軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3の名を持つ太陽④

VRゲームでの対戦は中々に盛り上がり、なんどかコースを変えて行った。

「ふぅ、白熱したいい戦いだね!」

「……よく、全レース最下位でそんなことが言えますね。まぁ、最後の方は惜しかったですけど」

十回ぐらいプレイしてトーレさんは全部最下位だったのだが、本人は楽しげである。トーレさんの腕前は良くも悪くも普通といった感じで、プレイするたびに順調に上手くはなっていたので、もう何戦かしたなら最下位を脱出できるかもしれない。

「……シエン、これってよくできた遊びだよね」

「うん。『かなり遅いスピード』だから、どうしても感覚がズレちゃうから難しいね」

「タイミングがなかなか……」

チェントさんとシエンさんも楽しんでいるようで、微笑みながら会話をしていた。

「……ねぇ、カイト、ふたりともあんなこと言ってる」

「俺たちとは見えてる世界が違うんですよ……」

「世界って、不公平だよね」

「ですね」

かなりの速度が出ているレースゲームでも、伯爵級のふたりにとってはむしろ遅すぎてコントロールが難しいというスペック差である。

ただ、面白いことに早いと感じるスピードの中で車をコントロールする俺と、遅いと感じるスピードの中でコントロールするふたり、噛み合っていい感じに勝負できてしまうので、確かによくできたゲームだと思う。

ちなみに、トーレさんは……完全にこっち側である。テニスの時からもしかしたらと思っていたのだが、どうもトーレさんの身体能力は俺と同レベルで間違いないみたいで、戦闘力は皆無らしい。

そこでふと、トーレさんが俺の方を見てなにやらグッとサムズアップした。

「……ちなみに言っとくね! 私は、カイトぐらいの年齢の時からサッパリ戦闘力変わってないから、後の成長とかに期待しても無駄だよと言っておこう!」

「ナチュラルに俺の未来への希望を叩き潰すはやめてください」

「私、よく比較対象であげられるのスライムだよ?」

「……滅茶苦茶親近感ありますね。俺もよくスライムを比較対象にされます」

なお、スライムは人を襲うことはなく無害であり、餌も水だけでいいのでペットとして飼ってる人もそこそこいるらしい。

無害なので、冒険者や騎士団の駆除対象にもなってないので、街の外に行くとたまに跳ねているのを見かけたりする。

ベルの散歩のときに見かけることが多いので、ベルに怯えて逃げてしまうため、あまり近くで見たことはないのだけど……。

そんなことを考えていると、トーレさんがチラリとこちらを見て、なにやら胸を張りながら自慢げに告げる。

「ただ、単純に同じと思ってもらっちゃ困るな。たしかに、私はよくスライムを比較対象にされるけど、私だって長い年月を生きた魔族! 私の戦闘力は『スライム4匹分』に相当するよ! ふふふ、同じスライム比較でも、ランクが違うのだよ、ランクが!」

「甘いですね、トーレさん……俺にはオートカウンターとオートパイロットという戦闘向けの魔法があります。オートカウンターの方はほぼ自爆技なので除外するとして、オートパイロットの方、コレを使うことで俺の戦闘力は……『ゴブリン2匹分』にまで高められるんですよ」

「なっ!?」

俺の言葉を聞いたトーレさんは、大袈裟すぎるぐらいに驚いて後ずさる。

「ゴ、ゴブリン2匹分だって……そそ、そんなのチートじゃないか!? ゆ、友好条約違反だよ!」

「残念ですね、俺は異世界人なんです」

「ちくしょうっ! 条約適応対象外だった!!」

う~ん、このノリの良さ……トーレさんはこちらのささいなボケにも全力で乗っかってくれるので、話していてかなり楽しい。

ちなみにいま例に挙げたゴブリンだが……これも、スライムと並んで最弱候補である。

とにかく臆病みたいで、自分より体の大きい相手からは即逃げであり、人間の子供を見ても全力で逃げる。よっぽど追い詰めて逃げ場が無くならない限り、他の生物を襲ったりしないらしい。

俺のイメージとはだいぶ異なるが、なんと草食らしく、こちらも基本無害なので討伐対象ではないとのことだ。

「ぐ、ぐぬぬ……ま、まだだよ! 私にも他の人にはできないオンリーワンな魔法があるんだ!」

「そうなんですか?」

「うん、私は対象に触れることで、内部の比率を変えることができる魔法が使えるんだよ」

「そ、それはなんか強そうですね。たとえば人に触れたら、体内の水分とかの比率を変えたりしちゃうわけですか」

「そう言うことだね! 『生物には使えない』のと『対象の大きさでかかる時間が伸びる』という、ささいな欠点はあるけどね!!」

「……逆にその魔法、なんに使うんですか?」

「カフェオレ飲みながら、ミルクとコーヒーの割合を変えられる」

ミルク足せばいいのでは? ああいや、ミルクの割合を減らすこともできるのか……なんで、この人はその魔法でここまで自信満々の笑みを浮かべられるのだろうか?

なんか当初より、トーレさんという人物をだいぶ好きになってきた気がする。