軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世界最高峰の技術を持つということだ

火の二月3日目。なんだかんだで凄いことになった誕生日パーティから一夜明け、俺はいただいたプレゼントの整理を行っていた。

非常にありがたいことではあるが、沢山のプレゼントを貰ったので、六王祭の記念品と合わせると整理し終えるまでにそこそこ時間がかかりそうだ。

ちなみにリリアさんに贈られた空飛ぶ城に関してだが……シロさんが下賜したのは、あくまで城だけという扱いで、魔力が二倍になる噴水とかはクロノアさんが回収してくれたらしい。

しかし、城だけでもとんでもないものであり、リリアさんもその扱いをどうするかと頭を悩ませていたみたいだが……そこで手を差し伸べたのは、シンフォニア王国第一王女であるアマリエさんだった。

というのも、アマリエさんはリリアさんが貰った空飛ぶ城を王都の観光スポットにしたいらしく、パーティが終わってすぐリリアさんに交渉をしてきたらしい。

リリアさんにとっても渡りに船といえる提案だったこともあり、トントン拍子に話は纏まり。結果、空飛ぶ城はシンフォニア王国がレンタル料を払ってリリアさんから借りるという形で落ち着いた。

アマリエさんは非常に張り切っているみたいで、今朝自らリリアさんの屋敷を訪れて契約書を交わし、その足でさっそく観光地化作業に着手したらしい。

流石次期国王候補筆頭だけあって、決断力と行動力が凄まじい。まぁ、そのおかげでリリアさんは助かってたみたいなので、ありがたい限りではある。

そんなことを考えながら、ひとつひとつプレゼントの確認と整理を行っているとふいに部屋のドアがノックされた。

「……は~い、あれ? 陽菜ちゃん?」

「快人先輩、葵先輩が訓練スペースに来てほしいって言ってますよ」

「うん? 俺に?」

「ええ、というか、私と快人先輩両方に、ですね。なんか、また新しい魔法を覚えたみたいで、見せたいって言ってましたよ」

「ふむ……じゃあ、行ってみようか」

「はい!」

特に急ぐ用事があるわけでもないので、俺はすぐに了承の言葉を返して陽菜ちゃんと一緒に屋敷裏手の訓練スペースへと向かって歩き出す。

ちなみに、こういった誘いは初めてではない。葵ちゃんは魔法に強い関心を持っていて、しかも勉強熱心なので新しい魔法をどんどん覚えている。

そして新しい魔法を覚えると、大抵俺と陽菜ちゃんに披露してくれる。

普段は大人っぽい葵ちゃんだが、そういう部分に関しては子供らしさもある。新しい魔法を自慢したいという気持ちはわかるし、なんとなく微笑ましくもある。

訓練スペースについて十数分……現在俺の視線の先では、葵ちゃんが作ったゴーレムに向かって陽菜ちゃんが鋭い蹴りを放っていた。

身体強化魔法が得意な陽菜ちゃんの蹴りは、正直俺では目で追うのも無理なほど鋭く早い。しかし、そんな凄まじい蹴りを受けても、葵ちゃんのゴーレムは微動だにしない。

「……あ、葵先輩。このゴーレム、硬すぎますよ……足痛いです。見た目はいつものゴーレムなのに……」

「ふふふ、これが私が新しく覚えた新魔法……高密度ゴーレムよ!」

誇らしげに胸を張る葵ちゃんは、なんとなく年相応って感じで可愛らしい。しかし、なるほど……高密度ゴーレムか。

いままでのゴーレムは陽菜ちゃんに割と簡単に壊されてたから、その対策で覚えたのかな? 葵ちゃんって、結構負けず嫌いなところあるからなぁ……。

そして、ふたりの戦い? もとい葵ちゃんの新魔法のお披露目が終わったのを見計らって、俺も二人に近づく。

「……新魔法、見せてもらったよ。通常のゴーレムの上位互換って感じで、すごかったよ」

「ありがとうございます! 私の魔力じゃ、一体作るのがやっとですけどね……っと、それはそれとして、快人さんにお願いしたいことがあるんです」

「俺に?」

「はい、このゴーレム……『壊してみてくれませんか?』」

「うん?」

俺の賞賛の言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべたあと、葵ちゃんはなぜか俺にゴーレムを壊してくれとお願いしてきた。

