軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドラゴンカーニバル⑩

ドラゴンたちの交流会に混ざった俺とリリアさんは、まず最初に今回の戦いで優勝したガンロックドラゴンの元へ行ってみた。

正直優勝者ともなれば、他の竜に囲まれていて話すのは難しいかなと思ったのだが……俺とリリアさんが訪れると、まるでモーゼの十戒で海が割れるかの如く集まっていた竜たちが道を開けてくれた。

……感応魔法からは、周囲の竜たちがかなり緊張している様子が伝わってきた。そう、なんというか物凄いVIPが来たというような雰囲気である。

いや、なんかアリスの話だと、マグナウェルさんは竜種たちに俺に対して敬意を持って接するように的な命令を出してるらしいし、そもそも王たるマグナウェルさんの知り合いという時点でVIPなのは間違いない。

ともあれそんな逆にこっちが恐縮してしまいそうな空気を感じつつ、ガンロックドラゴンの元に行き挨拶をすると……滅茶苦茶喜ばれた。

他の竜たちとは微妙に違う反応に戸惑いつつ話を聞くと……。

『……私が今回優勝できたのは、ミヤマカイト様のおかげといっても過言ではありません』

「……へ?」

完全に過言だと思う、だって試合が全部終わるまでガンロックドラゴンと会話なんてしていないわけだし、なんらかのアドバイスをしたわけでもない。

『我々ガンロックドラゴンは、本来竜種の中で比較すると弱い方でして、このドラゴンカーニバルにおいて同族が優勝したことはありません。ですが、私は以前六王祭の折、ミヤマカイト様より大変な勇気をいただきました』

「俺から、勇気を?」

『はい! 戦王様との勝負の際、あまり人気が高いとは言えない我らをモデルに選んでくださったこと……そしてなにより、我らの可能性を広げるようなアレンジを加えてくださったこと、深く感謝しております』

「……」

そっか、あの芸術対決を見ていたのか……そっかぁ……犬作ろうとして失敗したことは、墓までもっていくことにしよう。あの作品は、ガンロックドラゴン、翼持つガンロックドラゴンだ。

『我らは翼持たず、飛ぶことはできない種です……いえ、飛ぶことはできないと思い込んでいました! ですが、ミヤマカイト様の作品を見て、私は自らの可能性を狭めていたと痛感いたしました。この背に翼はなくとも、心には翼を持ち、まだ見ぬ可能性に向かって羽ばたく勇気をもらい、己を鍛えなおしましたおかげで今回素晴らしき栄誉を賜ることができました!』

「……そ、そうでしたか……そ、その、お役に立てたようなら、よかったです」

なんだこの、いたたまれない気持ち、尊敬MAXみたいな目を向けられてるんだけど……あの作品作った段階では、俺ガンロックドラゴンのガの字も知らなかったんだけど……。

なんかいい話の雰囲気に、リリアさんも感動したように目にハンカチを当ててるし、周囲の竜たちも感動しているみたいだった……ひとり真実を知る俺だけ、どうにも微妙な心境である。

そんなことを考えていると、ふとあることを思いついたのて、マジックボックスから悲しきクリーチャー……もとい翼持つガンロックドラゴンを取り出す。

「あの、もしよかったら、優勝のお祝いということで……差し上げましょうか?」

『よろしいのですか!?』

「え、ええ、もちろん」

『ありがとうございます! 同族たちにもこの作品を是非見せたいと思っていたのです!!』

滅茶苦茶喜んでる……うん、まぁ、俺のマジックボックスに永眠してるよりは、喜ぶ相手に渡したほうがこの作品にとってもいいだろう。

犬の失敗作の時は黒歴史だったが……まぁ、ガンロックドラゴンと思えば、見られて恥ずかしいどころかえらいクオリティだし……。

凄まじく恐縮した様子で、まるで王から褒美でも貰うかのように恭しく作品を受け取ったガンロックドラゴンに、とりあえずもう一声だけかけておく。

「……えっと、その……これからも、頑張ってください」

『はい! ミヤマカイト様の激励を胸に、ガンロックドラゴンとして初めての爵位級を目指して精進します!』

俺は、世の中には必要な嘘もあるんじゃないかって、そう思うんだ。少なくともあの作品の真実を話したところで、誰一人幸せにはならず、むしろ不幸にしてしまう。

つまり、繰り返しになるが……あの作品はガンロックドラゴンだ、誰が何と言おうとガンロックドラゴンである。

……なんだろう、まだ交流は始まったばかりなのに、いきなり物凄く疲れたような気がする……。

まぁ、とりあえず……さらば、悲しきクリーチャーもといガンロックドラゴン、新天地で頑張ってくれ……。