軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの神が謳う愛⑤

シロさんとアリスのタッグ……もとい、裏工作が得意なアリスがシロさんをフォローするという体制は、非常に不安を感じるものではあった。

しかし、俺の不安とは裏腹になにか妙なことが起きることもなく、俺とシロさんは普通に遊園地を回っていた。

「……少し喉が渇きましたね。シロさん、なにか飲みませんか?」

「わかりました」

いくつかのアトラクションを回って喉が渇いたので、園内地図を見てフードコートがあるエリアに移動する。アリスが仕切っている以上まったく心配はしていなかったが、やはりフードコートもすべて営業しているみたいだ。

そのうちのひとつ、ドリンクを売っている屋台風の店に辿り着くと、店員のアリスが俺たちを迎えてくれた。

「いらっしゃいませ~なんにしますか?」

う~ん……ちょっと難解な着ぐるみ着てるな。ピンク色で、くちばしっぽいものがあるってことは……フラミンゴかな?

そんなことを考えながら、ドリンクのメニューを見て……硬直した。

・カップル専用ラブラブリプルジュース

・カップル専用ラブラブオレンジジュース

・カップル専用ラブラブミックスジュース

・カップル専用ラブラブ人界ジュース

・カップル専用ラブラブ魔界ジュース

・店長オススメカップル専用ラブラブ神界ジュース

・ぼっち専用ぞうきん味の白湯

ほぼ全部カップル専用じゃねぇか!? あと前々から思ってたけど、ぼっちに対して悪意がありすぎる。

しかし、なるほど……こういう形でサポートしてきたか。この分だとたぶん、フードコートのメニューはすべてこんな感じになっているんだろう。

「快人さん、どれにしますか?」

「……えっと……じゃあ、せっかくですし、店長オススメの神界ジュースで」

まぁ、たぶん俺に選択肢なんてないと言うことは理解できていたので、諦めて注文することにする。とりあえず店長オススメと書かれていた神界ジュースとやらを頼んでみることにした。

アリスが作るんだから不味いということはないだろうし、名前からではイマイチどんな味か分からないので、少し楽しみではある。

しかし、俺の注文を聞いたアリスは、なぜか首を傾げた。

「はて? うちにそんなメニューありましたっけ? 商品名は正確にお願いします」

コノヤロウ……。

「店長オススメ……カップル専用……ラ、ラブラブ神界ジュース……」

「はい。かしこまりました! これを頼むなんて、おふたりはずいぶんお熱いカップルみたいですね」

なんだろう、この一択しか選べない強制羞恥プレイは……。

あまりにも恥ずかしい商品名に顔が赤くなるのを実感していたが、その恥ずかしさは直後に出てきた商品を見て吹き飛んでしまった。

「おまたせしました~」

「うぉっ……すご」

目の前に出されたジュースは、予想を大きく越えるほどすさまじいものだった。大型コーヒーチェーン店とかでよく見る透明なドーム状のふたの中には、ミニチュアの神界が入っており、まず見た目からして素晴らしい。

あとストローもふたりでひとつのドリンクを飲む形なのは予想通りだったが……安直なハート型ではなく、えらく複雑で芸術的な形をしている。

そしてその下のドリンク部分に関しては、どういう原理か分からないが『四層』になっていた。

一番下が濃い藍色、その上が緑色、その上に紫色、そして一番上に銀色……たぶんだけど、それぞれクロノアさん、ライフさん、フェイトさん、そしてシロさんをイメージしているのだと思う。

なるほど、だから神界ジュースか……見た目は文句なく美しいけど、味はどうなんだろう?

「……えっと、シロさん。さっそく、その、飲みましょうか?」

「はい」

シロさんと向かい合うようにして、ストローに顔を近づけるが……うっ、やっぱり、シロさんの顔が凄く近い。

ただでさえ絶世の美女って言葉がそのまま形になったかのような、圧倒的な美貌を持つシロさんをこれだけ近くで見るというのは……正直かなり恥ずかしい。

心臓の鼓動が大きくなるのを感じつつ、覚悟を決めてストローに口を付け、ジュースを飲――美味っ!?

そのジュースの味は俺の想像を遥かに超えていた。まず一番下の層……藍色の部分は、ブルーハワイに似た味わいだったが、まるで体全体に染み渡るような……俺の体そのものが、このジュースを欲しているかのようなとてつもない美味だった。

そして次の層、緑色の層はメロン味だが、ブルーハワイの層からメロンの層に映る瞬間、ふたつの味が絶妙に混ざり合い、ブルーハワイでもメロンでもない別の味として口の中に広がった。

紫の層はブドウ味で、最後の銀色の層はラムネのような感じの味だったが、どれも恐ろしいほど美味しく、気が付けば俺は夢中でジュースを飲んでいた。

表現は難しいが、全身がそのジュースを余すことなく味わいたいと感じているみたいで、いつの間にか俺は目を閉じ、口の中に広がるジュースの味だけに集中していた。

そしてかなりの勢いでジュースを飲み切った瞬間……ふいにそれまでとは違う感触があった。

表現するなら「ぷにゅ」とか、そんな感じだろうか? なんだがものすごく柔らかくて、心地の良いなにかが唇に当たったみたいな……。

「――ッ!?!?」

その感触に導かれるように俺は目を開け……そして、一瞬で思考が全部消し飛んだ。

目を開けた瞬間、文字通り俺の目の前には吸い込まれそうなほどに美しい金色の瞳があったから……。

え? なに? この状況……なにが、どうなってるの!? なんで俺、シロさんと『キス』してるの!?

それは咄嗟に離れるという行動すらとれないほど衝撃的で、シロさんとキスをしたまま体は動かす思考だけがぐるぐると回る。

いや、だって、さっきまで美味しいジュースを飲んでいたかと思ったら……いつの間にかストローやジュースのカップが消えていて、シロさんとキスをしていた。まったく意味が分からない。

そしてなにより強烈なのが、シロさんの唇の感触だった。六王祭の時は不意打ち気味だったので、ちゃんとわかっていなかったが……シロさんの唇が気持ちよすぎる。

ディープキスとかではなく、ただ唇と唇を重ねるキスなのに……意識が飛びそうだ。シロさんの唇は吸い付くほどに柔らかく、感触もほのかに感じる体温も、すべてが至高といっていい。神様って言うのは、唇まで特別性なのかと、そんな考えが頭に浮かぶほどだ。

というか、咄嗟に離れられなかったのはそれも原因なのかもしれない。時を忘れて永遠に味わっていたいとすら思う、先ほどの凄まじく美味しいジュースの味さえ一瞬で消し飛ばした天上の蜜の如き味。

しかし、それでも、なんとか意識を引き戻し、シロさんから離れようとした。

だが、当然俺の思考を読めるシロさんを先回りできるわけもなく、いつの間にか俺の頭の後ろに回されたシロさんの手によって逃げ道は完全に塞がれていた。

そうなってしまってはもう諦めるしかない。いや、あるいはこれは俺も望んでいたのかもしれない。

俺の手は自然とシロさんの華奢な背中に回り、その体を優しく抱きしめ……そのまま、シロさんが満足してくれるまで、俺はシロさんと唇を重ねていた。