軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの神が謳う愛④

シロさんが作った遊園地。もちろん常識外れなのは予想していたが……『音速の10倍の速度で10分以上』走るジェットコースターは……ちょっと想像していなかった。

景色はまったく見えなかったが、そもそも外から見えていた大きさと実際の走行時間が合わないので、途中で異空間にでも入ったのかもしれない。

まぁ、シロさんの祝福のおかげか、それともアリスが手を打ってくれたのか体を襲う衝撃は普通のジェットコースターぐらいだったが、とにかく速すぎてなにがなんだか分からなかったというのが正直な感想だ。

「ふむ、ゆっくり景色を見るにはいいのかもしれませんね」

「……なんで、紅茶飲んでるんですか……」

「快人さんの分も出した方がよかったですか?」

「いえ、顔にかかる展開しか見えないので……」

俺にとっては絶望的な速度だったが、シロさんにとってはむしろ遅かったみたいで、終着点についた時にはシロさんの手には紅茶のティーカップがあった。

というか、よくよく見たらシロさんはガード的なものは何も付けてなく、普通に座ってるだけである。スペックの差を改めて感じる光景だ。

「……シロさん、次はもうちょっと落ち着いた感じのアトラクションにしてください」

「わかりました。では、お化け屋敷にしましょう」

お化け屋敷か……これもまた定番中の定番だ。そして、俺の要望通り激しい動きのないアトラクションといっていい。

特におばけが苦手というわけではないが、アリスが演出するなら結構楽しめそうではある。

シロさんとともにやってきたお化け屋敷は、洋館を模したデザインで西洋風のお化け屋敷……ホラーハウスといったイメージだった。

室内は少しひんやりとしており、カタカタと窓が揺れる音まで聞こえてきて、かなり雰囲気が出ている。

「ォォォォ……」

「うわぁっ!?」

少し進むと通路の先からは、引くほどリアルなゾンビが現れ響くような声と共にゆっくりこちらに近づいてきた。

こ、これは、なかなか……さすがアリス。正直、ちょっと怖い。

思った以上にリアルな演出に思わず俺が驚いた直後、隣にいたシロさんはゆっくりと迫るゾンビに人差し指を向け……指先から『極太のビーム』を放――ちょっ!? えぇぇぇ!?

「うぎゃぁぁぁぁ!?」

え? ちょっと、なにしてんのシロさん? なんで流れるようにゾンビ消し飛ばしたの?

あまりにも予想外のシロさんの行動に呆然としていると、直後に俺たちの目の前にアリスが出現した。

「なにしてんすか、このくそ女神!? なんで出合い頭にビーム!? 私じゃなかったら消し飛んでますよ!!」

「……お化け屋敷とは、出てくるお化けを倒して進むアトラクションではないのですか?」

「そんなバイオレンスなアトラクションのわけねぇでしょうが! いや、仮にそういう趣向のアトラクションだとしても『原子単位で消滅させるビーム』放って倒すわけないでしょうが!! ちょっと、マジ頼みますよ……命に係わるんで……皮だけじゃなくて、ちゃんと中身も勉強してください」

「ふむ」

これに関してはまったくもってアリスのいう通りである。シロさん、俺の記憶を見ればだいたいどういうアトラクションか分かるでしょ? ちゃんと勉強してください。

「わかりました」

そう言ってシロさんはジッと俺の方を見る。そして少ししてなにかに納得したように頷き、アリスへと向き直る。

「問題ありません。すべて理解しました」

「……なんすかね? このそこはかとない不安は……まぁ、いいでしょう」

アリスは若干不満そうな表情を浮かべてはいたが、とりあえずシロさんの問題ないという言葉を信用したのか姿を消した。

「では、快人さん。改めてまいりましょう」

「あ、はい……本当に大丈夫ですか?」

「問題ありません。私がここでなにをすべきか、完璧に理解しました」

なんというか、アリスと同じ感想である。なんだろう? このそこはかとない不安は……。

まぁ、とりあえず気を取り直してお化け屋敷を進むことにすると、今度はフランケンシュタインみたいなお化けが斧を片手にこちらに向かって歩いてきた。

これもまたなかなかの完成度……。

「きゃぁ、怖い」

「……」

「……」

俺はいまだかつて、ここまで白々しい台詞を聞いたことはない。無表情かつ抑揚のない声で「きゃぁ」と言いながら俺にしがみついてきたシロさんに対して、いったいどんなリアクションを取ればいいのか分からない。

というか、フランケンシュタインも絶句して硬直してるんだけど……。

えっとこれは……どうすればいいんだろう? シロさんは俺にしがみついたままチラチラとこちらを見ているので、なにかを求めているんだろうけど……。

いや、正直言うとシロさんが俺になにを言ってほしいのかは分かってるんだけど……あまりに現実味の無い言葉なので躊躇してしまっている。

けど、アレだよね。これ言わないと離れてくれないやつだよね。

「……だ、大丈夫です。シ、シロさんのことは、お、俺が守りますから」

「ありがとうございます。さすが快人さんは頼りになりますね」

俺がシロさんを守る……自分で言ってて、あまりの説得力の無さに笑いそうになってしまった。

ともかくこれでシロさんは満足したみたいで俺から離れ、その後は特にお化けに対してリアクションを取ることはなく、淡々とお化け屋敷をクリアした。

お化け屋敷から外に出て、シロさんと手を繋いだまま歩いていると、シロさんがなにやら深刻な様子で口を開いた。

「……このままではだめですね」

「え? なにがですか?」

「先ほどのお化け屋敷の一件で気付きました。このデートには足りないものがあります」

「た、足りないものですか? なんでしょう?」

何度目か分からないけど、嫌な予感がする。

「……『ラブラブ度』が足りません」

「は、はぁ……」

ほら、また変なこと言い始めた。

「私と快人さんはカップルです。そして遊園地でのデート……もっとイチャラブなハプニングがあってしかるべきだと思います」

「……」

イチャラブとか言い出しちゃったよこの神様……あと、イチャラブは無いですけど、ハプニングは開始からずっとありますよ。

「というわけで、アリス。私と快人さんが自然にラブラブ展開に移行できるように取り計らってください」

「……なんで私がそこまでフォローしなきゃいけねぇんすか。それは事前の契約外です。私に丸投げせずに、自分でやってください」

「なるほど、ところで少し耳を貸してください」

「……なんすか? もうこれ以上譲歩は……」

シロさんに呼び出されて現れたアリスだったが、露骨に不満そうな表情で受け答えをしていた。しかしシロさんの方はまったく気にした様子もなく、なにやらアリスに耳打ちを始めた。

もう先の展開は読めた……絶対買収されるよアイツ。

「……え? マジっすか!?」

「二言はありません」

「……仕方ありませんね。この恋愛マスターこと、アリスちゃんに任せてください!」

「任せます」

予想を裏切らず、アッサリと買収された処女歴数十万年の自称恋愛マスター。

駄目だこれ、買収を覚えたシロさんが強すぎる……最悪のタッグが生まれてしまった。この先の展開がとてつもなく不安である。