作品タイトル不明
六王幹部に会おう・十魔編⑪
自己紹介を終えたあとはニアさんが用意してくれた席で、お茶をいただきながらの雑談となった。グラトニーさん、アスタロトさんと短時間で回ってきたので、もう結構お腹はいっぱいである。
なお出された紅茶はごくごく普通のものだったが……茶請けは普通では無かった。マシュマロのような菓子や軽くつまめる軽食っぽいものなど、種類はかなり多かったが……なぜかすべて『串に刺さっていた』。
どんだけ串刺しが好きなんだ、この人……。
「……まぁ、これぐらいなら許容範囲内か」
パンドラさんも呆れた表情を浮かべていたが、それでも見た目がグロいものとかは無いので特にニアさんを注意したりとかはしていない。
俺的にも問題ないというか、何気に串にさしてあるので食べやすさはある。
「本当はもっといろいろな品を用意したかったのですが……」
「えっと、その、ずいぶんお好きなんですね」
「ええ、串刺しは一見単純なように見えて、前後左右のバランスなど繊細な配分を行うべき個所もある高度な芸術です。角度も重要で……」
「待て、モロク。お前のその話は確実に長くなるから止めろ」
「……ミヤマカイト様にも、串刺しの素晴らしさを知っていただきたかったのですが……残念です」
できれば串刺しの素晴らしさとやらは一生知らないままでいたいかな……まぁ、それでもちゃんと注意すれば止めてくれるあたり、エデンさんに比べればマシな気がする。
あの方を比較対象にするのは、なにか間違ってる気もするが……。
「そ、そういえば、違ったらすみません。モロクさんの種族って、悪魔とかデーモンとか、そんな感じのやつでしょうか?」
「ご慧眼、お見事でございます」
いや、慧眼というか……まんま見た目が悪魔というか……。
「私は悪魔族のまとめ役でもあり、 悪魔公(デーモンロード) とも呼ばれております」
「人族の中にはインキュバス、サキュバスも悪魔族だと誤解している者もいますが、そちらは淫魔族という別種族になり、トップも別に存在します」
モロクさんの言葉にパンドラさんが捕捉を加えてくれる。たしかに、インキュバスとかサキュバスも悪魔みたいなイメージがちょっとある。
ああ、そういえば確かクリスさんの母親がサキュバスだって手紙に書いてあった覚えがある。
そんなことを考えていると、パンドラさんがさらに追加で説明の言葉を口に知る。
「ちなみに先に申し上げた通り、その淫魔族のトップは、モロクのあとで尋ねる予定のリリムです」
「……パンドラ様。このあとに、リリムところに行くのですか? しかし、ミヤマカイト様は男性ですよ? あの俗物と関わらせるべきではないのでは?」
「私もそう思ったが、シャルティア様は大丈夫だと仰られていた」
「……そうですか、シャルティア様が仰るのでしたら」
そういえば、最初に説明を受けた時もパンドラさんはリリムさんと俺を会わせることを躊躇している感じだった。
しかし、リリムさんが淫魔のトップでありサキュバスというなら、なんとなく納得はできる。イメージとしては魅了とかそんな力を使いそうな気がするが、そういう状態異常の類はシロさんの祝福が防いでくれるはずだ。
「ああ、そういえばミヤマ様……シャルティア様からの指示で、リリムに関しては私ではなく別の者が取り次ぐ形になります」
「え? そうなんですか?」
「はい。リリムの血縁者がミヤマ様とお知り合いなので、そちらから紹介を受けたほうがいいだろうとのことです」
「俺と、知り合い?」
パンドラさんの言葉に少し考える。俺の知り合いの血縁者……それって、ついさっき思い浮かべた人じゃないだろうか?
それ以外だと全く心当たりがないし、可能性は十分にあり得ると思う。
「……それって、もしかしてクリスさんですか?」
「はい、その通りです。リリムはアルクレシア帝国現皇帝、クリス・ディア・アルクレシアの母親にあたります」
どうやら予想は正解だったようで、手紙で知ったクリスさんの母親が十魔のひとりであるリリムさんだったらしい。
なんというか、世界は狭いな……ただ、う~ん、クリスさんに紹介してもらうとなるとさすがにこの後すぐにというよりは、日を改めた方がよさそうな気がする。
パンドラさんは俺の予定で問題ないとか言いそうだし、仮に急に訪ねたとしてもなんだかんだで優しいクリスさんは時間を作ってくれそうだが、さすがにそれは申し訳なさ過ぎる。
「なるほど、それでしたらあまりに強行軍で訪ねるのも疲れてしまうので、後日改めて訪ねてみることにします」
とりあえず俺が疲れるので別の日にという提案をしておいた。まぁ、今日あった三人がすでに濃いので結構疲れたというのも本当である。
そんな俺の言葉を聞いて、目を輝かせたのがニアさんだった。
「ミヤマカイト様! もし、お時間があるようでしたら私のコレクションを見ていきませんか? 選りすぐりの芸術品を取り揃えております!」
「……やめろ、モロク。お前の言う選りすぐりの芸術品とやらは、串刺しにした生物だろうが……」
「絶妙な角度で串刺しにして、千年ほど生きたままで微かに動いている生物取り揃えていますよ?」
「ソレをミヤマ様に見せるな。いいな、絶対にだぞ!」
「……そ、そんな……自信作なのですが……」
なんだろう、俺はいまだかつてここまでパンドラさんを頼りになると感じたことは無い。というか、不思議とパンドラさんが常識人に見える……実際はかなりヤバい人だけど……。