軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おかえり快人②

アイシスさんの元を訪れ、アイシスさんとリリウッドさんに帰還の挨拶を終えたあと……次に向かう場所といえば、やはりここしかないだろう。

この世界で一番長い時間を過ごし、一番大勢知り合いが居る……リリアさんの屋敷だ。

豪華さを感じる門の前から見える屋敷は、本当に懐かしく……あぁ、帰ってきたんだなとそういう気持ちが湧いてきた。

軽装の鎧に身を包んだ門番の女性は、俺を見て一瞬驚いた表情を浮かべたあと、なにも言わずに微笑み門を開けて深く一礼してくれた。

家主であるリリアさんに連絡を入れることもなく門を開いてくれる行動そのものが、彼女なりの「おかえり」と、俺を部外者とは思っていないという意思表示みたいに感じて、なんだか嬉しくなった。

門番の女性に軽く頭を下げて屋敷の庭に足を踏み込むと、すぐさま大きな足音と羽ばたくような音が聞こえてきた。

「ガウゥ!!」

「キュクイ!!」

「ベル! リン! ただい――待って!? ストップ! 止ま――ぐぁっ!?」

ものすごい勢いでやってきたベルとリン……そのあまりの勢いに嫌な予感がして制止を呼び掛けたが、時すでに遅く……直後にリンは勢いそのまま体ごと俺の顔に張り付き、ベルは飛びつくように覆いかぶさってきた。

「そして、重っ!? ちょっと、落ち着いてくれ!?」

「クゥ」

「キュ?」

二匹にとっては二年ぶりに飼い主が帰ってきたという状況なわけで、それはもう全力でじゃれついてきている。それ自体は嬉しいし、可愛らしいとも思うのだが……いかんせん問題はベルである。

リンはまだいい、じゃれると言っても体格的にそこまでではない。しかしベルは4mぐらいあるわけで……もちろん最低限の加減はしているのだろうが……テンションが上がって、体重をかけ過ぎてくれば潰されそうで怖い。

俺が大はしゃぎする二匹をなんとかなだめようとしていると、足音と共に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「……ベルちゃん、リンちゃん、急にどう――ッ!?」

「あ、あはは……締まらない再会ですみません……ジークさん」

ベルとリンにじゃれつかれていた俺の元にやってきたのは、レインボードラゴンのセラを肩に乗せたジークさんだった。

俺にとっては二ヶ月、ジークさんにとっては二年……長命種であるエルフ族のジークさんの外見は、数年で変化することはないはずだが、久しぶりに会ったからか以前よりずっと美しく見える。

ジークさんは俺を見て少し驚いたような表情を浮かべたあと、優しく微笑みを浮かべ、倒れている俺に手を差し伸べながら口を開いた。

「……おかえりなさい。カイトさん」

「ただいま戻りました」

ジークさんの手を借りて起き上がり、そのまま導かれるようにジークさんの体を抱きしめる。微かに香ってくるのは、ジークさんがいつも少量だけ使っている柑橘系の匂いのする香水。

大人っぽい落ち着いた色気と、背中に優しく回された手の温もりは……なんというか凄くドキドキした。

しばらくそのままジークさんを抱きしめたあと、どちらからともなく手を放して見つめ合う。

「……あっ、えっと……リリアさんにも挨拶しないといけませんね」

なんとなく気恥ずかしくて話題を逸らすような言葉を発し、俺が屋敷に向かって歩き出そうとすると……ふいに服を引っ張られるような感触がして、直後にジークさんが後ろから抱き着いてきた。

「……ジークさん?」

「……ワガママだとは分かっています。ですが、その……もう少しだけ、駄目でしょうか?」

「え?」

「……もう少しだけ、貴方と……ふたりで居たい……です」

それは……ワガママとすら呼べないほどささやかな、ジークさんからの要望だった。

大人っぽく、普段から優しく落ち着いた雰囲気のジークさんにしては本当に珍しい、甘えるような声。それはどうしようもないほど嬉しい言葉だった。

俺は背中から回されていたジークさんの手をできるだけ優しく取り、ゆっくりと体を反転させてもう一度ジークさんを抱きしめた。

「そういうワガママは……大歓迎です。なので、もう少しだけ」

「……はい」

ギュッとジークさんが俺を抱きしめる力が強くなる。いや……互いに互いを抱きしめる力が強くなった。その幸せな温もりを、少しでも逃さないようにと……。

「……カイトさん」

「ジークさん」

なにかを話すわけじゃなく、互いに名前を呼び合うだけ……たったそれだけの行為が、どんどん愛おしさを大きくしていくのだから不思議なものだ。

まだまだ回らなければならないところは沢山あるけど、せっかく可愛い彼女が甘えてくれたんだ。もう少しだけ、ジークさんとの時間を過ごしたい。この瞬間が、どうしようもないほど幸せだから。

その思いはジークさんもきっと同じだと……互いに引き寄せられるように重ねた唇が、実感させてくれた。