軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

従者と食べる夜食①

アイシスさんとイリスさんの模擬戦が終わり、イリスさんはアイシスさんの配下になった。そしてそれに伴い、イリスさんは住居もアイシスさんの城へと移すらしい。

ただ、一度請け負った仕事を途中で投げ出す気はないと、俺の家にあるバーの経営は引き続き行うと宣言、アイシスさんもソレを了承した。

変更点としては、イリスさんが分体を作る魔法を覚えるまでは、夜のみの営業となるみたいだ。

「えっと、その、なんて言ったらいいか……よかったですね、アイシスさん」

「……うん……すごく……すごく……嬉しい……全部……カイトの……おかげ」

「い、いや、今回別に俺はなにも……」

本当に嬉しそうな笑顔で語るアイシスさんは大変可愛らしかったが、今回の件に関してはアリスの発案だし、配下になったのもイリスさんの意思なわけだから、俺がなにかをしたというわけではない。

「いや、ところが……あながち間違いでもねぇんすよね」

「へ?」

そんなことを考えていると、アリスがアイシスさんの言葉を肯定するように口を開いた。

「これはあくまで私の考えですけど、いままでアイシスさんに配下ができなかったのは……アイシスさんが『一番欲しいものを手に入れられてないのに、他に目を向けられるほど器用じゃなかった』からだと思ってます。私やクロさんみたいに欲しいものがありつつも、並行して他のことを~ってのができなかったわけですよ」

「……うん……シャルティアの……いう通りだと……思う」

「そこにカイトさんが、アイシスさんにとって一番欲しかった存在が現れた。おかげで、アイシスさんは他のことにも目を向けられるだけの心の余裕ができて、ソレがいい結果につながったわけです。というかもっと極端な話をすれば、カイトさんが居なければイリスはいまこうして存在していなかったかもしれないわけですし、カイトさんのおかげというのも実際その通りだと思いますよ」

「……カイトは……すごい」

な、なんというか絶賛である。ちょっと恥ずかしくなってきた。アイシスさんはキラキラとした目でこっちを見ているし、アリスの表情も優し気な微笑みである。

「ま、まぁ、ともかく、アイシスさんにとってもイリスさんにとってもいい結果に繋がったみたいで、よかったです」

「うむ、我も感謝している。お前のおかげでアリスも……おっと、そういえば我はアイシス様の配下になったのだった。であれば、同じ六王にも敬意を払うのが必然……敬語でお話しましょうか、アリス様?」

「うぇぇぇぇ、気持ち悪っ!? マジやめてください、吐きそうです」

「おや? 大丈夫ですか、アリス様? 体調がすぐれないようでしたら……」

「やめろぉぉぉぉ!?」

からかうように敬語でイリスさんが話すと、効果は絶大だったようでアリスは本当に気持ち悪そうに青ざめた顔で叫んだ。

「ふ、ははは、冗談だ」

「……性格の悪い貧乳ですね」

「貴様とて似たようなものであろうが!!」

「残念でした、このアリスちゃんアイによると、私の方が上ですね!」

「完全に貴様の主観ではないか!?」

イリスさんの方も本当にただの冗談だったみたいで、すぐにいつもの調子に戻ってアリスと言い争いを始めた。

そのなんとも仲良さげな光景が微笑ましく、俺をアイシスさんは顔を見合わせたあとで同時に苦笑した。

アイシスさんにとってもイリスさんにとっても大きな変化があった日の深夜、日付が変わろうかというタイミングで不意に目が覚めた。

眠りが浅かったのか、シロさんに貰った眼鏡のおかげで今までは見えなかったすさまじい戦いを見れて少し興奮気味なのか、深夜の目覚めにも関わらず割と目は冴えていた。

一度ベッドから出た俺は、寝巻のままで浮遊式照明魔法具を手に取り、廊下へでて厨房の方へ向かって歩き出した。

微妙な空腹……ガッツリ食べたり、お酒を飲んだりしたいというわけではないが、もう一度眠る前に軽くなにかを食べたい気分だった。

俺は普段リリアさんの屋敷で食事を食べることが多いが、当たり前だが俺の家の方にも食堂も厨房もある。食べ物自体はマジックボックスにも入っているので部屋でも食べられるが、せっかくなのでなにか自分で夜食を作ってみようと思ったからだ。

といっても本当に軽くなので……薄切りベーコンを卵を塩コショウで炒めたスクランブルエッグとかにしようかなぁ、などと考えながら厨房の前に辿り着くと……扉の隙間から光が漏れているのに気が付いた。

誰かいるのだろうかと首をかしげながらドアを開くと、そこには意外な人物の姿があった。

「ご、ご主人様!?」

「……奇遇だね、アニマ」

厨房にいたのは、アニマだった。タオルを頭に巻き、以前俺が買ってあげた薄い青色のパジャマの上からエプロンを付けた普段とは違うラフな格好……なんとなく新鮮な気分になる。

「は、はい。あっ、も、もも、申し訳ありません!? こ、このような恰好で……」

「あはは、気にしなくていいよ。俺だって寝巻だし……アニマも夜食かな?」

「え、ええ……今日は少し職務が長引きまして、先ほど入浴を済ませ、就寝前になにか食べておこうと……」

「そっか、お疲れ様」

「も、もったいないお言葉です」

少し慌てたような、それでいて恥ずかしそうな様子のアニマはなんだか微笑ましくて、思わず笑みがこぼれた。

せっかくこうして偶然にも会ったわけだし、アニマと一緒に夜食を食べるのもいいかもしれないな……。