軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おかえり快人④

リリアさんの屋敷でリリアさんに挨拶を終えたあとは、すぐに神界のフェイトさんの下へ向かおうとも思ったのだが……リリアさんの屋敷には知り合いも多く、先にそちらに挨拶を済ませたほうがいいだろうと考えた。

特に気になるのは……アニマたちである。アニマ、イータ、シータの三人は、リリアさんの使用人ではなく、俺が雇っているという扱いであり、他の使用人たちとは少し立場が違うし、給料も俺が払っている。

いちおう元の世界に戻る前に、アニマに全財産の8割ぐらいを渡しておいたから問題は無いとは思う。彼女の性格からして無駄遣いもしないだろうし、イータとシータにもちゃんと給料は払ってくれているだろう。

ではなにが気になるのか? もちろん、三人が元気にしているかというのも気がかりではあるが……実は元の世界に帰る前、アニマからあることを尋ねられた。

それは「預かった金銭は、ある程度自分の裁量で運用しても構わないのでしょうか?」というものだ。その時は二つ返事で許可を出した。心配しているわけではないが、二年という期間でアニマがそのお金をどう使ったのかちょっと興味がある。

そんなことを考えながら、アニマが使っている部屋に向かっていると、廊下の先から『四つ』の人影が早足で近付いてくるのが見えた。

「ご主人様!」

「アニマ、ちょうど会いに行こうと思ってたんだ。ただい……ま?」

「はい! おかえりなさいませ、ご主人様!」

「おかえりなさいませ、ご健康そうでなによりです」

「ご主人様にまた会えて、嬉しい……です」

「おかえりなさいませ、ミヤマ様。こうしてまた会えたこと、心より嬉しく思います」

俺を見て明るい表情で言葉を投げかけてくるアニマ、イータ、シータ……キャラウェイさん?

「……あれ? なんでキャラウェイさんがここに?」

「ご主人様が不在のおりに、自分が補佐として雇い入れました。事後承諾のような形になってしまい、申し訳ありません」

「え? あ、いや、それは構わないんだけど……えっと、キャラウェイさんはそれでいいんですか?」

キャラウェイさんは子爵級高位魔族という、魔界でもかなり立場の高い存在だ。アニマと仲が良いのは知ってたけど、俺に仕えていいんだろうか? それこそ、六王配下とかもっと良さそうな就職先はありそうだけど……。

「はい! むしろ、私の方から希望してアニマの補佐になりました。ミヤマ様の寛大な処置のおかげで、魔界での立場は回復しましたが、いまさら以前のように配下を集める気もありませんでしたし、私を救ってくださったミヤマ様のために働きたいとそう思っています」

「は、はぁ……えっと、じゃあ、改めてよろしくお願いします」

「はい!」

……寛大な処置? 救った? 正直これと言って心当たりはないのだが、キャラウェイさんはすごく嬉しそうなので……まぁ、いいか。

するとちょうどそのタイミングで、アニマがマジックボックスを出現させ、その中から巨大な袋を取り出した。

「ご主人様! お預かりしていた金銭を、お返しいたします」

「……めっちゃ増えてない?」

「はい! お預かりした金銭をそのまま返すのは、従者として二流と考え、自分の裁量で運用し増やしておきました!」

「……そ、そうなんだ」

これ、渡したときの三倍ぐらいになってない? う~ん、アニマって意外とそういう資金運用の才能もあるみたいだ。たしかに、豪快そうに見えて細やかな気配りもできるし、努力家で新しい知識を得る事にも意欲的だったので、二年間でさらに成長しているのだろう。

ただ、うん……しっかりと敬礼しつつも、褒めてほしそうなオーラ全開なのは、アニマらしいと言えばアニマらしい。

そんな可愛らしい彼女を微笑ましく思いながら、軽く頭を撫でる。

「……頑張ってくれたんだね。ありがとう……せっかくだし、引き続き半分ぐらいお金は預けて、アニマに任せてもいいかな?」

「は、はい! お任せください! 必ずや、ご主人様の期待に応えて見せます!」

アニマは熊の獣人のはずだが、尻尾を全力で振る子犬の幻影が見えた気がした。でもまぁ、コレからずっとこの世界で生きていくことを考えると、アニマのような頼りになって信頼できる相手が傍に居てくれるのは、本当に心強い。

頑張りすぎてしまうことがあるのが困りものだけど……その辺りもしっかり気にかけつつ、これからも頼りにさせてもらおう。

リリアさんの屋敷に多くの人たちに挨拶を終えたあと、俺は神界の神殿へとやってきていた。シロさんは最後に尋ねてきてくれということなので、今回は恋人であるフェイトさん……そしてそれ以外の神族の知り合いに挨拶をするのが目的だ。

まず真っ先にフェイトさんの神殿を訪れ、大きな扉の前に立った瞬間……ふいに背筋に寒気が走った。なんだろう、この感覚は……なぜいま、かつてハイドラ王国を訪れた時のことが頭に蘇るのだろうか?

そこまで考え、俺はそっと……扉の正面を避けるように移動する。すると直後に巨大な扉が吹き飛び、小さな人影が弾丸のような速度で迫ってきた。

「カイちゃぁぁぁぁぁん!!」

「……」

その時俺の心に浮かんだ感情はなんだろうか? たぶん、諦めだろう。扉の前から避けたにも関わらず、直角に曲がってこちらに迫ってくるフェイトさん。

身長差があるその頭が迫ってくるのがスローモーションのように見え、その頭は……寸分たがわず俺の『鳩尾』に叩き込まれた。

「がふっ!?」

「カイちゃん! もう、遅いよ! ずっとずっと待ってたんだから!!」

うん、ハイドラ王国の時も思ったけど……フェイトさんはいったい、俺の鳩尾になんの恨みがあるんだろうか……とても痛い。