軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

恋人たちとの海水浴②

シロさんに話をしたあとは、せっかく神界にきたのだからとフェイトさんの神殿を訪れ、フェイトさんの予定を確認することにした。

脱走していて神殿に居ない可能性もあったが、幸いフェイトさんは神殿に居て海水浴の話をするとかなり乗り気な感じだった。

そのまま詳しい日程はまた後程と告げて話は終わりかと思ったが、そのタイミングでフェイトさんがなにやら真剣な表情で口を開いた。

「……えっとさ、カイちゃん。ちょっと、その海水浴に関してお願いというか、提案があるんだけど……大丈夫かな?」

「え? あ、はい。なんでしょう?」

フェイトさんにしては珍しく言い淀むというか、言葉を選んでいるような感じで、時折不安げな表情に変わりながらフェイトさんはお願いを口にした。

「……できればで構わないんだけど、その海水浴の時にさ……『いままであんまり話す機会のなかった相手』と話す機会を作れないかなって、思うんだ」

「あまり話す機会のなかった相手、ですか?」

「うん。ほら、私ってシャルたんとはソウルフレンドだし、シャローヴァナル様は神族の頂点なわけだから接する機会も多い。あとはギリ、神界によく来る冥王ともそれなりに話す機会があるかな? けど、他の人……たとえばリリたんとかジクりんとかとは、あんま話す機会がないじゃん。だからその、海水浴の時にでも親睦を深められたらなぁって……」

「……フェイトさん」

「いや、ほら、なんていうか……私も最近、精神的にそこそこ成長できたかなぁなんて思ってるわけで、そのカイちゃんの周りにいる人たちとも仲良くなれたらいいなぁとか思ってるんだよ。けど、カイちゃんの両親の時でもそこそこ時間かかっちゃったし、いきなり交友の幅を広げ過ぎても上手くいかないと思うんだ。それで、身近なところからって、そんな風に考えたんだけどね」

それは意外な言葉であり、同時にどうしようもなく嬉しい言葉でもあった。俺も大切な恋人たちにはできれば仲良くあって欲しい。もちろん性格的な相性だってあるだろうから、全員が全員とはいかないかもしれないけど、皆が仲良くなってくれたら嬉しい。

そしてなにより、その言葉がフェイトさんから出たというのが、以前の両親との顔合わせの時からの成長を強く感じられて、なんだか誇らしくもあった。

「でさ、考えたんだ。恋人8人とカイちゃん、合わせて9人……全員がまとめて遊ぶ方法って、やっぱり限られてくるし、まとめて遊ぶとき以外にはある程度グループで別れる感じになるよね?」

「そうですね。一日ずっと全員で行動ってわけにはいかないでしょうし、そうなると思います」

「うん。それで提案なんだけど、その時のグループを……普段とは違う組み合わせにできないかなって思うんだ」

「……なるほど」

フェイトさんの言わんとすることは理解できた。たしかに各々に任せてバラけたとしたら、ある程度組み合わせは固定になってしまうだろう。

その組み合わせを変化させることで、普段はあまり話す機会がない相手と親睦を深められるようにするって感じかな。

「一応方法も考えてるんだ。えっとね、カイちゃんが――」

フェイトさんはメンバーの割り振り方法も考えてくれているみたいで、その方法についても詳しく説明してくれた。

それは実現も難しくなく、俺のことも他の恋人のこともしっかりと考えられている方法で、思わず感心してしまった。

「……すごくいい方法ですね。俺も大賛成です。じゃあ、フェイトさんが提案してくれた方法で用意してみることにしますね」

「ありがと、助かるよ」

「いえ、俺の方こそいい提案をありがとうございます。それになんだか、フェイトさんがいろいろ真剣に考えてくれたのが伝わってきて、なんだかすごく嬉しいです」

「……あ、あはは、ま、まぁ、私も日々成長してるってことで……な、なんか変に恥ずかしいね!? じゃ、じゃあ、とにかくそんな感じで、よろしく!」

気恥ずかしかったのか顔を赤くしつつ、少し焦ったように頬をかいたあと、フェイトさんは話を切り上げるように告げた。

その可愛らしい姿を微笑ましく感じつつ、俺はもう一度お礼を言ってから神殿をあとにした。

フェイトさんの神殿からの帰り道、俺は背後にいるであろうアリスに向かって声をかける。

「……フェイトさんの提案、アリスはどう思った?」

「いい案だと思いますよ。というかたぶん咄嗟に思いついたとかじゃなくって、前々から考えてて、ちょうどいい機会だからって提案したんでしょうね」

「なるほど」

「いやはや、シャローヴァナル様もフェイトさんも精神面での成長速度がすごいですね。どっちも長いこと変化がなかったからこそ、切っ掛けを得て大きく躍進してるのかもしれません……私も見習わないと、ですね」

たぶん照れるだろうからあえて口には出さないが、それはアリスも同じなんだと思う。なんというか、気のせいではなくアリスは以前より雰囲気が柔らかくなってると思う。

前々から明るい性格ではあったと思うけど、それでも時折感じる冷たさというか鋭さのようなものがあった彼女だが、最近はそんな雰囲気を感じることも少なくなった。

なんて言えばいいのは、前は周囲には明るく振舞っても内面はずっと張りつめていたのが落ち着いてきているというか、そんな感じだ。

フェイトさんの提案をいい案だと言う辺り、アリスとしても他の恋人たちと親睦を深めることには賛成みたいだし、そういうのは本当に嬉しく思う。

「……なんでしょうね? カイトさんの視線が優しみに溢れてて、ムズムズするんですけど……話し変えてもいいですか? というか、ちょっと愚痴ってもいいですか?」

「別にいいけど、なんか珍しいな」

「いや、最近私の知り合いが、肝心なところでうっかりやらかして……くっそ面倒くさいヘコみ方してるんですけど、どう慰めたらいいと思います?」

「……イリスさん?」

「いえ、カイトさんは……まぁ、直接会ったことはない友人で、なんていうか威厳とか見栄えとか気にするわりに、ちょくちょくうっかりやらかす……ポンコツです」

「……ポンコツってお前…‥」

「あとやたら胸の大きさでマウント取ろうとしてくるんですけど、ぶん殴っていいっすかね? そもそもたかがBカップで……」

そのまま俺はよく分からないまま、アリスがポンコツと呼ぶ友人の愚痴を聞かされることになった。ただ、話している時のアリスはなんだか楽しんでいるように感じられた。

う~ん、俺が会ったことがない友人っていう話だけど、どんな人なんだろう? 話を聞く限り、なんか面白そうな方ではあるが……。