軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

家を建てよう⑨

悪ふざけの地下室を紹介されたあとは、いくつかの場所を紹介したあと俺の部屋に向かうことになった。

アリスが用意してくれた屋敷の中は、いろいろな部分で痒いところに手が届くというか……聞いてみれば、確かに便利かもしれないと感じる要素が多かった。

悪ふざけもあったことはあったが、地下室以外はマトモに作っているみたいで、再びアリスにゲンコツを落とすような展開にはなっていない。

「さぁ、いよいよカイトさんの部屋ですよ!」

テンション高く告げてくるアリスの言葉を聞き、俺の頭に思い浮かぶ展開は二通りだった。ある意味メインといえる俺の私室となる部屋に、『一番ひどい悪ふざけ』を仕込んでいる可能性がまずひとつ。

もうひとつは、逆にしっかり無難な感じに仕上げてくれているというパターンだ……アリスは確かに悪ふざけも多いが、俺が心から不快に感じるような悪ふざけを仕掛けてきたことは一度もないので、たぶん後者の可能性が高いとは思う。

しかし、そうなると疑問なのは……『なぜ俺の部屋に案内するのを最後にしたか』という点である。インパクトというのを重視するなら、一番の目玉といえる場所は最後に持ってくるはず。アリスはそういうエンターテイメント的な演出は結構気にするタイプだし、間違いなくそうすると思う。

となると……なにかあるのか? 俺の部屋に、ここまで見たものをしのぐ要素が……。

「……カイトさん? 入らねぇんすか?」

「ちょっと待って、いま覚悟決めてるところだから……」

「むっ、反応に困りますね。アリスちゃんへの信頼半分、疑い半分ですか……まぁ、おおむね『ふたつ目に思い浮かべたやつ』で正解だと思いますよ」

「……ナチュラルに心読むなよ」

「いや、シャローヴァナル様の祝福があるカイトさんの心とか読めねぇっすよ? 単なる予想です」

「……そうか」

本当にコイツの頭の良さはどうなってるんだろうか? 一回どのぐらい頭がいいか、IQテストみたいなことやらせてみたいな……。

まぁ、それは置いておいて……いろいろ考えたとしても、見てみないことにははじまらない。俺は一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせたあと、意を決して目の前の扉を開いた。

「……あれ?」

「どうです? なかなかの再現度でしょ?」

「……いや、再現度というか……まったく一緒というか……」

開いた扉の先……俺の私室は、ものすごく見覚えのあるものだった。いや、というか……『リリアさんの屋敷の俺の部屋とまったく一緒』である。

本当にそれこそ、大きすぎるベッドとか家具の配置までそのままだ。

「いや、やっぱり自室は落ち着けるのが一番ですし、カイトさんにとって慣れた部屋にしてみました」

「そ、そうなんだ……いや、確かにこれはこれで安心だけど……うん? いや、まて……」

いい意味で予想を裏切られたともいえるし、ある意味では拍子抜けともいえる部屋を若干戸惑いながら見渡していると、ふとあるものに気が付いた。

一年過ごした部屋とまったく一緒かと思っていたが……一ヶ所だけ違う。というかなんだアレ?

「……なぁ、アリス」

「なんすか?」

「あの部屋の奥にある『門みたいな物体』……なに?」

「あぁ、アレは『シャローヴァナル様に頼んで作ってもらった』……一種の魔法具ですね」

なるほど、どうやら俺は考え違いをしていたらしい。頭に浮かんだふたつの展開……正解は前者でもなく、後者でもなく……その複合だったってわけか。

うん、アレ、絶対まともなシロモノじゃない。だってシロさんが作ったって時点で、この世界に存在するものでは再現不可能ってのが決定してるようなもんだし……。

「……アリス、簡潔に説明してくれ、アレはどんなとんでも魔法具なんだ?」

「いや、そこまで理不尽なものでは無いですよ。本当にざっくり言うと『転移阻害を無視して、どこにでも転移できる門』ってとこですかね」

「……えっと、それはつまり、たとえば神域とかに直接転移できるってこと?」

「そういうことですね。まぁ、事前に転移場所は登録しておく必要がありますが……これに関しては、ちょっと難しめなので、私が登録します」

「ふむ……」

実は転移魔法というのは、どこにでも好き勝手に転移できるわけではない。俺が持っている転移魔法具は、非常に長距離の転移も可能ではあるが……転移阻害結界の内部には転移できない。

例えば神域は、当然ながら転移魔法を無効化するので、俺がシロさんの元を訪れる際はシロさんに招待してもらうか、一度神界の下層に転移してから中層、上層を経由して向かう必要がある。

俺がリリアさんの屋敷の前や、アイシスさんの居城の門の前を転移地点として登録しているのも、転移阻害結界の関係である。

もっとも一部の圧倒的強者……クロとかは、転移阻害を無効化して転移することもできるが、通常の転移魔法に比べて魔力消費が桁違いであり、魔水晶では魔力を保存しきれないとのことだ。

まぁ、魔力消費が大きいとはいっても俺の魔力量を1とするなら、クロの魔力量は何兆だとか何京だとか、そんなわけ分からないレベルで桁が違うので、クロにしてみれば大した消費ではないらしい。

「……便利は、便利なのかな? 正直メインの使い方は、神域に行くぐらいしか思いつかないけど……」

「まぁ、軽い便利機能みたいなもんですよ……『カイトさんの世界にも転移できます』し、『起動できるのはカイトさんだけですけど、カイトさんが開けば他の人も通れる』ってだけです」

「……ごめん、前言を撤回する。やっぱりとんでも魔法具だった」

……これ、世界間の転移ができるの? と言うことは、俺はその気になれば自分の部屋からドアtoドアで地球のおじさんとおばさんのところに行けるわけか……とんでもねぇよ。