軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

可愛らしいところがある方だと思う

的当てに続いてシロさんとやって来たのは、リリウッドさんと一緒に回った植物……花の巨大迷路。そのアトラクションは人気があったみたいで、的当てとは違ってガイドブックにも記載されていた。

「着きましたね」

「着きました。では、快人さん」

「はい?」

「『迷ってください』」

「……え?」

おっと、いきなり妙なことを言い始めたぞ。まぁ、シロさんと回っていて平穏無事に済むと思っていたわけではないが……迷ってくれとはまた……う~ん、流石シロさん。常人とは考え方が違う。

「褒められました」

「いや、褒めてはないです」

「なるほど……では、迷ってください」

「えっと、ちなみに理由は?」

「六王祭の最中にこの迷路に挑戦した快人さんはかなり迷いました」

「え、ええ、そうですね」

「なので、私の時も迷ってくれないと『不公平』です」

「なるほ……うん?」

不公平……なのか? 駄目だ、俺のほうも混乱してきた。というか、迷路でわざと迷うっていうのも難しい気がする。

この花の迷路が以前体験したのと同じだとしたら、完全には覚えていないまでも、割とサクサク進めてゴールしてしまいそうだ。

「普通に挑戦してもらって大丈夫です。快人さんなら、迷ってくれると信じています」

「嫌な信頼……いやいや、そんなに何度も迷いませんよ」

「……」

「ぐぬぬ……」

無表情なはずなのに、俺なら絶対に迷うと確信しているかのような目……くっそ、見てろよ。こうなったら、サクッとクリアしてやる。

意気込んで花の迷路に挑戦して……30分が経過した。現在俺の前には、視界をふさぐ花の壁……つまり、

行き止まりがあった。

「……シロさん、どう思います?」

「『七つ前』の曲がり角まで戻ったほうが良いと思います」

「……はい」

なんだろうこの敗北感……おかしいな、入り口から入ったばかりのころは、リリウッドさんと一緒に来た時と同じ花の構成だったから、道順も同じ感じだと思ったのに……。

なんか、中盤以降は正しいと思う順路に進んでいるにもかかわらず、連続で行き止まりにぶつかってしまっていた。

リリウッドさんに教わって花の種類で道順をある程度理解していたはずなのに……。

「……シロさん、ひとつ聞きたいんですが」

「なんですか?」

「……『分かれ道にある花の種類を入れ替えましたか?』」

「……さて、戻りましょう」

「……」

やっぱり犯人は貴女か!? そこまでして、俺を迷わせたいの?

「はい」

「……なんて迷いのない返答……」

どうして、そこまで俺を迷わせたいんだろうか? シロさんのことだから、ただの意地悪とは考え辛い。となるとなにかしら目的があるはずだけど……。

「快人さんはずいぶん苦戦しているみたいですね」

「誰のせいですか、誰の……」

「さぁ?」

「……」

「ですが、快人さんにはこの迷路を簡単に突破できる方法があるはずです」

「……うん?」

「『誰か頼りになる相手に聞けばいい』と思います」

あっ、いま唐突に理解した。なんでシロさんが俺を迷わせようとしていたのかを……つまり、この方は……。

「それが、誰かは分かりません。不思議です。どこかにいるのでしょうか? 迷路の答えを知っていて、頼りになる相手が……」

「……」

なんという白々しいアピール。しかも、状況的にほぼマッチポンプである。そ、そこまで、頼られたいんですか?

「はい。快人さんは中々私を頼ってくれません。私は、とても不満です」

「えっと……し、シロさん……助けてください」

「仕方ありませんね。他ならぬ快人さんの頼みです。私が導いてあげましょう」

完全に仕組まれた流れではあるが、俺が諦めてシロさんに助けを求めると……シロさんは相変わらずの抑揚のない声で返答してくる。

しかし、その顔は微かに……数ミリ程度ではあるが上を向いており、なんとなくドヤ顔してるような気がした。

「私が導く限り、もう快人さんが行き止まりにぶつかることはありません」

「は、はぁ……えっと、その、頼りになります」

「これからも、困ったときはドンドン私を頼りにしてください。私が喜びます」

「……」

なんかウキウキしてる気がするし、気のせいかいつもより口数も多いような……そ、そんなに頼られたかったのか……。

「はい」

ここでも、一切の迷いもない返答である。

「快人さんは私を後回しにしています」

「い、いや、別にそんなことは……」

「快人さんは私を後回しにしています」

「……分かりました。今後は、もう少し頼りにします」

「任せてください」

心なしか胸を張っている気がする。う、う~ん、なんだかんだでシロさんも世話焼きと言えるのかもしれない。見た目からは想像もできないが、性格は意外と子供っぽい。

なんというか、良くも悪くも己の感情に素直というか……なんだかんだで、それがシロさんの一番の魅力なのかもしれない。

少なくとも、俺の表情が自然と苦笑を浮かべているあたり、シロさんと過ごす時間を悪くないと感じているのは明白だ。

拝啓、母さん、父さん――この世界の創造神様は、表情が読み取り辛いわりには素直で、ちょっとワガママで……なんというか、すごく――可愛らしいところがある方だと思う。