軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アニマと釣りに行こう⑥

アニマと並んでの入浴、なぜこうなったと思う部分はあるが……それ以上に、いままさにテンパりかけてるアニマをなんとかしなければいけないだろう。

しかし、ここでひとつ問題がある。アニマの質問は「ここからどうすればいいのか?」というものだが、果たして混浴とはなにをすればいいかという疑問に対して、俺の中に明確な答えが存在しているのだろうか?

ここは温泉ではない。となれば景色を見るというわけにもいかないし、お酒を飲むというのも少し変な気がする。体を洗う……まぁ、この場合では背中を流すと言った方が正しいが、それもなんというか自ら墓穴を掘るようなものである。

であればどうするか……いや、というか、これ、このままふたりでのんびり雑談でもしながら入浴する以外の選択肢なくないかな?

「……えっと、アニマ。そう深く考える必要はないよ。のんびりと、雑談でもしてれば大丈夫だから」

「な、なるほど……」

「うん……」

「はい……」

あっ、これお互いとも会話しなくちゃって意識しちゃって、逆に言葉が無くなるパターンだ。う、う~ん、アニマは初めての混浴なわけだし、ここはある程度経験豊富な俺がリードするべきだろう。

……自分で考えててあれだけど、混浴経験豊富なのはそれはそれで妙な言い回しのような気がする。

「……えっと、アニマ。今日はありがとう、アニマがいろいろ教えてくれたおかげで楽しく釣りができたよ」

「い、いえ、ご主人様のお役に立てたのなら、これ以上の幸福はありません!」

「まぁ、食用の魚は全然釣れなかったけどね」

「……確率的に言えば凄いことなのですが、なかなかどうして希少な結果が最善とは言えないのも難しいものですね」

俺から話しかけたことで、少しずつ緊張に傾いていたアニマの落ち着きが戻ってきたように感じる。実際アニマはしっかりした子だし、冷静になれさえすればそれほど心配もないだろう。

少なくともこれで、緊張のあまりパニックになどという展開にはならないはずだ。

「けど、魚自体は沢山釣れたし、アニマのおかげで食事も美味しく食べれたから……アニマとの恋人になって初めてのデートとしては、かなり上出来だったと思うよ」

「はい!」

アニマは俺の言葉を聞いて嬉しそうな笑顔を浮かべる。普段被っている帽子が無い分、熊の耳がピクピクと動いてるのが見えて、なんだか可愛らしい。

っとそこで、ふと前々から思っていた疑問が口からこぼれた。

「そういえば、アニマって元ブラックベアーだけどさ、その時の名残は耳だけなのかな?」

「え? あ、いえ、他にもあります。普段は衣類で見えにくいですが……」

「……え? ちょっ!?」

好奇心からの俺の質問に対し、アニマは突如湯船から立ち上がり俺に背を向けたあと……お尻付近のタオルを持ち上げた。えぇぇぇぇ!?

「このように、尻尾も残っています」

タオルに隠れていた『丸い尻尾』が見えたのはいい……しかし、状況を改めて考えてみよう。俺は湯船に浸かっている……つまり座っている状態だ。そしてアニマは俺に見えやすいようにと立ち上がっている。

するとどうなるか……見えてしまうのは尻尾だけではないわけだ。湯に浸かったことで少し上気した、しかして驚くほど白く張りのあるお尻が、ほぼ眼前に晒されるということだ。

「ア、アニマ!?」

「普段はそれほど邪魔になるわけでもないので、ズボンの中にしまっているのですが……」

「そうじゃなくて! 早くタオルを下ろして!! 湯船に浸かって!?」

「え? あ、はい。かしこまりました」

どうもアニマにとっては無意識というか、あくまで俺の質問に分かりやすく答えただけという認識らしく、状況がいまいちわかっていない感じだった。

それでも慌てた俺の言葉を聞いて、すぐにそれに従って風呂に浸かりなおしてくれたが……残念ながらこちらは平静ではない。不意打ちが過ぎたこともあって、バッチリと目に焼き付いてしまった。しばらくアニマの顔はマトモに見れないかもしれない。

「……ご主人様?」

「あ、いや、えっと……その、俺の質問が悪かったとは思うけど、そういうのはあんま気軽にしないように……心臓に悪いから」

「そういうの、ですか? 自分はただご主人様に……ご主人様に……ごしゅ――ッ!?!?」

「アニマ!?」

どうもようやくアニマも先ほどの自分がどういう状態だったのかに思い至ったらしく、突如分かりやすいほど顔が真っ赤に変わった。目も泳ぎまくっており、傍目に見ても大混乱という感じだ。

「あわわわ、も、もも、申し訳、ああ、ありません!? お、おお、お見苦しい、も、もも、ものを、お見せしてしまって!?」

「アニマ、落ち着け! とりあえず、深呼吸を……」

「で、でで、ですが、その、じ、じじ、自分は! い、いつなりと、ご主人様に、ここ、この身を捧げる覚悟はできておりますでりますれば!! ここ、恋人同士てあれば、いい、いずれそういうことに、なっちゃったりしたりしませんでありますることも……」

「本当に落ち着け! もう、なに言ってるか分からなくなってるから!?」

アニマの顔は傍目に見ても心配になるぐらい赤くなっており、目はぐるぐると回っていて、口調ももはやなにが言いたいのかよく分からない。ただ、テンパりまくってることだけは伝わってきた。

「つつつ、つまり――きゅぅ」

「アニマぁぁ!?」

そしてついに混乱は臨界点に達したらしく体から力が抜けて、アニマは湯船に沈んでいった。俺は慌ててアニマを引き上げ、驚くほど軽いその体を抱えて湯船から出ることになった。

なんだろう、本当になんというか……やっぱり俺は、風呂場に呪われているのかもしれない。