軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おかえり快人③

自分のうちというわけではないが、それでも1年間過ごしたリリアさんの屋敷に足を踏み入れた時に思い浮かんだのは……あぁ、帰ってきたんだなという感想だった。

それぐらいこの屋敷は懐かしく、なんというかすごく落ち着く。

「お久しぶり……いえ、おかえりなさいと言ったほうがいいでしょうね。おかえりなさい、カイトさん。こうしてまた会えたこと、心から嬉しく感じます」

「はい、お久しぶりです。リリアさん」

穏やかな微笑みを浮かべながら俺の帰還を喜んでくれるリリアさん。リリアさんには、クロノアさんの祝福があるので不老のはずだが……二年という月日で精神面が成長したのか、以前より大人っぽい雰囲気を感じる。

「まぁ、必ず戻ってくると信頼していましたし、事前に幻王様からも情報はいただいていましたので、あまり驚きはありませんが喜びはとても大きいです」

「……」

やっぱり以前より貴族としての振る舞いが板に付いてきたのか、リリアさんはとても落ち着いている感じで、どこか余裕も感じられる。

なんとなく、以前のリリアさんを知っていると少し寂しくもあるが……成長しているというなら、喜ぶべきだろう。

そう思っていたのだが……。

「……よくもまぁ、そんなことを言えますね」

「うん?」

「ル、ルナ!? な、なんですか急に?」

リリアさんの傍に控えていたルナさんが、心底呆れた表情で呟いたので首をかしげると、リリアさんは急に焦ったような表情に変わった。

「この二年で、お嬢様が何度『カイトさんは、まだ戻ってこないのでしょうか?』と寂しそうに呟いたか、具体的な数字をお教えしましょうか?」

「ルナ……待ってください。お願いですから、それ以上余計なことを言わないでください」

「あぁ、そういえば……ミヤマ様が居ない間、お嬢様はよく自分の部屋で『オルゴールを聞かれていた』ご様子でしたね。お嬢様があれほど音楽好きだったとは、不肖ルナマリア、いままで存じ上げませんでした。おや? しかし、気のせいか『いつも同じ曲』だった気もしますねぇ」

「あ、あの、ルナ……もうやめて、お願いですから……私にも、その、貴族としての威厳とかそういうのが……」

あれ? なんだろう? 雲行きが怪しくなってきたというか、盛大な暴露が始まっているような。

リリアさんが聞いていたオルゴールって……たぶん、俺がプレゼントしたアレだよね? ということは……。

「威厳? はて? 私の知る威厳のある貴族というのは……幻王様から連絡を受けてから、ソワソワと部屋の中を行ったり来たりして、仕事もまったく手に付かない状態の方のことを言うのでしたっけ?」

「……あぁぁぁぁぁ……いや、その、ち、違うんです!?」

「……えっと、ルナさん? つまるところ、どういうことですか?」

ルナさんの告げた言葉を聞き、リリアさんは真っ赤になった顔を両手で覆い隠して机に伏してしまった。先ほどまでの余裕ある態度が嘘のように豹変しており、俺が不思議そうにしていると……ルナさんはもう一度大きなため息を吐いて口を開いた。

「いえ、単純な話ですよ。お嬢様は二年ぶりに再会した愛しの恋人に、淑女らしく上品な姿を見せようと余裕ぶってただけで……別に二年の間に大人っぽくなったとか、そういうわけではありません。武力だけはやたら上がりましたがね」

「~~~!?」

あぁ、うん。なるほど……前言を撤回しよう。なんというか、俺の知ってる貴族らしくなくて可愛らしいリリアさんのままで安心した。

淑女っぽさを気にするのも、リリアさんらしいというか……ついつい微笑ましくなってしまう。

まぁ、暴露されたリリアさんの方はたまったものでは無いらしく、いまにも湯気でも噴き出しそうなほど赤い顔で半泣きになっている。

ソレを見たルナさんは、もう一度軽い溜息を吐いたあと……部屋の出口に移動し、扉を少し開けてから振り返ってリリアさんに告げる。

「……まぁ、そういうわけで、いつまで無駄な見栄張ってるんですか、馬鹿リリ……ミヤマ様だって、今日はあまり時間は取れないのですから、さっさと素直になって甘えてください」

メイドとしてではなく、親友としての言葉を告げたあと、ルナさんは退出して……俺とリリアさんだけが部屋に残された。ルナさんって、なんだかんだで友達思いだよなぁ……。

「えっと……リリアさん」

「……うぐっ……し、仕方ないじゃないですか。クロノア様の祝福で不老になったとはいえ、他の長命種の方に比べて……私にとっての二年は長かったんです」

「……」

「……さ、寂しかったん……です」

あ、あれ? もう一度前言を撤回しなければいけないかもしれない。リリアさん、前にも増して可愛くなってない!?

涙目で寂しかったと告げるリリアさんを見て、彼女に対する愛おしさが込み上げてきた。

俺は導かれるようにリリアさんに近づき、椅子に座っている彼女を、少し覆いかぶさるような形で抱きしめた。

「うひゃぁっ!? カ、カカ、カイトさん!?」

「……すみません、寂しい思いをさせて」

「……あぅ……あぅ……」

「二年前と変わらない、俺の大好きなリリアさんに、こうしてまた会えて……幸せです」

「ッ!?」

「……リリアさん?」

「……きゅぅ」

「え? ちょっ!? リリアさん!?」

恥ずかしさが許容限界を超えてしまったのか、俺の腕の中で目を回して気絶してしまうリリアさん。う、う~ん……なんだろう? そういう部分も変わってなくて安心したような……少し残念なような……複雑な気持ちである。