軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

恋人たちとの海水浴③

ラグナさんから海水浴の話を聞いて、ちょうど十日後、無事に恋人たち全員の予定も合い招待されたハイドラ王国のビーチへとやってきた。

シロさんが人界に行くということで、やはり神界は中々の騒ぎ……特にクロノアさんとライフさんが付いていくと言ってきかなかったのだが、そこはシロさんが説得してくれ、神族の方々はラグナさんが手配したハイドラ王国の人たちと一緒にビーチに他の人が近づかないように見張る形で落ち着いたみたいだ。

今回は王国側の招待ということで馬車で現地まで送ってもらったのだが、目的のビーチから数キロ離れた地点は……戦争でも起るのかというレベルで厳重な警備だった。

おかげでビーチ含め周囲数キロは完全な貸し切り状態であり、世界的に有名なシロさんやクロも周りを気にせずに楽しめそうなのはありがたい限りである。

現地に着いて馬車から降りて見ると、なるほどラグナさんが自信を持って勧めるだけあって本当に見事な光景が広がっていた。

透き通るようなオーシャンブルーに、映画とかでしか見たことがないような白い砂浜。景観を損なわないように計算されて建てられた海水浴用の施設など、思わず「おぉ~」と声が出てしまう。

そしてさっそく着替えて海へ……と行きたいところだが、先にやらなければならないことがある。そう、フェイトさんから提案を貰ったグループ分けについてだ。

そう思っていると同じ事を考えていたのか、アリスに次いでその件について伝えてあるクロが明るい表情浮かべながら手を叩いた。

「はい、注目~。無事に海に到着したわけだけど、ここでフェイトちゃんとカイトくんからの提案について、皆も少しは聞いてると思うけど、ボクから詳しく説明するね」

こういう時に仕切ってくれるクロの存在は頼りになる。俺だとどう説明するべきかアタフタしてしまいそうだし、本当に助かる。

「まぁ簡単に説明しちゃうと、ずっと全員で固まって行動するわけにもいかないから、『二人一組』を四つ作って、それぞれで遊ぼうって感じだね。あっ、もちろん全員で遊べるものは全員で遊ぶから、それ以外に関してだよ。カイトくんには自由にそれぞれのコンビのところを回ってもらって、一緒に遊んでもらう形になるね」

そうフェイトさんが提案してくれた方法とは、八人の恋人たちを二人一組に分け、コンビの形で行動してもらうこと……そして一人余る形になる俺は、あちこちのコンビのところを回りながら遊ぶという形だ。

これなら、いままであまり話す機会の無かった相手と親睦を深めることもできるし、俺としても順に回ることで偏ることなく皆と遊ぶことができるというわけだ。

「まぁ、必ずしもコンビでしか行動しちゃいけないわけじゃなくて、コンビ同士が集まって四人で遊んだりだりとか、その辺は臨機応変に行こうね。それで、肝心のコンビ決めなんだけど……カイトくんにくじを引いてもらって、ソレを決める。あっ、分かってるとは思うけど、確率操作とかは禁止だよ?」

そしてその肝心のコンビ分けについてだが、フェイトさんが提案してくれたのは俺がくじを引いてペアを決めるというものだった。

というのも、俺にはシロさんの祝福のおかげで運に大幅な補正がかかっている。だから俺が『普段はあまり関わりのない人たちに仲良くなってもらいたい』と考えながらくじを引けば、おのずといい感じの組み合わせになるだろうと、そういうことだ。

「まぁ、さっきも言ったけどあくまで楽しむための一要素だからね。あまり拘り過ぎず、ペアになった相手と仲良くしよ~ぐらいの感覚で大丈夫だよ。質問とかはないかな? ……うん、じゃあ、カイトくん、よろしく~」

「了解」

クロの説明が終わり、特に皆も異論はないようだった。そしてクロが事前に用意したくじを差し出してくれたので、俺はフェイトさんに言われた通りのことを考えながらくじを引く。

