軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幸せでたまらないことだと思う

突発的だとは思えないほど大規模で、騒がしくも楽しかった誕生日パーティーも終わり、すっかり住み慣れた自分の部屋へと戻ってきた。

なんというか、なんだかんだで楽しかったからこそ、終わったあとには少し寂しさを感じる。

だけど、うん……。

「……悪い気持ちじゃないかな」

「うん? なにが?」

「いや、終わったあとの寂しさがあるってことは、それだけとびっきりに楽しかったってことだから……なんか、幸せだなって」

「そっか……カイトくんが楽しんでくれたなら、なによりだよ」

ソファーに座っていた俺の隣で、俺が部屋に戻るなり現れたクロが柔らかい笑顔を浮かべる。

「……クロ、いろいろありがとう」

「どういたしまして、かな?」

「俺は、幸せ者だな。アレだけたくさんの人たちが、祝ってくれるなんて……本当に、俺の周りは優しい人ばかりで、幸せだよ」

自然とそんな言葉がこぼれた。胸に湧き上がる感動を、喜びがそのままあふれ出たような気分だ。

するとクロは、一度俺の方を向いて笑顔を浮かべたあと、口を開く。

「……ちょっとだけ、違うかな」

「違う? なにが?」

「ボクはさ、想いってのは一方通行なだけじゃないって思うんだ。カイトくんが幸せだって、皆優しいって、そう感じたなら……きっと、それと同じぐらいカイトくんも皆を幸せにしてるんだよ」

「……そう、なのかな?」

「優しいから祝うんじゃないよ。皆……もちろんボクも、カイトくんが大好きなんだよ。カイトくんが皆に優しく、温かく接して、たくさんの幸せを作り出してきたから……想いは巡って、カイトくんにも返ってきてるんだよ」

「そっか……ありがとう」

優しく告げられる言葉。『君を取り巻く好意は、君自身でつかみ取ったものだ』と、そう肯定してくれるような温かい言葉。

けど、そうだな……クロの言う通り、俺も皆を幸せにしてあげられているなら……いま俺が感じているような、温かな気持ちにさせてあげることができているのなら……嬉しいな。

「……けど、急な話だったし、準備とか大変だったんじゃないか?」

「う~ん、少し慌ただしかったけど、そこまで大変じゃなかったよ。だから、気にしなくても大丈夫。というか、準備より最後の地球神との戦いが一番疲れたよ。本気で強いから厄介なんだよね……」

たしかに、クロの体力は俺とは違って文字通り底なしレベルではある。けど、時間が限られている以上大変……いや、居るわ、時間操作できる方……。

あと、エデンさんはマジでもう少し自重を覚えてほしいものだ。

「……なにか、お礼がしたいな」

「別に気にしなくて……あっ、じゃあ、ひとつだけお願いしていい?」

「うん? あぁ、俺にできることなら」

なにかを思いついた表情に変わったクロは、どこか楽しそうな笑顔で俺に耳打ちをしてきた。

「……え? な、なんでまた……いや、別にいいんだけど」

「実は、前々からちょっとやってみたかったんだよね」

クロの告げたお願いは、別に無理難題というわけではなく、いますぐに実行できるものだった。少し変わったお願いではあったので、若干戸惑いつつも、俺は『ソファーの端へ移動する』。

すると、クロは楽しそうに笑顔を浮かべながら、俺の腿に頭を乗せた……そう、クロのお願いというのは、『俺に膝枕をしてほしい』という内容だった。

「あはは、なんだか新鮮な感じだね」

「たしかに……というか、硬くない?」

「大丈夫、ほんのり暖かくて気持ちいいよ」

いつもとは逆の体制と言っていい形。クロに膝枕をしてもらったことは何度もあるが、俺がしたのは初めてである。

寝転んでいるクロの顔を上から見下ろすような形は、クロの言う通りなんだか新鮮な感じがする。

クロは心地良さそうに目を細め、安心しきった表情を浮かべている。

正直、クロに甘えられるのは好きだ。クロはいまさら考えるまでもなく凄い存在で、多くの人から慕われている……見た目とは裏腹に、本当に大人。長い年月を生きてきた、確かな知識と経験を感じる女性だ。

そんなクロが、俺にだけは時折こうして甘えてくれる。それは、クロにとって俺と過ごす時間が心休まるものだというなによりの証明でもあり、それがたまらなく嬉しかった。

そんなことを考えていると、クロが美しい金色の瞳で俺を見つめながら、小さく呟いた。

「……ねぇ、カイトくん?」

「うん?」

「ボク、すごく幸せだよ。カイトくんと一緒で……だから、ありがとう。優しい君に出会えて、君に救ってもらえて、ボクはいまも心から笑顔でいられるよ」

「……」

万感とすら言える想いの籠った言葉。その言葉を聞いて、俺は少し前にクロが語っていたことを思い出した。なるほど、想いは巡るとは、なんともよく言ったものだ。

「……俺の方こそ、クロに出会えて、クロに救ってもらえて、俺も心から笑顔で毎日を過ごせてる。まぁ、そりゃ、驚いたり困ったりすることもあるけど……やっぱり幸せだよ」

「むっ、あれ? さっきと逆になっちゃったかな?」

「あはは、そうだな。クロが俺に優しさを、幸せをくれたから……巡り巡って、クロにもそういう想いを返せてる……かな?」

「うん、返され過ぎて、ボクの心がカイトくんへの愛しさであふれちゃってるけどね」

「その言葉に関しても、そっくりそのままお返しするよ」

「……堂々巡りだね」

「だな」

クロと顔を見合わせ、笑い合う。互いに相手のおかげで幸せだと思えているというのは、すごく素晴らしいものだと感じられる。

まぁ、なんだかんだ難しいことなんて言わなくても、俺はクロのことが大好きで、クロも俺を好きでいてくれる。

だからこそ、ふたりで過ごす時間が……。

「……幸せ、だね」

「……あぁ、幸せだ。クロ、改めてこれからもよろしく」

「ふふ、こちらこそ」

はにかむように笑ってから、クロはそっと目を閉じて少しだけ顔を上げた。彼女がなにを求めているかなんて、言葉に出さなくてもハッキリ伝わってきた。

俺も同じものを求めているのだから……。

拝啓、母さん、父さん――大好きな相手に抱く想いを、口で説明するというのは難しいものだ。ただ、なんだろう? こうして、互いの心が向かい合って深くつながっているような……そんな気持ちでいられることは、本当に――幸せでたまらないことだと思う。