒ってたりというわけではなさそうだった。