作品タイトル不明
天空を舞う花①
グラトニーさん、アスタロトさん、ニアさんの三人の幻王幹部と知り合った翌日、俺はのんびりと街中を歩いていた。
十魔への挨拶の残りはリリムさん、フェニックスさん、ティアマトさんの三人であり、最初のリリムさんに関してクリスさんの都合を確認中なので今日は一旦小休止といった感じだ。
ちなみに今回の件はちゃんとリリアさんにも話を通している。あとから六王幹部全員紹介してもらいましたなんて言ってしまうと、絶対に怒られるのでちゃんと先に言っておいた。
リリアさんはなにやら遠い目をしていたが「……まぁ、それでも事前に誰と知り合うかというのが分かっているだけ、私の胃には優しいですね」と少し安堵した表情を浮かべていた。
とりあえず今回三人に会ってみて、手土産に関して少し調整した方がいいと思った。今回は幸い問題なかったが、飲食をしない方もいるのではないかと思い、菓子折以外も用意しておこうと考えた。
何種類か用意しておいて、事前に紹介を受ける前に相手のことを聞いてどれを渡すか考えることにしよう。
とまぁ、そんなわけで買い物に出かけていたわけだが、別にそれほど時間がかかるわけでもなくサクッと買い物は終わり、その後は軽く周囲を散策していた。
もうシンフォニア王都で一年以上過ごしているとはいえ、それでも言ったことのない場所は多い。例えばいつも行く通りから少し道を外れてみるだけで、見覚えのない景色になる。
のんびりといったことが無い道を通って歩いていると、小さな公園を見つけた。本当に小さく、ベンチなどが置いているわけでもない……公園というより、空き地といったほうがしっくりきそうだが、入り口らしき場所に公園と書かれている。
周囲には人影もなく、なんというか街中の穴場のような場所に辿り着いたような、そんな不思議な気分を味わいつつ、なんの気なしに公園に入ると、目に映った光景に思わず言葉を失った。
それは……美しい踊りだった。公園の中心で透き通るような綺麗な空色の髪の女性が、優雅に舞っていた。
水着の上にシースルーの布をかぶせたかのような、いわゆる踊り子らしい服に身を包んだ150㎝後半程の女性は、こちらには気づいていないのか、気付いてもあえて踊りに集中しているのか、軽やかなステップで踊り続ける。
服のあちこちに付けられた小さな鈴のようなものが、女性が舞うたびに綺麗な音を鳴らし、降り注ぐ日の光がアクセサリーなどに反射して、キラキラと輝いているように見えた。
俺はお世辞にも踊りに詳しいとは言えないが、それでも女性の踊りが素晴らしいものだというのは理解できた。思わず見とれてしまうような、きわどい衣装で踊る姿に邪な感情が湧くこともなく、ただただ美しいと、そんな風に感じる。
音楽もなく、ただの公園のはずなのに、まるで立派なステージの上でスポットライトに照らされて踊っているかのような、人の目をくぎ付けにする魅力がそこにはあった。
俺はそのまましばらく女性の踊りを見続け、その踊りが終わったであろうタイミングで思わず拍手をした。
「……?」
「あっ、す、すみません。まるで空を舞ってるみたいな綺麗な踊りだったので思わず……」
拍手の音に気付いてこちらを見た女性は、髪の色よりは深い色合いのマリンブルーの瞳で俺を見たあと不思議そうに首を傾げが、その後の俺の言葉を聞いてクスリと小さく微笑んだ。
「感謝……つまりは、素敵な賞賛ありがとう」
「あ、いえ……」
「疑問……つまりは、だけど不思議なことがある。結界を通過……つまりは、公園には結界を張っていたのに、どうやって入ってきたの?」
「結界?」
「気付いていない……つまりは、知らずに結界を通過してきた? 独特の魔力……つまりは、異世界人のような魔力を感じる。候補がひとつ……その条件から考えるに、貴方が誰か心当たりがある」
なんというか、独特の喋り方をする女性だ。そして、シロさんほどではないがあまり表情が変化しない、少しクールな印象を受ける。
「結論……つまりは、貴方はミヤマカイトで間違いない?」
「その通りですが……どうして俺の名を?」
「噂を聞いた……つまりは、貴方の話を聞いたことがある。情報源は複数……つまりは、いろいろなところから聞いたけど、一番よく聞いたのは友人から。初代妖精王……つまりは、大本はラズリアという妖精からの情報」
「え? ラズさんのお知り合いなんですか?」
「直接では無い……つまりは、私はラズリアとは知り合い程度で、それほど話すわけじゃない。友人の友人……つまりは、私の友達の妖精がラズリアと仲がいいから、その友達から話を聞いたことがある」
「な、なるほど……」
ラズさんの友達の、そのまた友達ということみたいだ。ラズさんの交友関係は滅茶苦茶広そうだし、聞いてみればなるほどと納得できる。
「それじゃあ、ご存知かもしれませんが俺は宮間快人といいます。えっと、差し支えなければ貴女のお名前をお伺いしても?」
「驚愕……つまりは、とても驚いた。名前を聞かれた……つまりは、これが噂の『プロポーズ』?」
「………………はい?」
いまこの人なんていった? 完全におかしな言葉が聞こえたような……。