そして、今日一日の海水浴でのコンビ四組が……決定した。

空に浮かぶクッションに寝転がったまま、フェイトは自分のコンビとなった相手を見ながら呟いた。

「……あぁ、なるほど、こういうパターンもあるかぁ。そういえば、あんま話したことなかったよね?」

「……うん……よろしく……フェイト」

リリアかジークリンデ、あるいはアニマとコンビになると予想していたフェイトだったが、コンビになった相手はアイシスだった。

ただ、考えてみれば確かにフェイトとアイシスの間にあまり接点はなく、昔から互いのことを知っているわりには会話した回数は少なかった。

「うん、よろしく~。けどふたりで遊ぶって言っても、なにしよっか? 私、あんまり海での遊びとか詳しくないんだけど……」

「……えっと……綺麗な貝殻を……探す……とか?」

「え? なにそれ、そんなことしてなんか意味あるの?」

「……ご、ごめん」

「あ、いや、うそうそ! 冗談だよ!! だからお願い、そんな泣きそうな顔しないで!?」

思わず素で返してしまったフェイトだったが、直後にアイシスがシュンとした表情に分かるのを見て、大慌てでフォローを始めた。

「えっと、死王……いや、アイちゃんって呼ぶね! いいね、貝殻探し、楽しそうだよ! アイちゃん、私とどっちがいいの見つけられるか勝負しよう!」

「……あっ……うん!」

「……困った。この子もしかしたら、時空神よりやりにくい相手かもしんない……けど、自分で言い出したことなんだし、面倒だとか言ってられない。頑張れ私……」

性格的には対照的ともいえるコンビではあったが、フェイトの方に仲良くしようという意思があり、なおかつ死の魔力に関しても問題ないので、なんだかんだでうまく行きそうなコンビではあった。

「あはは、アイシスさんは純粋ですし、私やフェイトさんみたいなひねくれ者にはやりにくい相手かもしれませんねぇ……まぁ、私もあんま笑ってられないんですけど……」

フェイトとアイシスのコンビを見て苦笑を浮かべていたアリスだが、そのあとで軽く溜息を吐きつつ、自分のコンビとなった相手に視線を向ける。

するとその相手は、綺麗な動きで敬礼をした。

「アリス殿! 今日一日、よろしくお願いします! 自分はこういった遊びには不慣れなので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご指導ご鞭撻をお願いします!!」

「……はいきましたよ。迂闊にふざけると、あとでカイトさんにどちゃくそ怒られる相手……」

そう、アリスのコンビはアニマである。そしてアリスも知っていることではあるが、アニマはアリスに憧れに近い尊敬の念を持っており、いまもキラキラとした目でアリスを見ている。

なおかつ再三に渡ってカイトからアニマの夢を壊さないようにと言われているので、いつもの調子でふざけることができない。

「う、ううん…‥まぁ、よろしくお願いしますよ」

「はい!」

フェイトと同じく、自分も苦労しそうだと感じながらアリスはアニマに見えないように、もう一度軽く溜息を吐いた。

いつもとは違う組み合わせにやや戸惑う二組を尻目に、穏やかな空気で挨拶をするコンビもあった。

「そういえば、こうしてジークちゃんとゆっくり話すのは初めてかもしれないね」

「はい。よろしくお願いします、冥王様」

「クロムって呼んでくれればいいし、そんなに硬くならなくて大丈夫だよ。今日は遊びに来たんだしね」

「わかりました。では、クロム様とお呼びさせていただきますね」

「うん! 今日は楽しもうね~」

クロムエイナとジークリンデのコンビは、いままで話す機会こそ多くなかったものの、社交的なクロムエイナの性格も相まって穏やかに笑顔を浮かべ合っていた。

そのまま少し話したあと、クロムエイナは表情を変えつつ視線を動かしてジークリンデに問いかけた。

「……ところで、ジークちゃん。ひとつ聞いてもいいかな?」

「……はい、なんでしょうか?」

クロムエイナと同じように視線を動かしつつ、ジークリンデも表情を微妙な……憐れむようなものに変える。

ふたりの視線が向く先には、最後の一組の姿がある。

「……リリアちゃんって、なんでいっつも一番大変なところを引き当てるのかな? ボクが気付かないだけで、実は未知の呪いとかにかかってる?」

「……アレばっかりは私にもさっぱり……なぜかあの子は、昔から苦労をブラックホールのように引き寄せるんですよ」

そう、フェイトとアイシス、アリスとアニマ、そしてジークリンデとクロムエイナがコンビであるならば……残る一組は必然的に……。

「よろしくお願いします」

「ひゃ、ひゃい!? こ、ここ、こちりゃここ、こそ……」

『シャローヴァナルとリリア』のコンビである。淡々と挨拶をするシャローヴァナルに対し、リリアは明らかにいっぱいいっぱいで、いまにも気絶しそうな青ざめた顔で言葉を返していた。