軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドラゴンカーニバル④

フレアさんの背に乗って少し飛ぶと、すぐに会場となる地は見えてきた。というよりも、空を舞う数多のドラゴンが見えたという方が正しいだろう。

よく見れば地上にも相当の数が居て、ひらけた荒野とポツポツと岩山がある広大な土地に、大小さまざまなドラゴンが集結している。

「……す、すごい数ですね」

「ええ、しかも種類も凄いです。ドレッドテールにハイメタルドラゴン、滅多にお目にかかれない高位竜種も沢山……感動です!」

リリアさんが滅茶苦茶嬉しそうというか、山のような宝石でも見ているかの如く目を輝かせている。俺にはあまりドラゴンの種類は分からないので、なんかいろいろな種類が居るなぁ程度の印象ではある。

……あっ、知ってるドラゴン居た。アレはガンロックドラゴンだ……うん、こうしてみると、マジで俺の作った悲しいクリーチャーそっくりの見た目というか、メギドさんたちが勘違いした気持ちもわかるほど似てる。

あの悲しいクリーチャーの作品名はもう、メギドさんの言う通りに翼の生えたガンロックドラゴンってことでいいんじゃないかな……。

そんなことを考えていると、フレアさんが高度を下げ荒野の一角に着地したので、俺とリリアさんは背中から降りる。するとフレアさんは再び、人化の魔法を使って人の姿になる。

俺には竜の状態でも言葉が通じるが、リリアさんには通じないのでその配慮だろう。

「ふむ……他の四大魔竜は……まだファフニルしか来てないようだな。少し早く着きすぎたか」

フレアさんの言葉を聞いて周囲を見渡すが、たしかにそれらしい姿はない。エインガナさんもグランディレアスさんも1kmを越える巨体なので、居ればすぐにわかるはずだ。

周囲にはかなり大きなドラゴンも見えたが、さすがに1kmというほどのサイズのドラゴンは見えたらない。

ついでにまだマグナウェルさんも着ていないようだが、これは仕方ない。というのも、実は俺たちは開始の時間よりかなり早くこの場に来ている。

その目的は、ドラゴンカーニバルが始まる前にエインガナさんとグランディレアスさんへの挨拶を済ませてしまうためだ。

ただそのふたりもまだ来ていなかったのは、少々誤算ではあったが……。

「だが、おそらくすぐに来るであろう。どちらもマグナウェル様より後に来るような不敬はせんだろうし、部隊の参加者へ一声かける必要もあるであろうし、早めには来るはずだ」

「はい。特に焦ってないので、都合がつかなければ終わったあとでも大丈夫です」

「うむ……ではすまぬが、 戦友(とも) 、リリア公爵、エインガナとグランディレアスが来るまでに、少し紅蓮の牙の面々のところによって構わんか? 我も、参加する若手に一声かけておきたいのでな」

「あ、はい。大丈夫です」

「私も問題ありません」

そう言うことになり、フレアさんと一緒に紅蓮の牙の隊員が集まっている場所へ歩いて移動する。その道中にも様々なドラゴンが居るのを眺めつつ、俺はふと気になったことを尋ねてみることにした。

「……フレアさん、マグナウェルさんの配下って全員竜種なんですか?」

「いや、そんなことはない。竜種以外も存在している……だが、割合で言えばやはり圧倒的に竜種が多いな。全体の6~7割ほどは竜種かそれに準ずる者だ」

「ふむふむ」

「…… 戦友(とも) の尋ねたいことはなんとなくわかる。竜種以外の配下はどうしているのか、という話だが……これは日程を分けているだけだ。ドラゴンカーニバルは竜種に限定した催しだが、竜種以外の若手もマグナウェル様の前で実力を披露する機会は用意されている」

まぁ、たしかにそれが必然だろう。竜種のみそういうチャンスがあるというのでは、不満が出そうだし。

「ちなみに、若手を引率している分隊長の中にも竜種でない者もいるぞ……丁度噂をすれば」

フレアさんのその言葉を聞いて、視線を動かすと前方に虎の獣人っぽい女性の姿があった。先ほどの話から察するに、分隊長のひとりなのだろう。

虎の獣人は俺たち……というよりはフレアさんの姿を見て、ビシッと90度の礼をした。

「姐さん! お疲れ様です!!」

「ああ、問題はないか?」

「はい!」

「そうか、では悪いが、隊員を集めてくれるか? 本番前に一声かけておきたくてな」

「分かりました!」

……声がとても大きい。なんとなく熱血っぽい感じがする。

「全員集合!!」

虎の獣人がそう告げると、空を飛んでいたドラゴンたちや様々な場所に居たドラゴンが凄いスピードで集合し、体のサイズ順に一糸乱れぬ統率された動きで整列した。

相当訓練されてる軍隊みたいだ……いや? ポジション的に軍隊みたいなものなのか?

「姐さんからの言葉がある! 心して聞くように!!」

そう告げたあと虎の獣人は一礼してフレアさんに場を譲り、フレアさんが一歩前に出て静かに告げる。

「……皆、よい表情をしている。今回が初参加の者もいれば、年齢的に最後の参加の者も居るだろう。だが、ここに至っていまさら心構えなどを説くつもりはない」

それは決して大きな声ではなかったが、ずっしりと重く感じるような声でピリッとした緊張が伝わってきた。

「平和となった昨今、貴公らにとっては貴重な実戦に近い戦いを経験できる機会だ。よい結果が出るに越したことはないが……別に模擬戦に敗北してもかまわない。それは決して恥ではなく、経験だ。敗北することは恥ではないが、経験から学ばぬことは恥だ。故に我からひとつ課題を出そう。このドラゴンカーニバルで、なにかしら、どんな形でもいい、今後の己の成長の糧となるものをひとつは学んでこい」

非常に重みのある言葉でそう告げたあと、フレアさんはフッと微笑みを浮かべる。

「その課題を胸に宿したならば、あとは我がなにを言うか、想像もついているであろう。我は貴公らに常に挑戦者たれと言い続けてきた。それを覚えているのなら、これ以上我から言うことはない……魂を燃やして、全霊で挑戦してこい!」

フレアさんが言葉を締めくくると、ドラゴンたちは大地を揺らすほどに咆哮する。フレアさんの激励により気合はバッチリと入ったみたいで、凄まじい熱気を感じる。

そんな中で、虎の獣人がパンッと一度手を叩いて告げる。

「姐さんの言葉は心に刻んだな? では、各自準備に取り掛かれ、準備が不十分で実力を出し切れずに負けるのはこれ以上ない屈辱だ。そうならないように、しっかりと心も体も本番までに研ぎ澄ませ! では、解散!」

虎の獣人の言葉を聞いて散開するドラゴンたちを見て楽しげに笑ったあと、フレアさんは軽く手招きして虎の獣人を呼ぶ。

「……他の分隊長にも伝えておいてくれ。熱く心が燃えるのはいいことだが、気合が空回りしてしまうケースもある。肩に力が入り過ぎている者が居たなら、それとなく声をかけてやってくれ。それは、我よりも直接指導を行っている貴公ら分隊長が適任だ」

「はっ!」

「頼んだぞ」

頭を下げる虎の獣人の肩を軽く叩きながら微笑むフレアさんの姿は、なんだがとても大きく見えた。

ああして、フォローを頼むことで若手のケアだけでなく分隊長の顔も立てているのだろう。というか、行動や言動がやっぱり大変カッコいい。