なぜそんなことを言うのか、ついでになんで一番弱い俺にそれを頼むのか、さっぱりわからずに首をかしげる。

「実は、破壊したときに作用する効果も組み込んでるんですが、ちゃんと作動するか見てみたいので……」

「……なんで俺?」

「え? だって、陽菜ちゃんには壊せませんでしたし……私たちの中で、一番強いのは快人さんですから」

さも当然のように告げる葵ちゃんに、俺はますます首をかしげるが……ふと、そこで思い至った。なるほど、『ペット込み』での戦闘力の話か。

……それ俺じゃなくてベルが強いだけだよね? いや、まぁ、葵ちゃんと陽菜ちゃん曰く俺は魔物使いらしいので、完全に間違いともいえないが……。

しかし、う~ん。そんな展開になるとは思っていなかったから、ベルはここに連れてきてない。仕方ない、可愛い後輩の頼みだし、ひとっ走り連れてきて……。

「……っておい、なにしてる馬鹿……」

葵ちゃんの希望を叶えるためにベルを呼びに行こうとした俺だが、直後に目の前に『ペット三号』と書かれたタスキをしたアリスが出現した。

まぁ、いろいろとツッコミどころはあるが……こういう時こそ着ぐるみで出てこいよ!?

「……えっと、葵ちゃん、これ、いいの?」

「……まぁ、壊してくれさえすればいいので、私としては幻王様でも構いませんけど……」

「葵先輩の新ゴーレムも反則級だと思いましたけど……やっぱり快人先輩が一番凄かったです」

まぁ、葵ちゃんがいいなら……しかし、なんか、裏がある気がするんだよなぁ。

そんな俺の考えを肯定するように、アリスはなにかが書かれた紙を俺に手渡してきた。えっと、なになに……。

『アリスちゃんソード 銅貨一枚

アリスちゃんパンチ 銀貨一枚

アリスちゃんキック 金貨一枚

五体合体グレートアリスちゃんロボ 白金貨一枚』

最後のやつめっちゃ気になるんだけど!? ロボって、ロボット? しかも五体合体とか……どう考えても男のロマンが詰まっている。

正直滅茶苦茶見たいけど……訓練スペースどころか、リリアさんの屋敷の安全まで保障できない気がするので、止めておこう。

となると残るは三つ……なんで、ソードが一番安いんだろうか? アレか? アリスぐらいの強さになると、下手な武器使うより直接殴る方が強いってことかな?

まぁ、いいか……とりあえず、ソードにしておこう。

選択を終えた俺は、アリスの手に銅貨を一枚握らせる。するとアリスは、どこからともなく一枚の紙を取り出し、それをくるくろと巻き始めた。

子供がチャンバラごっこに使うアレである。

「……アリスちゃんソード!」

そして、葵ちゃん渾身の高密度ゴーレムは……『真っ二つ』になった。ネーミングはふざけてるし、材質も紙だが、威力は抜群である。

ま、まぁ、これで葵ちゃんの要望は叶えたわけだ。けど、う~ん……切られたゴーレムになにか変化があるように見えない。

「……あ、あれ? 再生しませんね……術式間違えたんでしょうか?」

どうやら葵ちゃんがゴーレムに組み込んでいたのは再生機能みたいだが、うまく作動はしていない感じかな?

「斬撃にオプションで『再生無効』付けときまし――あいたっ!?」

「……お前……」

どうも葵ちゃんの術式が原因ではなく、アリスが余計なオプションを攻撃に加えたせいらしい。

「……まぁ、見た感じ教科書通りの術式ですし、問題なく作動はしたでしょうね。ただ、だいぶ遅いので実戦で使い物になるかは別ですが……」

「な、なるほど……やっぱり、幻王様はゴーレム制作も凄いんですか?」

「う~ん、まぁ、一通りはできますよ……こんな感じで」

「ッ!?」

食い気味に尋ねる葵ちゃんの前で、アリスは軽く地面に手を向ける。そして地面に小さな魔法陣が現れると、それは見事な土の鳥型ゴーレムが出現し、パタパタと空を飛んで見せた。

それを見て、葵ちゃんは大きく目を見開き驚愕する。

「す、すごい……げ、幻王様! す、少しでいいんで。私にゴーレムの術式を教えてくれませんか?」

「嫌です。有象無象に時間を割くほど、私は暇じゃねぇっすから」

あまりにも早く力強いNOの言葉である。これは、アレかな? 俺から頼んだ方がいい感じかな?

葵ちゃんのために、俺からもお願いしようと考え、アリスに話しかけようとしたタイミングで、アリスの口から予想外の言葉が告げられる。

「というか、ゴーレムの事なら、私より『クロさんに聞いた方が』いいでしょう?」

「……うん? クロに?」

「ええ、だってクロさんは『二万年以上前』に、『自我を持ち成長する』ゴーレムを作ってるわけですし……まぁ、厳密にいえば魔導人形なので、若干違いますがね」

「……あっ」

アリスが告げた言葉で思い出した。魔導人形であり『クロに貰った体』という発言をしていたツヴァイさんのことを……。

拝啓、母さん、父さん――なるほど、考えてみればヒントは結構あった。ツヴァイさんを作ったのがクロであるなら、クロはゴーレム制作に関しては――世界最高峰の技術を持つということだ。