軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リスティア・アスモデウス⑥

リスティさんとの会話は非常に穏やかに進んでいく。なんなら、ここまで会った十魔の中で一番話しやすい相手とすら感じるほどだった。

というのも最初に凄い洞察力だと感じたのは間違いではなく、リスティさんは相手の感情の機微に物凄く鋭く、それこそリスティさんも感応魔法が使えるのではないかと感じるほどだ。

そして本人も得意分野だと語っていたが、話し上手かつ聞き上手で自然と話が盛り上がった。

そしてしばらく雑談を続けていると、ふとリスティさんがなにかを思い出したような表情を浮かべた。

「……そういえば、挨拶する十魔ってあと誰が残ってるの?」

「えっと、フェニックスさんとティアマトさんという方ですね」

「よりにもよってそのふたりなのね。いや、まぁ、序列順に挨拶って言うなら最終的にそのふたりが残るのは必然だけど……本当に、大変ね」

「……そんなに酷いんですか?」

なんとなくそんな気はしていた。アリスがクソ鳥、クソ蛇という単語を口にしていたが、それに当てはまる十魔とはいまのところ会っておらず、残るふたりがそうである可能性は高いと思っていた。

しかし、リスティさんの心底憐れむような表情を見ると……そんなに酷いのかと言いようのない不安が湧いて出てきた。

「十魔は基本的にどいつもこいつも頭のおかしい変態ばかりよ。一応性格はマトモな副リーダーも、ミイラみたいに全身包帯でぐるぐる巻きにしてるしね。クリスちゃん……私以外の十魔とは関わっちゃだめよ? 完全に悪影響しか及ぼさない、害しかない連中だから」

「……まぁ、普通はその性質上、皇帝であっても十魔の方々とお会いする機会は無いですよ。勇者祭などで機会があるのはパンドラ様ぐらいです」

なんというか、酷い言いようである。害しかないとまで言い切った際の表情を見る限り、心底そう思っているらしい。

そして副リーダーというのは、会う機会のなかったパンデモニウムさんのことだろう。包帯で全身ぐるぐる巻き? ミイラ『みたい』ってことは、種族的な特徴とかでもないんだろう……う~ん、その方も濃そうである。

「ともかく、十魔ってのはロクでもない奴らばかりなんだけど……十魔で一番の問題児は誰かって話になると、ほぼフェニックスかティアマトの名前が挙がるわ。というか、能力加味してもそれ以外の問題が酷いから、序列も下なわけだしね。正直、会わないことを勧めるわ」

「な、なるほど……とはいえ、ここまで挨拶してきたので、そのふたりだけ省くというわけにもいきませんので……なにか、会うにあたっての注意とかってあります?」

「とりあえず、同じ日にふたりと会うのは止めておきなさい、精神が持たないかもしれないわ。ひとりずつ二日に分けて会う方がいいわね。フェニックスの方は、高確率で序盤は舐め腐った態度だから……可能なら『出会い頭に一発殺しておく』方がいいわね。そうすれば、ある程度従順になるとは思うわよ」

……俺いま、挨拶についてのアドバイス貰ってるんだよね? 初手で可能なら殺せとか、俺の常識には存在しない挨拶方法なんだけど……。

「いろいろ突っ込みたいところはありますが……そもそも殺すの事態が無理だと思います」

「そうよね……う~ん、なんかないかしら? こう、『猛烈な痛み』を与えるような武器とか魔法具とか」

「猛烈な痛み? ……無いことも無いですけど、コレは本当に凄まじく痛いみたいなので、お礼言う相手に使うのは……」

猛烈な痛みと聞いて思い浮かぶのは、シロさんに貰ったピコピコハンマーである。これは、対象のあらゆる防御を貫通し、痛覚の存在しない相手にすら強制的に痛覚を付与し、肉体に一切のダメージを与えることなく猛烈な痛みのみを与えるお仕置きグッズである。

その威力たるや、アリスやフェイトさんといった世界トップレベルでも悶絶するほど……あまりにも危険なので、貰ったはいいがまったく使っていない。

「いや、それ使いなさい」

「……え?」

「フェニックスは自分を殺すことができない相手は、全力で見下してるから初手でやりなさい。そうじゃないと、パンドラ様がキレて、即座に挨拶が強制終了になるわよ」

「本当にどういう方なんですか、そのフェニックスさんって……」

ちょっと情報に頭が追い付かない。滅茶苦茶真剣な顔で言ってることは、リスティさん的には本気のアドバイスである。本心から初手で猛烈な痛みを与えろと、そう言ってるみたいだ。

「次にティアマトね。アイツは基本頭が逝っちゃってるから、言ってることを素直に聞いちゃ駄目よ。精神的に疲弊するだけだから、基本ほぼすべて聞き流しときなさい。意思疎通しようなんて思わないこと……というか、耳栓して会ったほうがいいわね」

「……」

……十魔も残りふたりだっていうのに、なんか……不安しかない。