軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

宮間快人の長い一日⑥

突発的に始まったエデンさんと一緒にあちこちを巡る散策……すでに開始から数時間経過しているが、まさかこんなに続くとは思っていなかった。

絶対に途中で暴走してお開きになると、そう思っていたのだが……エデンさんはいまだに暴走せずに持ちこたえている。

いや、途中なんか明らかに駄目だと思った時に、奇妙な反応によってフェイズ0に戻るという不思議な事態が発生してはいるが……それでもここまで持ったのは快挙と言っていいだろう。

おかげであちこち回ることができた。最初の無人島、静かな海辺、小高い丘などを回り、現在は夕暮れの見える湖畔に来ていた。

正直回った場所に関しては文句はない。静かで落ち着ける雰囲気の場所が多かったし、普通に訪れればリラックスもできたのではないだろうか……隣にいつ爆発するか分からない爆弾が無ければ……。

「……どうですか、我が子?」

「ええ、少し物寂しさも感じますが、いい景色ですね。水面に反射する夕日が、いい雰囲気です」

少し前に非情に珍しい……というか初めての表情、怯えた顔で飛び跳ねたあとフェイズ0に戻っているエデンさんの言葉に感想を伝える。

「……それならばよかった。我が子は最近、疲れているようでしたからね」

「え?」

「新しい出会いというのは、それなりに疲労が溜まるものです。本人が気付いているかどうかは別として、少しでも落ち着けたのなら、誘ったかいもあるというものです」

「……ありがとうございます」

たしかに、ここのところ新しい出会いが多くて少し気疲れしていたというのはある。エデンさんはどうやらそれを察して、気分転換のために誘ってくれたみたいだ。

……なるほど、そう言われてみれば、明らかに人がいない場所ばかりのチョイスにも納得できる。その気持ちは素直に嬉しい……ので、余計なツッコミはやめて感謝の言葉を返すことにした。

そのあと少しの間沈黙が訪れ、少し間を開けてから俺はエデンさんに問いかけた。

「……エデンさん、少しいいですか?」

「なんでしょう?」

「エデンさんは縁日に参加したことがあるって言ってましたけど、そういう話って……他にも話してくれたりしますか?」

「……ふむ、我が子は私の過去に興味があるのですか?」

「そうですね。いや、なんとなく、それなりに話してるはずなのにエデンさんのことって、あんまり知らないなぁって……」

なんだかんだで週5レベルで会話しているにもかかわらず、あまりエデンさん自身のことは知らない。縁日の件もそうだが、以前ハンバーガーを好むと言っていたみたいに、意外な嗜好もあるだろう。

なんとなく、そういう話を聞いてみたいと思って問いかけると、エデンさんは少し沈黙したまま夕日を見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「……私は、かつて……遠い昔に『人間から神に成った存在』です」

「……は? え? えぇぇぇ!?」

ポツリと告げられた言葉は、今日一番の驚愕の内容だった。エ、エデンさんが元人間? あまりにも意外過ぎて、思考が追い付かない。

だけど、嘘や冗談という雰囲気ではない。だとすると、本当にエデンさんは……元は人間だった?

「我が子が住んでいた地球、その地球のある太陽系、その太陽系を含む我が子たちが天の川銀河と呼ぶ銀河は……かつて私が住んでいた世界を模して作ったものです。それほど手を加えたわけではありませんが、不思議なもので……いまの地球は、かつて私が生きた地球によく似ています」

「……」

「縁日に行ったのは、その世界での話ですね」

驚きの話の連続になんと言葉を返していいか分からず、呆然とエデンさんの横顔を見ると……エデンさんはそこか過去を懐かしむような、それでいてなんだか優し気な表情を浮かべていた。

「……私が神となって現在まで、我が子に分かりやすい単位で語れば、200億年を超える時間が流れています。あくまで私のいた空間での話ですので、我が子が生きた世界自体は時間の流れを変化させたこともあるので、造ってからもっと遥かに多くの年月が流れていますがね」

「なるほど……正直200億年前とか言われると、人間である俺には想像も及ばぬほど昔ですけど……エデンさんは、その時のことをしっかり覚えてるんですね」

「ええ、どれだけの年月を過ごそうとも、あの世界で……ひとりの親友と過ごした十年の記憶が色あせたことはありません」

「ひとりの、親友?」

穏やかに告げたエデンさんの言葉に聞き返すと、エデンさんは暗くなり始めた空を見上げながら呟くように告げた。

「……場所を変えてもよろしいですか?」

「え? ええ」

「最初の無人島に移動しましょう。あの時のことを語るなら、あそこがいいです。転移で移動して……語り終わるころには……『星も見えることでしょうから』」

そう語るエデンさんの表情は、ひどく優し気で……漠然とではあるが、その親友のことを本当に大切に思っているのが伝わってきた。