作品タイトル不明
六王幹部に会おう・七姫編①
神界での戦いでお世話になった方へのお礼を兼ねての六王幹部への挨拶回り……初めに回った十魔が濃すぎたせいで、次に回る気になるまで少し時間がかかってしまった。
改めて残す挨拶の対象は、界王幹部七姫が五人、四大魔竜が二体である。やはりここは数が多い七姫からにしようと考え、リリウッドさんに事情を説明して七姫に紹介してもらえないかを尋ねてみた。
パンドラさんと回った十魔が特殊なだけで、基本的に多忙な六王幹部相手なので、俺の方が相手の都合のいい日に合わせると伝えておいた。
それから数日経って、リリウッドさんから幹部のひとりの予定が空いている日を教えてもらって訪ねることになった。
生憎とリリウッドさんはどうしても仕事関係で手が離せないらしく、その幹部の居る場所を教えてくれたので直接そちらを尋ねる形になった。
今回訪ねる幹部は、七姫のリーダーでもある『魔華姫リーリエ』さんという方で、界王配下筆頭……つまり、パンドラさんやファフニルさんやアグニさんのように配下のまとめ役でもある方とのことだ。
リーリエさんに関しては、今日は一日ずっとユグフレシスからほど近い森の広場で瞑想しているらしく、話は事前に通してあるので好きな時間に訪ねて構わないと言われた。
転移魔法でユグフレシスを訪れ、さてこれから教えられた場所に向かうぞとそう思った瞬間――景色が一変した。
「……は? え?」
そこは、暖かな光の差し込む『森の中』であり、立っていた俺はいつのまにか木でできた椅子に座っていた。
突然の状況に混乱していると、不意に真横から鈴の鳴るような綺麗な声が聞こえてきた。
「こんばんは、ミヤマカイトさん。突然のご挨拶、申し訳ありません」
「……え? あ、貴女は?」
その声に導かれるように振り向くと、いつの間にか俺の隣には思わず息をのむような美女が座っていた。
日差しを受けて煌めく金色の長い髪、閉じられたままの目、頭の両側には赤い大きな花が咲いており、服装はどこかリリウッドさんに似ているようなデザインだった。
身長は百六十㎝くらいだろうか? バランスよく整ったプロポーションに、優し気な印象を受ける美しい顔立ち……まるでどこかのお姫様のようにさえ思えた。
「初めまして、私の名は『リーリエ』恐れ多くも、界王配下筆頭の地位と魔華姫の通り名をいただいております」
「え? あ、貴女が……あっ、初めまして、宮間快人です」
「ご丁寧にありがとうございます。私のことは好きに呼んでくださって構いません。今日いらっしゃるとはリリウッド様より聞いていまして、貴方らしき魔力を感じたので直接会う前に挨拶だけでもしておこうと、そう思いまして」
そう言って目を閉じたまま話すリーリエさんだが、俺の頭には新たな疑問が生まれていた。
リーリエさんはいま『直接会う前』に挨拶だけでもしておこうと、そう口にした。しかし現にこうしていまリーリエさんは俺の目の前に居るわけで、なんだか矛盾しているような気がする。
さらに言えば街中にいたはずの俺が、なぜ突然森の中でベンチに座っているのかもわからない。
「なるほど、もっともな疑問ですね。申し訳ありません、先にそちらを説明するべきでした」
「……へ?」
「まず現在の私たちの状態ですが、私たちはいま『魔力で会話』を行っています。互いに相手の魔力を感知することで会話が成り立っています。そうですね、夢の中で会話をしているとでも考えていただいても大丈夫です。私の姿は私の本体のそのものですが……貴方がいま見ている景色は、貴方が私の魔力を感知して思い描いた私のイメージが反映されているのでしょう」
リーリエさんが俺の疑問について説明をしてくれている……してくれているのだが、俺まだ何も言ってないよね? もしかして、リーリエさんもシロさんみたいに心が読めるのかな?
「正確には魔力から貴方の表層意識を読み取っているだけです。貴方が普段他者の感情を感知しているのと原理は同じですね。それより深く読んでいるだけです」
「え? ということは……リーリエさんも感応魔法が使えるんですか?」
「いえ、たしかに私と貴方の力は似ている部分が多いといえますが、少々違いがあります。私はただ魔力の感知能力が人一倍優れているだけです。私には貴方のように魔力に適応する能力はありません……いえ、少なくとも私が知る限り貴方ほどの能力を持つ者は過去にもいませんでした。その感応魔法は貴方の才……貴方だけの特別な力、なのかもしれませんね」
そう言ってリーリエさんは穏やかな微笑みを浮かべる。なんというか、こうして少し話しただけでもリーリエさんが凄く優しい方だというのは理解できた。
ただひとつ不思議なのは、先ほどからリーリエさんが目を閉じたままという点だ。アレはなにか理由があるんだろうか?
「理由というほどのものはありませんよ。単純に生まれつき私は『盲目』なので閉じています。開くこともできますが、見て気分のいいものでもないでしょうしね」
「あっ、す、すみません!」
「いえ、お気になさらず。私は魔界の光の届かない洞窟の奥深くにのみ生息する『魔導華』という花の精霊です。なので、おそらく私が盲目なのは元となった魔導華が原因でしょうからね。それに、目が見えないとはいえ、私には他者より優れた感知魔法があります。空気中の微弱な魔力も感知しているので、正直なところほとんど見えているのと変わりませんよ」
なるほど、元々光の届かない場所に咲く花から生まれたからこそ、その特性として目が光を映さないようになっているのかな?
リーリエさんは盲目であることを気にしている様子はないし、相手の表層意識を読み取れるほどの感知能力があれば、本当に目が見えるのと変わらないのだろう。
「……と、これ以上はここで話すより、直接会ってお話しましょうか」
「あ、はい」
「私の魔力で誘導しますので、それに従ってくださればすぐにつきますよ」
そうリーリエさんが口にした瞬間、景色が再び切り替わり俺は最初に転送したユグフレシスの街中に立っていた。咄嗟に時計を確認してみたが……結構話していたはずなのに、一分も経っていない。
なんとも不思議な経験をしたと思っていると、ふとなにかに導かれているような感覚がした。これが、リーリエさんが言っていた魔力の誘導か……う~ん、俺の感応魔法に似た力を持っているらしいが、リーリエさんは応用的なこともたくさんできそうな感じだ。
機会があれば、そういう応用技的なものを聞いてみるのもいいかもしれない。